ガンダムインレの運用パターンについては、これまでに数度に亘って情報を整理、解説してきたが、いよいよその核心であるインレへと迫っている。今回はインレに至るまでの、その主要換装形態を整理し、系譜化した中間のまとめをお送りする。[ウーンドウォート]を素体としたパーツ換装による各種バリエーションは、「機種統合計画」の集大成である。これは[ウーンドウォート]があらゆる形態に変化し、運用できることを物語っている。その仕組みは「万能化換装(TRANCE・R)システム」が支えている。その中でも主要な換装形態は、今回紹介する6系統に分類できる。「TR計画」とは、新兵器の「TRIAL(トライアル)計画」であると同時に「TRANCE・Rシステム」の略である。さらにその真の目的である「トライステラー計画」の頭文字でもある。なお、この「トライステラー計画」については、今後改めて解説する。なお、本図の各形態は同縮尺で配置している。機体のボリュームの変化から、その特性と運用法を視覚的に把握できる。また、ハイゼンスレイⅡの背面など『A.O.Z REBOOT』によって設定を精査、決定稿となったTR-6各形態のティターンズ仕様の姿にも注目して欲しい。
:素体
全ての形態の中核となる素体――TR-6[ウーンドウォート]。パーツの換装を前提とした小型MSとして設計されており、変形に対応したフレームに最小限の装甲が施された「ライトアーマーMS」に分類される。各形態への換装に対応するために、腕部や脚部の折り畳み機構を備える。さらに、高出力のTR型ジェネレーターを搭載しており、パワーウェイトレシオに優れている。これは小型MSの特徴と言える。また、コクピットを内蔵する胴体部が分離、モビルポッド――プリムローズⅡ――に変形する。大出力ジェネレーターを搭載していることもあり、大気圏内をMA形態で飛行できる。
:既存機との換装
素体を中核としてティターンズ(地球連邦軍)の既存機のパーツを装着、代替機の機能を果たす形態群。試作機の乱発によって互換性を失った自軍の兵器群を、TR-6一機種に統合する「機種統合計画」に則った機能であり、素体にティターンズ(地球連邦軍)の既存機のパーツを装着することで、既存の全MSの代替機としての機能を果たす形態群を指す。これにより既存機の務める任務への対応が事実上、可能となった。その代表としてバーザムⅡ形態では、RX-154バーザムの腕部と脚部を装着。ガンダム系、ジム系といった地球連邦軍系の主力MSの代替機を務める。また、ハイザックⅡ形態では、同じくRMS-106ハイザックのそれに換装。ハイザックやRMS-108マラサイといったジオン公国軍系の代替機となる。このように既存機のパーツを用いることで、パイロットの機種転換が容易になるなどの利点があることも特徴である。なお、各機の名称は便宜上のものであり、換装の組み合わせは無限に存在する。現地での換装など、状況に応じて臨機応変に変更が可能である。
:支援装備化
TR-6を構成する各パーツは、パーツ単位での切り離しと組み換えによって、異なる運用法に転用が可能な構造を持つ。それらを組み替えることで「Gパーツ」と呼ばれる支援兵器群へと変化する。Gパーツは単独では支援戦闘機として、MSと合体することで強化装備としての機能を発揮する。既存の自軍の全MSに装着が可能で、装着した機体の能力を強化する機能を備えた汎用装備でもある。その基本となるものが、このフルドドⅡ形態である。コクピット、胴体、サブアーム等の中核に使用されているパーツは、素体と共通している。そこに各種専用装備を装着することで、局地戦に対応した支援機へと変化する。ハイゼンスレイⅡ用スラスターを両翼に使用するハンブラビⅡ形態や、そこから水中用装備に換装したアクア・ハンブラビⅡ形態では、合体したMSに高い水中戦能力を付与する。
:専用装備による後継機
既存パーツの装着による代替機化とは別に、地球圏の防衛というティターンズの主目的によって特に重要な形態が、この専用装備による後継機化である。これは想定される敵勢力の高性能機への対抗として、それに打ち勝つための拡張機能を内包する形態群を指す。これを達成するために専用装備が用意され、重要な局地戦用MSの後継機の任を担うのである。一例を挙げると、ハイゼンスレイⅡ形態はRX-110ガブスレイの後継機で、合体分離機構を備え、運用柔軟性に優れた高速戦闘MSである。本機は敵(エゥーゴ)陣営の推進する「Z計画」系後継機――MSZ-010 ZZガンダム、MSA-0011[Ext] Ex-Sガンダムなど――に対抗する能力を持ち、さらにはティターンズの旗機となるガンダムタイプMSである。キハールⅡ形態は素体に飛行用強化パーツを装着した状態。NRX-044アッシマーに代わっての対空防衛任務に加え、インレの護衛機としての任務に就く。これ以外にもフライルーⅡ形態などが、この形態群に該当する。既存パーツで構成される「B:既存機との換装」形態群に対して、この形態は高性能の戦用パーツで構成されている点が主な違いとなっている。
:超重装備形態
素体の各形態がGパーツ「フルドドⅡ」と合体した状態。この形態はそれぞれ「ラー(RAH)」形態と呼ばれる。ラー形態となることで、合体したMSの能力を第一線級に底上げすることに加え、両脇のドラムフレームを介して「超重装備」と呼ばれるMAサイズの大型装備の取り付けと運用が可能となる。こうした機能によりTR-6は40mを超える巨大MS形態、さらには巨大MA形態、そして最終的には戦略兵器へとその機能は拡張され、進化を遂げる。その起点となるものが本形態群である。素体とフルドドⅡが合体したウーンドウォート・ラーⅡと同じく、あらゆるMSと合体可能。さらにハイゼンスレイとⅡとフルドドⅡが合体した形態ではその高度な性能から「エリアドミナンス(領域支配)機」に分類される。また、TR-6以外にもハイザックやバーザムといった既存機との合体も可能である。
:巨人化換装
一般的なMSは20m前後の頭頂高を持つ。これらに対応した形態が、「B:既存機との換装」形態群や「専用装備による後継機」群である。しかし一方で「巨神」と称されるNT専用MSには40mを超える頭頂高を持つものも多い。その機体サイズは、サイコミュによって遠隔操作が可能な特殊兵装、全身各所への大出力火器、そして拡張装備等の搭載を可能とする。装備の換装によってTR-6は、その機体サイズだけではなく、性能をも際限なく拡張することが可能な能力を持つ。その換装用装備の中にはNT専用MSに対抗するための形態群も用意されている。これがフルドドⅡを介してMRX-009サイコガンダムの四肢を装着した「ギガンティック形態」や、拠点防衛を主任務として多数のウエポンコンテナを装備する「クィンリィ形態」などの形態となる。特にクィンリィ形態では、キハールⅡを多機能バインダーとして転用しており、ここにもTR-6の組み替え機構の応用力の高さが見て取れる。さらに、将来的な脅威として想定されていたNZ-000クィン・マンサに対抗するための形態である[フルアーマー・クィンリィ]形態なども存在する。このように、他の形態群と同じく巨大MS形態群においても柔軟にパーツ構成を変更可能で、さらなる脅威に対応し、それを排除する別の形態への進化の想定されている。この拡張性こそが、TR-6最大の長所である。
:最終形態
戦術レベルの局地兵器であるMSに対して、人型というフォーマットから外れ、さらにサイズの制約を受けないMAは、それ1機で戦局を覆すほどの威力を秘めている、TR-6はそうした戦略的な運用がなされる兵器への換装も可能であり、それはティターンズの求めた最強の兵器=ガンダムの姿を体現するものであった。「TR計画」は、換装の完成形である最終兵器形態「インレ」とその運用母艦、そしてその母港となる宇宙基地SSD、さらにはそれの量産と運用を行う組織体制の構築までを視野に入れたプロジェクトであった。その全てを支えるのが万能化換装システムという機構である。システムが与える無限の変化、その万能性を武器として、TR計画は壮大な未来を見据えていた。このファイバーⅡ形態は、攻防一体の複合バインダーを備えた弾道兵器である。単身で敵拠点を強襲し、制圧を行う機能を与えられている。また、宇宙より飛来し地球圏の平和を脅かす外敵に対し、成層圏での防衛を担うMA形態――ダンディライアンⅡとの合体で、インレの上半身としての機能を有するに至る。