モデラーのロマン“全指可動ハンドパーツ”を自作する! 往年の読者の心を奪った「鎌田指」とはどんなものだったのか、モデラー・けんたろうが検証! – Hobby JAPAN Web

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モデラーのロマン“全指可動ハンドパーツ”を自作する! 往年の読者の心を奪った「鎌田指」とはどんなものだったのか、モデラー・けんたろうが検証!

2024.11.06

全指可動ハンドの自作に挑戦! 月刊ホビージャパン2024年12月号(10月25日発売)

全指可動ハンドの自作に挑戦!

 すべての指が関節ごとに動く「可動ハンドパーツ」への飽くなき欲求。かつて月刊ホビージャパンでも精緻な工作技術をもって読者の崇敬を集めた者たちがいた。“原田指”あるいは“鎌田指”…モデラーの名前で呼ばれた可動ハンドパーツとはどんなものだったのか。けんたろうが往年の技術再現に挑む。

原田指? 鎌田指?

▲月刊ホビージャパンでは、80年代後半~90年前後にかけて可動指の自作がトレンドだった。例えば「MAX渡辺のプラモ大好き!」で紹介されている自作方法は、コの字のプラ材(指の節)に金属線を通すという構造。通称は“原田指”。モデラー原田正彦(雅彦)が提唱したから原田指

可動の概念を考える

▲単純な指関節を試作してみよう。まずは軸を通した1軸可動が一番確実で、大きいサイズなら簡単に再現できる

単純に作れるけれど…

▲ウェーブのプラ=材料を使い、ドリルで開けた穴にプラ棒を通すだけで関節が作れてしまった。ただし、小さくすればするほど軸のズレが深刻な影響をおよぼす。残念ながら1/144のサイズには不向きだ

線でつなぐなら?

▲そのためリード線で指を縦に貫通するという発想に至るわけだ。ただし再現するにあたり、当時と同じ素材を用いられるわけではないのでそこから検討しなければならない

アルミ線で試してみる

▲原田指を試しに作ってみた。プラ板とアルミ線をつなげて作るが、これなら小型でもなんとかなりそう。しかし曲げるほどに金属とプラ部分が剥がれるし、アルミ線は曲げるのに苦労するレベルでコシが強い!

ボールジョイント接続は?

▲それならばと、ボールジョイントの受けを指の節に仕込んでみた。保持力は申し分ないが、メガサイズモデルならともかく1/100や1/144では到底収まるサイズのボールジョイントがない。これもあえなく失敗

座りて学ぶもの〜座学〜

▲鎌田指と原田指、なぜ2通りの呼称があるのか。それはモデラー鎌田勝が原田指をさらに改良した作例を発表したことによる(月刊ホビージャパン1988年2月号)。リード線で金属線を隠したり、指に節部分を追加した鎌田指が、当時の終着点ということだ

いよいよ可動指再現にトライ!

▲用意した材料はこちら。片手だけでも指ブロックと関節の節部分で大量のパーツが必要で、しかも大きさを揃えるのが難しく、多めに作って選別する方針が一番確実という結論に至る。これは地獄ですよ…

リューターよありがとう

▲リード線を通す穴は0.5mm。これもパーツの数だけ穴を開けなければならず、とくに節の部分は細かすぎて作業が大変なので、切り分ける前に等間隔に穴を開けることにした。リューターでブスブスと穴を開けていく

すでに地獄の様相

▲穴を開けた円柱と短冊を揃えた。リューターでの穴開けは比較的楽だが、ドリルに削りカスがまとわりつくと摩擦でプラが溶けて穴が崩れてしまうので、歩留まりは悪い

エナメル線でつなぐ

▲ある程度パーツのサイズが整ったものを選んだら、短冊を接着しながらビーズのように連結。節には接着剤をつけない。指の先端側の節はウェーブ プラ=材料の半丸2mmのエッジを削ってレモン型にしたもの。接着はゼリー状瞬着で接着

少しずつ肉付け

▲先ほどのパーツを骨格として、プラ板を貼り重ねて厚みを出す。中間の節を包むように少し板を長めにしていく。これで節が目立たなくなり、逆方向への曲げも防止できる

親指は個別に整形

▲構造自体は他の指と一緒だが、親指はプラ板の付け方を変えて構造を小変更。中間部を台形にしたり、根本を厚めに作り、逆に先端は小さくするように加工

4本の指もディテールを作る

▲残った指は側面に0.14mmのプラペーパーを貼ってディテールとする。さきほど板を重ねた合わせ目もごまかせるので一石二鳥。だんだん指らしくなってきた

手のひらも自作

▲手のひらも作る。4つの穴を開けたプラ板を先端につけて、指のエナメル線が入るようにしている。手のひらには武器接続用のダボを設けておくと保持力の心配がない

完成は近い!

▲指の長さが結果的に不揃いなので、それぞれ長さを見て取り付け位置を決めて接着。親指部分は板で囲いを作り、中央に穴を開けて枠を作った。間に指先用の節を入れて、可動部ができた

手の甲も作ります

▲手の甲側にプラ板の装甲パーツを作って被せたら完成。なんとはなしにそれっぽく手に仕上がったのでけんたろうは満足

 遂に完成!

▲ということで、ついにエナメル線で接続したフル可動ハンドが完成! 最大のポイントはなんといってもすべての指が動くことで、これによってピースもグ◯シも思いのまま。ただ強度は今ひとつなので、武器を持たせる際は手のひらにダボを付けておき、武器側の受けにダボを引っ掛ける方式がよいだろう。「わざわざこんなことするよりも、今だったらエモーションマニピュレーターSPを取り付けたほうが…」(けんたろう)「黙らっしゃい! 自作する精神が大事なの!」(編集部)

■手の話なんだっ手?
──ようこそ、編集部こと「鎌田指を作らないと出られない部屋」へ。完成するまで一緒に頑張ろうね!
けんたろう(以下け) …カマタ? なにそれ? あと突然呼んでおいて監禁はイヤすぎる!
──まあまあ。だいぶ昔に流行った、自作ハンドパーツを作ってもらおうと思って。
 ああ。いまでもホットな部分ではありますもんね、ハンドパーツって。ガンプラでそこ語ったらなかなかの歴史があるし…。
──でしょ。その紡がれてきた歴史に僕らもチャレンジしてみよう。

■可動指はじめて物語
 可動指って昔から盛んですけど、作ったことなかったなあ。いまだとプラ材がいっぱい種類があるから、中空の部材に軸を横から打つのが簡単なのでは。
──ウェーブのプラ=材料ね。断面が角形、丸形どちらもあるから使えるかもね。でもそういうのじゃないんだ。これを読んでみて、『MAX渡辺のプラモ大好き! 上級編』。
 うわ、懐かしい! 自分は初級編いっぱい読んだけど、上級編まではたどり着いてなかったなあ。なるほどね、コの字のプラを使ってつなぐのか…って、これ原田指って書いてありますけど。
──あれ?

■とにかく作ってみよう
 よくわからないけど、ひとまずアルミ線とプラ板でマネしてみる。リード線はどんなの使ってたんだろう。
──アルミ線もだいぶ硬いし、曲げを繰り返したらすぐ金属疲労で折れそう。
 小さいサイズは大変だなあ。芯材がむき出しなのはメンテナンス性がいいかも。折れたら交換。

■座りて学ぶ者のターン
──ということでバックナンバーを調べにきました。これかな。月刊ホビージャパン1988年2月号。
 おお、サザビーの手が…! これちゃんと節の部分も再現してあって、リード線も見えにくくなってる。あぁ、鎌田さんも原田指の改良版として作ったものを鎌田指と言ってるんですね。
──なるほどね。当時を知る方々に話を聞いていても、原田指と鎌田指が混在してて紛らわしかったんだよね。
 頼んでおいて、いい加減すぎるでしょ!
──まあ、わかってよかったじゃないの。それじゃあ徹夜で作ろうね。

■チュンチュン、チチチ…
 よ、ようやくできた……(げっそり)。
──ほんとに徹夜で作ったね。よく頑張りました。
 いやこれびっくりですよ。昔これ平然とやってたの。模型筋力ムキムキすぎでしょ。
──何がそんな難しかったの?
 品質。指の節ひとつとっても同じカタチにするのが難しくて。直線部分もあとからドリルで穴を開けるんだけど、リューターで熱を持ってすぐに横から穴が空いちゃう。
──これサイズは1/100ぐらいだけど、もっと小さくできなかったの?
 無理無理! ほんと昔の人はすごかった。こうして同じことをやってみるとよくわかる。人差し指~小指までの長さが微妙に違うでしょ? 恥ずかしながらこれは自分が精度を出せなかった結果。みんな長さが同じ指だったら手の甲側で長さを変えることで対応しようと思って…。全部がアドリブで、結果それっぽくなっただけ。
──なるほどね。ご苦労さまでした。で、左手はいつできるの?
 ギェー!(椅子から転がり落ちて床に倒れる)


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