酵母 | 成分情報 | わかさの秘密

酵母

yeast
イースト

酵母とは、微生物の一種でキノコやカビなどと同じく「真菌類」に属しています。
酵母には糖質をアルコールと炭酸ガスに分解して分裂・成長していく「発酵」という働きがあり、古くから食品加工において身近に利用されてきました。パン酵母やビール酵母、日本酒酵母など様々な食品をつくる際に役立っています。

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酵母とは

●基本情報
酵母とは、植物や樹液、花蜜、果物など自然界のあらゆるものに生息する微生物の一種で、キノコやカビなどと同じく「真菌類」に属しています。
酵母は、直径約5μm[※1]の小さな単細胞で、動物や植物などのように細胞内の核に遺伝情報を持っており、糖質をアルコールと炭酸ガスに分解して分裂・成長します。この働きを「発酵」といい、酵母は古くから食品加工において身近に利用されてきました。
現在は約350種類以上もの酵母が知られており、パン酵母やビール酵母、日本酒酵母など様々な食品をつくる際に役立っています。パン酵母は、乾燥したイーストとしてよく知られています。
酵母には、人間にとって必要なたんぱく質ビタミンB群葉酸ビタミンDなどの栄養素が多く含まれています。また、酵母菌は熱に弱く、60℃前後の温度で10分ほどでほとんど死滅します。
そのため、新鮮なものや生もの、発酵食品から酵母を効率良く摂取することが大切です。

●酵母の歴史
酵母は、今から250年以上前、オランダの生物学者アントニ・ファン・レーウェンフックによって発見されたといわれています。レーウェンフックは、「微生物学」の父としても知られ、歴史上初めて顕微鏡を使って微生物の世界を見た人物です。レーウェンフックが酵母の発見者といわれる理由は、発酵中のビールの中に微粒子状のものを見たという記録や、スケッチの中に球形・楕円形のものを書き残しているためです。
ビールは歴史ある飲み物で、紀元前3000年頃シュメール人によって、メソポタミア平原で栽培した麦から麦芽をつくり、それにパンを加えて発酵させ、ビールをつくっていたという記録があります。ビールの他にも、人間は古来より酵母による発酵という自然の力を利用して、日本酒やワインなどのお酒、漬物、納豆、みそ、しょうゆ、酢などをつくってきたのです。

●酵母の種類
酵母には多くの種類があり、発酵食品などに利用されています。
菌によって働きが異なり、食品加工の用途によって酵母を使い分けています。

〈酵母を使ってつくられる食品〉
〇パン
パンに使われる酵母は、サワー種、ホップス種、パネトーネ種、果実種などがあり、種類によってパンの風味や保存性が異なります。

〇味噌
水に浸し煮た大豆をつぶして麹と塩を混ぜ、熟成させたものが味噌です。
麹は酵母の仲間で、種類によって風味が変わります。

〇ビール
酵母によってビールの種類や風味が変わります。
ヴァイツェンビール、エールビール、ラガービールなども酵母の違いによって生まれます。

〇日本酒
日本酒は、精製した米を蒸し、麹と酵母で発酵させ、搾って「ろ過」したものです。
日本酒に使われる酵母の菌は、「サッカロマイセス・セレビシエ」という種類のみです。

〇ワイン
ワインは、ぶどうを搾ったジュースを発酵させてつくられます。
もともとぶどうの中にも酵母が含まれているため、温度などを管理することにより自然発酵が起こりますが、品質の安定のため、多くは培養した酵母によって発酵させています。

〇ウィスキー
ウイスキーは、原料である麦芽を酵素によって糖化させ、酵母を添加して発酵し、蒸留した後に熟成させたものです。使用する酵母の種類によって、ウイスキーの香りや味に違いが生まれます。

※日本では酒税法により、免許を持たない人がアルコール飲料をつくることは禁じられています。

●パンに欠かせない酵母
パンが膨らむためには、酵母 (イースト)による発酵が必要です。
パンが日本に伝わったのは16世紀で、1543年に鹿児島県の種子島にポルトガル船が漂着した際に、鉄砲など南蛮文化と一緒に日本に入ってきました。しかし、その後の鎖国政策により、パンは長崎・出島のオランダ商館など限られた地域だけにしか存在しなくなりました。
パンが日常食として日本で普及したのは、1859年に横浜・長崎・函館が開港され、外国人居住地ができてからのことです。パン職人はイーストの保管や温度管理にかなり苦労したといわれています。
1908年にはヨーロッパで開発された「圧搾(あっさく)酵母」が日本に伝わり、1915年には日本で「乾燥酵母」が開発されました。また、アメリカからより高品質なイーストの輸入が始まったことで、日本でもおいしく品質が安定したパンがつくれるようになりました。
イーストの登場によって、生ものであるイーストの品質や輸入に伴う鮮度の問題などがあったため、国内でもイーストの研究が盛んに行われるようになりました。パンの需要は高まり、品質が良く安価なイーストが求められるようになるにつれて、さらにイーストの研究が進みました。
現在ではパン酵母が他の食品や医薬品、バイオテクノロジーなどの分野でも活用されています。

●ビール酵母
ビール酵母とは、ビールを製造する過程でつくられる酵母のことです。ビールは、大麦の麦芽を煮てつくった麦汁に、ホップとビール酵母を加えて発酵させてつくられます。発酵した麦汁は、瓶詰めする際にろ過され、麦汁の栄養成分をたっぷりと含んだビール酵母が底に沈殿します。
ビール酵母は、戦前から栄養補給のために兵隊の栄養食として食べられていたほど栄養価が高く、たんぱく質食物繊維ビタミンB群ミネラル核酸、消化酵素などたくさんの栄養素が含まれています。酵母に含まれるたんぱく質は栄養素の50%を占め、人間に必要な全ての必須アミノ酸を含んでいます。また、ビタミンB群も豊富で、体内でエネルギーを生み出したり新陳代謝を助け、疲労回復に効果があります。
さらに、ビール酵母には免疫力を向上させる働きもあるため、病気の予防も期待できます。
酵母の中のミネラルは、カルシウムリンカリウムマグネシウムなどが含まれ、特にカリウムが豊富です。カリウムには体内のナトリウム量を保ち、血圧を調整する大切な働きがあります。
また、β-D-グルカン、グルタチオンなどの成分も豊富に含み、免疫力の向上に働きます。
ビール酵母は粉末状のものや錠剤として販売されているものがあり、食物繊維を配合した商品が「おなかの調子を整える」という内容で特定保健用食品 [※2]として認められています。

[※1:μmとは、大きさや長さを表す単位で、1μmは1mmの1000分の1の大きさです。]
[※2:特定保健用食品 (トクホ)とは、特定の保健の目的が期待できることを表示した食品のことです。身体の生理学的機能などに影響を与える保健機能成分(関与成分)を含んでいます。その保健効果が当該食品を用いたヒト試験で科学的に検討され、適切な摂取量も設定されています。また、その有効性・安全性は個別商品ごとに国によって審査されています。]

酵母の効果

●糖質の吸収を抑制する効果
現代人は、ファストフードやコンビニのお弁当、加工食品を口にすることが増えたことで、糖質を多く摂取しがちな食生活といわれています。糖質の過剰摂取が長期間続くと、血糖値を上昇させ糖尿病の原因となったり、糖質が脂質に変化して蓄積されることで肥満の原因となります。
酵母は、食べ物に含まれる糖質をアルコールと炭酸ガスに分解します。
この働きにより、食事中の糖質を体内で吸収される前に分解することで、糖質の過剰な吸収を抑制して肥満を予防したり、血糖値の上昇を抑制する効果があります。
また、酵母には過剰な糖質を分解することで、体内での消化・吸収を助ける働きもあります。

●便秘を改善する効果
酵母には、腸内で糖質の消化・吸収を助ける効果があり、食物繊維も含まれています。
酵母が消化を助けることで、腸内に余分に残る食べ物の残りカスが発生しにくくなります。
また、食物繊維は人間にとって不要な物質の吸収を妨げ、便として排泄させる働きや、水分を含んで膨張し腸を刺激することによって腸の「ぜん動運動」[※3]を盛んにし、食べ物の残りカスをすみやかに体外に排出する働きがあります。その他、食物繊維は善玉菌を増やす作用もあるため腸内の環境を整え、お通じを改善する効果があります。【1】

●免疫力を高める効果
酵母に含まれるβ-D-グルカンには、免疫力を向上させる効果があります。β-D-グルカンは特にビール酵母に豊富に含まれています。β-D-グルカンには、血液中に存在し体内に侵入した異物に対して攻撃する働きを持つ、「マクロファージ」や「NK細胞」を活性化する働きがあります。
そのため、酵母を摂取することで免疫力を高める効果が期待できます。【2】【3】

●疲労回復効果
酵母には、ビタミンB群が豊富に含まれています。ビタミンB群とは、摂取した栄養素を代謝し、エネルギーに変える働きがある成分で、細胞の新陳代謝にとって必要不可欠です。
炭水化物 (糖質)の代謝過程では、その反応をスムーズに促すために酵素が働いています。
酵素が働くためには、その働きを助ける補酵素が必要です。
酵素に含まれるビタミンB群は、吸収されたのち補酵素に代わり、代謝を促す働きをしています。
炭水化物 (糖質)は、体内で消化されてブドウ糖まで分解されると、小腸から吸収されます。
ブドウ糖は、血液によって全身の細胞に運ばれ、体を動かすエネルギーのもととして使われます。
また、ビタミンB群は補酵素となってたんぱく質や脂質の代謝を助ける働きがある大切なビタミンです。酵母はこれらのビタミンB群の働きによって、体内でエネルギーを生み出し、疲労を回復させる効果があるといえます。

[※3:ぜん動運動とは、化管などの臓器の収縮運動のことをいいます。腸がぜん動運動を行うことで排便が促進されます。]

酵母は食事やサプリメントで摂取できます

酵母を含む食品
○ビール酵母粉末
○飲料:日本酒、焼酎、ワイン、ビール
○調味料:しょうゆ、味噌、みりん、
○魚加工品:かつお節、塩辛、アンチョビ
○漬物:ぬか漬け、キムチ、ピクルスなど
○その他:ヨーグルト、チーズ、納豆

酵母はこんな方におすすめ

○肥満を予防したい方
○糖尿病を予防したい方
○便秘気味の方
○風邪をひきやすい方
○疲れやすい方

酵母の研究情報

【1】便秘症状を自覚する成人25名 (22~57歳) を対象に、乾燥ビール酵母3.75 gを含む錠剤または乳酸菌発酵ビール酵母3.75 gを含む飲料をそれぞれ3週間摂取させ、アンケートによって便性を調査したところ、乳酸菌発酵ビール酵母飲料群では摂取期間中の排便回数、排便量、排便後の感覚、1週毎の便秘自覚状況の改善が認められました。このことから、乳酸菌発酵ビール酵母は、便秘の改善作用があることが示唆されました。

【2】酵母由来の可溶性β-1,3-グルカンをマクロファージに添加すると、TNF-α産生が亢進し、貪食作用が20%増強されたことが分かりました。このことから酵母のβ‐1,3‐グルカンは免疫力を向上させる働きがある可能性が考えられました。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11388461

【3】マウスに酵母由来のグルカンを投与したところ、クレブシエラ・ニューモニエ菌(肺炎桿菌の一種)感染に対する抵抗性が増強しました 。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9138108

参考文献

・Lee JN, Lee DY, Ji IH, Kim GE, Kim HN, Sohn J, Kim S, Kim CW. (2001) “Purification of soluble beta-glucan with immune-enhancing activity from the cell wall of yeast.” Biosci Biotechnol Biochem. 2001 Apr;65(4):837-41.

・Harima HA, Mendes NF, Mamizuka EM, Mariano M. (1997) “Effect of glucan on murine lupus evolution and on host resistance to Klebsiella pneumoniae.” J Clin Lab Anal. 1997;11(3):175-8.

・高井 許子, 水道 裕久, 藤田 晃人, 小谷麻由美, 山西 敦之, 澄川 一英, 光岡 知足 (2001) “乳酸菌発酵ビール酵母飲料摂取がヒトの排便に及ぼす影響” 腸内細菌学雑誌 15(1): 27 -35 2001

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