2023年4月20日、オーストラリア北西部に位置するエクスマウスにて、金環皆既日食が起こりました。
この度、撮影に遠征してきたのですが、私自身このブログをオーストラリアから更新しており、まだ帰国していません。Youtubeでの動画アップはまだ先になりそうなんですが、現在は電波の良いところにおりますので、先にブログで記録を残しておこうと思います。
2023.5.1 追記
正直、失敗だらけの撮影で公開しない予定でしたが、反省材料に生かすため公開することにしました。 とりあえず誰よりも感動したのは間違いない。 8K N-RAW→4Kへ処理しました。
まず、実際に起こった皆既月食の様子は一緒に行動していた天文リフレクションズさんが自身のYoutubeチャンネルにてライブ配信してくれました。私もところどころで出演していますのでぜひこちらでご視聴ください。
さて、今回の日食ですが、動画を見ていただければ分かる通り、言葉にならないほどの感動を味わいました。どんな日食だったのか簡単に解説していこうと思います。
◆金環皆既日食とは
皆既日食は、太陽が月に隠された状態を観測できる現象。金環日食は太陽が月に隠されきられずにリング状になった太陽を観測できる現象です。金環日食は2012年に日本国内でも起こっていますので、実際に見たという方も多いのではないでしょうか。
金環皆既日食とは、ある地点では金環日食、ある地点では皆既日食になるというもので「ハイブリッド日食」なんて呼ばれ方もされています。もちろん、私たちは皆既日食になる地点を選び、遠征しました。
細かい説明は後日アップ予定の動画で解説しますが、今回の日食は月と太陽のみかけが同じくらいの大きさで発生するものなので、通常の日食よりも皆既となる時間は1分程度と短く、その代わり、通常の日食では大きく隠されて撮影することができない「プロミネンス」が撮影できるというものでした。間違いなく、特別な日食だったのです。
皆既日食の観測・撮影地
Google Mapより。オーストラリア大陸全体。ハートの位置が撮影地のエクスマウスです。
今回の日食はオーストラリア左上に位置する小さな半島で起こるというものでした。周囲には日本から直通の飛行場などはなく、移動手段は南に遠く離れたパースから約1,300km車で移動するというもの。皆既時間が短く、移動への負担が大きいことから敬遠する方も多かったと思います。
◆日本からの日食撮影チーム
佐賀天文同好会会長・副島さんと、天文機材メーカーのK-ASTEC・川野さんが今回の日食に遠征する企画を立てていると知り、私も参加させていただきました。
現地では日食のためにキャンプサイトがオープンされていました。
私たちは約20名で参加したので、現地で機材を設置するとこの通り異様な空間に(笑)
しかも私たちがオーストラリアでいうところのNHKみたいな局のニュースで「日本から約20名の観測チームが日食のためにエクスマウス入りしている」と報じたことから、我々のキャンプサイトを訪れる方々が次々と訪れ、ちょっとしたスターパーティになっていました。
◆私の機材
ちょっとわかりづらいですが、Hobym Crux140 Travelerというハーモニックドライブ赤道儀にVixen SD81S+SDフラットナー、FUJIFILM GFX100Sの組み合わせ。Crux140Travelerは福岡の天文ショップ「天文ハウスTOMITA」にご協力いただきお借りしました。バランスウエイトなしで7kgを搭載可能で、本体重量が2.9kgと、なんとかして荷物を減らしたい今回の日食遠征にぴったりの機材でした。
SIGMA fpL、SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports にSWAT350V-specの組み合わせ。前日の予報で風が強い!と予測されていたので、風ブレ対策でLeofoto LM-362Cを使い極端な低重心でセッティングしました。
この機材についてはUNITECさんのブログでも紹介されています。
https://unitec.cocolog-nifty.com/photo_gallery/2023/04/post-c940e2.html
誤算だったのは、SIGMA fpLの液晶が固定であることを忘れてしまっていたことです。そのため、このような姿勢でのセッティングを強いられることとなりました(笑)
Nikon Z9+Z70-200mm F2.8S+2倍テレコンの組み合わせで8K N-Rawでの撮影にトライしました。結果としてうまくいった部分もいかなかった部分もあったのですが、ものすごく貴重な体験を提供した機材となりました。
◆今回のベストショット
SIGMA fpL
SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports
x1.4倍テレコンバーター
SWAT350で追尾
ISO100
900mm
f16
1/400秒
Photoshop Lightroomでさくっと処理,トリミング
今回はダイヤモンドリングと呼ばれる現象は観測できませんでした。その代わりにベイリービーズと呼ばれる太陽の光がぷちぷちと現れる現象とプロミネンスが観測できました。
太陽コロナを撮影するのかプロミネンスを撮影するのか、双方はかなりの露出差があるため、5段でのブラケット撮影を基本としましたが、カメラではなく目で見ていると、この瞬間が最も美しかったです。
この処理はまだ途中のものです。カメラの設定ではコロナを撮影するかプロミネンスを撮影するかで設定が変わってしまいますが、人間の目のダイナミックレンジはすごいですね。5秒間だけ双眼鏡を覗いたのですが、コロナも大きくプロミネンスもしっかり両方見えていました。帰国後はそのイメージに近づけるよう画像処理を試みたいと思います。
◆K-ASTEC 川野氏が撮影した動画が完璧すぎるので紹介
さすが何度も日食を経験されている川野さん。完璧です・・・。
動画の冒頭で「フィルター外した〜」と言っているのは「日本で最も彗星を撮影した男」とされる津村光則氏の声。このとき全員が、太陽光によるセンサー焼けを防ぐために太陽撮影用減光フィルターを装着していましたが、いつそれをとるべきか!?を判断しかねていたと思います。津村氏の掛け声は「もう大丈夫だよ!」という全員に対してのメッセージでした。これが私の涙腺を崩壊させるトリガーになったとです・・・。
皆既が始まり、双眼鏡で観察していた人たちが揃って「赤いよ!真っ赤っか!」と叫んでいました。太陽の周囲を囲うプロミネンスがそのように演出していたのでしょう。
5秒間だけ、天リフ・山口さんの双眼鏡を覗かせてもらいましたが、人間の目のダイナミックレンジはすごいですね。カメラだと、太陽コロナに露出を合わせるか、プロミネンスに露出を合わせるか2択ですが、目で見た感じは両方完全に見えました。後日の画像処理は見た記憶を元に処理したいと考えています。
皆既日食の直後の夜、興奮冷めやらぬ遠征メンバーたちとライブ配信を行いました。みんな日食の感動が凄まじかったことを話してくれています。
最後に、海外のニュースサイトでも私たちのことに触れている記事がいくつかありましたのでリンクを貼っておきます。