カリフォルニアのインディーズ・ポップ職人Glenn Donaldsonのソロ・プロジェクトThe Reds, Pinks And Purples - ディスカホリックによる音楽夜話

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カリフォルニアのインディーズ・ポップ職人Glenn Donaldsonのソロ・プロジェクトThe Reds, Pinks And Purples

カリフォルニアのインディーズ・ポップ職人と言われるようになったGlenn Donaldson。彼は90年代にSteven R. Smith、Brian Lucasらと共にサンフランシスコを拠点とするサイケデリック・バンドMirza として活動していた。Steven R. SmithやBrian Lucasについては、このブログで色々と取り上げて来た。しかし、Glenn Donaldsonは個別に取り上げていなかった。それで、今回はソロ・プロジェクトThe Reds, Pinks And Purplesの2024年リリースUnwishing Wellを紹介したいと思う。

 

その前にGlenn Donaldsonのこれまでの音楽歴について、簡単に書いて置きますね。Mirza解散後の1999年に実験音楽家Loren Chasseと音楽コミュニティJewelled Antlerを立ち上げます。レーベルも運営して、自分たちの作品やこれだと思うインディーズ・バンドの作品をCDRにてリリースしていた。そのJewelled Antlerの中心的なバンドThujaを率いて、サイケデリックなフォークドローンを奏でていた。当時はフリー・フォーク・ムーブメントがコアに盛り上がっていたが、2000年代中頃にブームが下火となるとJewelled AntlerやThujaも役割を終えたようにひっそりと消滅する。ただ、ここで終わらないのが、Glenn Donaldsonの凄いところであります。彼はJewelled Antlerの時からDonovan Quinnと組んでいたThe Skygreen Leopardsをよりポップでサイケなフォークへと進化させ、その流れはThe Reds, Pinks And Purplesに引き継がれていく。彼の周りには、いつも様々なミュージシャンが集まるようになり、いつしかカリフォルニアのインディーズ・ポップ職人と言われるようになっていったのです。

 

The Reds, Pinks And Purples / Unwishing Well

2018年頃よりThe Reds, Pinks And Purples名義で活動しており、アルバムとしてこれまでにUnwishing Wellを含めて9作と多作です。デジタル配信も積極的におこなっていて、曲が出来るとすぐに公開してきた。そのため、アルバム自体が寄せ集めのコンピレーション的な作りとなることも多かった。

本作Unwishing Wellは、これまで生活してきた中から出てくる憂いみたいなことをメッセージとして掲げている。オープニング・ナンバーWhat's Going on with Ordinary People? (普通の人々に何が起こっているのか?)で、現代社会に対す様々な懸念を表明。その他、Faith in Daydreaming Youth(空想にふける若者の信仰)、Your Worst Song is Your Greatest Hit(あなたの最悪の曲が、あなたの最大のヒット曲になる)、Dead Stars in your Eyes(あなたの目には死んだ星)、We Only Hear the Bad Things People Say(人々が言う悪いことしか聞こえない)など、陰鬱で皮肉たっぷりなメッセージを軸にしてネガティブな感情を淡々と歌い上げる。出口の見えない中、ラスト曲Goodbye Bobbyはインスト曲で、すべてを解放してアルバムの締めくくりに相応しい曲となっている。

音の方は、80年代や90年代のギター・ポップを思わせる少しレトロな雰囲気を醸し出している。2曲で地元サンフランシスコのミュージシャンがギターとして参加しているが、基本はGlenn DonaldsonによるD.I.Y. 的な展開。鮮烈なメッセージを掲げていながらも、ストイックでシンプルに掻き鳴らす。特に仕掛けがある訳でもなく、曲自体は地味な感じもする。ただ、これが良いのかもしれない。身構えて聴かなくても、BGMとして何時間でも聴き続けることが出来る。結果としてゆっくりと心に沁み込んで来るのである。Glenn Donaldsonがカリフォルニアのインディーズ・ポップ職人と言われる由縁なのでしょうね。

 

 

 

 

Glenn Donaldson、Steven R. Smith、Brian Lucasの3人は、現在43 Odesとしても活動しています。43 Odesのセカンド・アルバムについて書いています。