ガンダムTR-6は、ティターンズ、ひいては地球連邦軍の次期主力量産機として開発された。誕生の背景にあるグリプス戦役の時代、地球連邦軍の各MS開発施設では、それぞれ異なる機構を持つMSの開発や運用が、独立、平行して進められていた。生産性を無視し、互換性を持たない独自構造の試作機が乱立するMS開発状況。これは、後に「MSの恐竜的進化」と呼ばれる時代の黎明期にあたるものでもあった。ガンダムTR-6は、この混迷状況を改善し、軍内での使用MSの規格を1機種に統合する「機種統合計画」の立案によって開発された。そして、この計画に則って開発された「万能化換装システム」というパーツ換装機構を有する。素体──ガンダムTR-6[ウーンドウォート]を中核とし、四肢を折りたたみ、さらに各所に強化パーツを装着することで既存のあらゆるMSの代替交換機へと変化することが可能。その際には、原型機の名称の最後に「Ⅱ」をつけて呼称される。強化パーツの組み替えによって、最終兵器[インレ]にまで進化するポテンシャルを秘めた汎用素体である。今回紹介する[ヘイズルⅡ]も、その代替形態の一種であり、[ヘイズル]系の後継機を務める形態群にあたる。
元を辿れば[ヘイズル]系はガンダムTR-6の実験機である。当時のティターンズの主力MSであるRGM-79Q ジム・クゥエルを母体とした「アーリーヘイズル」をベースに、様々な強化パーツを装着することで性能を変化させる機体であった。そのため、一口に[ヘイズル]と言っても多様なバリエーションが存在していたのである。素体であるガンダムTR-6[ウーンドウォート]は、いわば[ヘイズル]素体([アーリーヘイズル]≠ジム・クゥエル)の代替機で、偏りを持たないプレーンな量産機に位置づけられる。完成の暁には、ジム・クゥエルやハイザック・マラサイ等に代わる次期主力量産機として、全軍への配備が予定されていた。だが完成の遅れから実際には、TR-6の簡易型であるバーザムやヘイズルアウスラが量産配備されるに留まった。
代替の原型機となる[ヘイズル]には様々なバリーションが存在する。つまりそれは、その代替機である[ヘイズルⅡ]にも様々なバリエーションが存在することを意味している。[ヘイズル]は試作であったが、その最も標準的な形態が[ヘイズル改]である。この形態を基本にし、全身のラッチへの各種パーツ換装で様々な形態へと変化していく。また、この[ヘイズル改]の装備仕様を元に、胴体部をモビルポッド[プリムローズ]に換装した強化形態である[ヘイズルアウスラ]は、その総合性能が評価され、限定的に一定数が量産された。その代替を担う形態が、本図「B」である。ヘイズルアウスラが量産配備された部隊へ向けた、後継機としての役割を想定されている。胴体に[プリムローズⅡ]を内蔵し、ブーストポッドを装備。ここからのパーツ換装を前提に、標準的なライフルとシールドで武装するという共通点に加え、[ヘイズル]の四肢を装着し、機体特性を同じくしている点も特徴である。
ガンダムTR-6[ウーンドウォート]の背部のブーストポッドを、メガ粒子砲搭載型のマルチコネクターポッドに換装。さらにコンポジットシールドを左右に2枚装着した仕様である。[アーリーヘイズル]の背部に2枚のシールドブースターを装着した[アーリーヘイズル高機動仕様]の代替交換形態的な機体といえる。なお、[ヘイズルⅡ]とはあくまでも便宜的な名称で、仮にこの仕様に合わせたより詳細な命名をするのであれば、[アーリーヘイズル高機動形態Ⅱ]、もしくは[ウーンドウォート高機動形態]となると考えられる。だが、ガンダムTR-6は任務に合わせて細かく装備を換装し、運用することを前提としているため、それらの細かい装備や仕様に対して、その都度、正確な名称を付与し、分類することは事実上不可能である(軍においてはデータ上の分類はアルファベットや数字の羅列で区分されていると推測され、それらを解読することは素人には不可能だろう)。そのため、これら[ヘイズル]の各形態の代替機に位置づけられる仕様は総じて、[ヘイズルⅡ]と呼称される。
[ヘイズルアウスラ]の背部に2枚のシールドブースターを装着した、高機動仕様の代替となる形態。「B」([ヘイズル]の四肢を装着)と「C」(左右にコンポジットブースターを装備)の両方を一度に装着した形態でもある。[ヘイズルアウスラ]と同じく、胸部へのミサイル・ポッド装備、バックパックのTブースターへの換装などにより、第一種〜第三種装備形態へと変化可能である。手持ち火器も、ティターンズ、地球連邦軍規格の様々な武器を任務に応じて選択される。繰り返しの説明になるが、これらは換装の一例であり、無数のバリエーションが存在する[ヘイズル]と同じく、[ヘイズルⅡ]にも多数のバリエーションが存在する。また、頭部大型アンテナや胸部装甲等、さらに装備を追加した[バーザムⅡ]形態への発展や、ジム系の四肢を装着した下位互換となるGMⅡ形態など、使用するパーツは同じでも、性質や運用法が異なる場合には、別の名称がつけられる。
ガンダムTR-6の代替形態には名称の末尾に「Ⅱ」が付けられる。この呼称は、「代替の原型機の部品を使用している」という意味ではなく、「原型機が担っていた任務を代替可能な、同じ性質を持った形態」であることを意味している(正確には、後継機として性質を同じくしながらも、総合性的に機体性能はアップしている)。一例として、「E」の[バーザムⅡ]形態を挙げると、必ずしもバーザムの四肢を使用しているわけではなく、原型機として同等の性能を持つ[ヘイズル]の四肢を使用する換装パターンも存在する。このことから装備や仕様も一定でないことが理解できる。大事なのは後継機として原型機と機体特性を同じくすることである。つまり、[バーザムⅡ]の場合はバーザムが配備されていた部隊に配備され、その部隊が担っていた任務を引き継ぐための形態といえる。そのため、各種性能は原型機に合わせた調整がされており、機能をあえて限定することで、従来機に慣れたパイロットの機種転換を容易するといった意図も含まれている。今回紹介した一連の形態は、一年戦争から続くGM系(連邦軍系統の量産型)MSの後継を意図した形態群であり、同様にジオン系量産機の後継としては[ハイザックⅡ]が存在する。