2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧 - himaginary’s diary

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

落ちこぼれ男性:いかに社会経済的地位がジェンダーギャップを形成するか

というNBER論文をAutorらが上げている(ungated版へのリンク1、リンク2[それぞれ著者のKarbownik、Wassermanのサイト])。原題は「Males at the Tails: How Socioeconomic Status Shapes the Gender Gap」で、著者はDavid Autor(MIT)、David N. Figlio(…

パンデミックのマクロ経済学:ミニマリスト・モデル

というNBER論文が上がっている。原題は「The Macroeconomics of a Pandemic: A Minimalist Model」で、著者はLuis Felipe Céspedes(チリ大)、Roberto Chang(ラトガーズ大)、Andrés Velasco(LSE)。 以下はその要旨。 We build a minimalist model of th…

国レベルのCovid-19感染のパネル予測

前回エントリでは感染の確率的挙動を想定し国レベルのパネル推定でその推移を予測した論文を紹介したが、同様の予測を行った表題のNBER論文が上がっている。ただし前回紹介論文が感染率βについてブラウン運動を仮定したのに対し、こちらの論文ではβと回復率γ…

パンデミックリスク管理においてストキャスティックな感染率が持つ意味

というNBER論文が上がっている。原題は「Implications of Stochastic Transmission Rates for Managing Pandemic Risks」で、著者はHarrison Hong(コロンビア大)、Neng Wang(同)、Jinqiang Yang(上海財経大)。 以下はその要旨。 The reproduction numb…

なぜ米経済は過去70年のすべての不況から常に回復してきたのか?

というNBER論文をロバート・ホールらが上げている(ungated版)。原題は「Why Has the US Economy Recovered So Consistently from Every Recession in the Past 70 Years?」で、著者はRobert E. Hall(スタンフォード大)、Marianna Kudlyak(SF連銀)。 以…

最善のCOVID-19対策を行った国

としてスリランカのライターIndi Samarajivaがモンゴルを挙げている(タイラー・コーエン経由のJason Kottke経由)。以下はその記事の冒頭。 Mongolia has had the best COVID-19 response in the world. Not only do they have zero deaths, they have zero…

災害を用いた不確実性の影響の推計

ブルームらの不確実性論文をもう一丁。こちらのエントリで紹介した論文で言及していたBaker=Bloom=Terry(2020)が表題のNBER論文としてアップされたので、その要旨を紹介しておく。論文の原題は「Using Disasters to Estimate the Impact of Uncertainty…

COVID-19は再分配ショックでもある

というNBER論文が上がっている。原題は「COVID-19 Is Also a Reallocation Shock」で、著者はJose Maria Barrero(メキシコ自治工科大)、Nicholas Bloom(スタンフォード大)、Steven J. Davis(シカゴ大)。こちらで紹介した不確実性指数で有名な研究者Sco…

コロナ危機後に高インフレが来る?

という可能性についてタイラー・コーエンがMRブログで論考し、この問題に外野の野次に怯まずに正面から取り組んでいる、という称賛の言葉を添えてマーチン・ウルフのFT論説記事にリンクしている。ウルフはそこでブランシャールのPIIE論説記事とチャールズ・…

危機の祈りを

CEPRの5/20付けコロナ関連論文集に収録された「In crisis, we pray: Religiosity and the Covid-19 pandemic」という論文をMostly Economicsが紹介している。著者はコペンハーゲン大のJeanet Sinding Bentzen。以下はその要旨。 In times of crisis, humans …

科学の掲載論文における中国のディアスポラ研究者の貢献と世界の科学における中国の「大躍進」

というNBER論文が上がっている(ungated版へのリンク)。原題は「The Contribution of Chinese Diaspora Researchers to Scientific Publications and China's "Great Leap Forward" in Global Science」で、著者はQingnan Xie(南京理工大)、Richard B. Fr…

世界のCOVID-19拡散パターンの究明:2020年1-4月

というNBER論文が上がっている。原題は「Accounting for Global COVID-19 Diffusion Patterns, January-April 2020」で、著者はYothin Jinjarak(ビクトリア大ウェリントン校)、Rashad Ahmed(南カリフォルニア大)、Sameer Nair-Desai(同)、Weining Xin…

Covid-19危機のコスト:ロックダウン、マクロ経済予想、消費支出

というNBER論文をCoibionとGorodnichenkoのコンビらが上げている。原題は「The Cost of the Covid-19 Crisis: Lockdowns, Macroeconomic Expectations, and Consumer Spending」で、著者はOlivier Coibion(テキサス大オースティン校)、Yuriy Gorodnichenko…

8つの米国の戦争と2つの動乱における債務と税金

というNBER論文をトーマス・サージェントらが上げている(ungated版)。論文の原題は「Debt and Taxes in Eight U.S. Wars and Two Insurrections」で、著者はGeorge J. Hall(ブランダイス大)、Thomas J. Sargent(NYU)。 以下はその要旨。 From decompos…

教育とイノベーション:文化大革命の長い影

というNBER論文が上がっている(SSRN版、著者によるダートマス大サイトの解説記事)。原題は「Education and Innovation: The Long Shadow of the Cultural Revolution」で、著者はZhangkai Huang(清華大)、Gordon M. Phillips(ダートマス大)、Jialun Ya…

検査と検疫のマクロ経済学

というNBER論文が上がっている。原題は「The Macroeconomics of Testing and Quarantining」で、著者はMartin S. Eichenbaum(ノースウエスタン大)、Sergio Rebelo(同)、Mathias Trabandt(ベルリン自由大)。 以下はその要旨。 Epidemiology models used…

マイナス金利と金融政策のトランスミッション

12日に紹介したロゴフの論考では、マイナス金利の効果を示す実証結果としてECBの研究者らが書いた論文にリンクしていたが、その著者の一人Lorenzo Burlonが、ECB Economic Bulletinの2020年3号に表題のレポートを書いている(H/T Mostly Economics)。原題は…

FTPLが日本で成立していないように見える理由

プリンストン大のマーカス・ブルナーメイヤー(Markus K. Brunnermeier)とユリ・サニコフ(Yuliy Sannikov)のコンビ*1が、もう一人のプリンストン大の研究者Sebastian A. Merkelと共に、表題の件を分析したNBER論文「The Fiscal Theory of Price Level wit…

スペイン風邪による死がナチ党の得票を引き上げた

という実証結果を示した論文をMostly Economicsが紹介している。論文は「Pandemics Change Cities: Municipal Spending and Voter Extremism in Germany, 1918-1933 」と題されたNY連銀のスタッフレポートで、著者はKristian S. Blickle。 以下は本文の一節…

マイナス金利を深掘りすべき理由

ケネス・ロゴフが表題のProject Syndicate論説(原題は「The Case for Deeply Negative Interest Rates」)で今般の危機への対処のためにマイナス金利を活用することを訴えている(H/T Mostly Economics)。 以下はMostly Economicsの引用の孫引き。 For tho…

公衆衛生措置と経済成長:スペイン風邪に関する実証結果の再訪

タイラー・コーエンやアンドリュー・ゲルマンが取り上げているが、4/10エントリで紹介した論文に対し、表題の反証論文が出ている。原題は「Public Health Interventions and Economic Growth: Revisiting The Spanish Flu Evidence」で、著者はAndrew Lilley…

ノーベル経済学賞受賞者の親学のすゝめ

というタイトルは釣りだが、マンキューが「A good read」としてリンクしたインタビュー記事でジェームズ・ヘックマンが家族の大切さを説いている。 記事の冒頭でヘックマンは、アメリカンドリームは健在、と強調し、社会階層の固定化が進んだとする研究をい…

コロナの影響は地域限定ではない

HealthとWealthの語呂合わせをタイトルにしたコロナ関連論文がもう一つあったので、序でに紹介しておく。以下はNBERに上がっていたZhixian Lin、Christopher M. Meissner(いずれもUCデービス)の「Health vs. Wealth? Public Health Policies and the Econo…

健康と富:パンデミックのコントロールの分配効果・補足

5日エントリで紹介したWerningのアセモグルらとの共著論文解説では、統計的生命価値(VSL)を定めることを回避していた。一方、前回エントリで紹介したミネアポリス連銀論文では、VSLの決定がモデルの中で重要な役割を果たしている。VSLについて、ググって見…

健康と富:パンデミックのコントロールの分配効果

ミネアポリス連銀の表題の論文が一部で話題になっていたので、以下に要旨を訳出してみる。論文の原題は「Health versus Wealth: On the Distributional Effects of Controlling a Pandemic」で、著者はAndrew Glover(カンザスシティ連銀)、Jonathan Heathc…

英韓の明暗はどこで分かれたのか?

という点について分析したNBER論文が上がっている。論文のタイトルは「Inequality of Fear and Self-Quarantine: Is There a Trade-off between GDP and Public Health?」で、著者はSangmin Aum(明知大学校)、Sang Yoon (Tim) Lee(ロンドン大学クイーン・…

対象を最適化したロックダウンを伴う複数リスクSIRモデル

既にツイッター上などで話題になっているが、アセモグルら4人のMITの研究者が表題のNBER論文を上げている。原題は「A Multi-Risk SIR Model with Optimally Targeted Lockdown」で、著者はDaron Acemoglu、Victor Chernozhukov、Iván Werning、Michael D. Wh…

COVID-19疫病への官民の反応の追跡:州・地方政府の行動に基づく実証結果

というNBER論文が上がっている。原題は「Tracking Public and Private Responses to the COVID-19 Epidemic: Evidence from State and Local Government Actions」で、著者はSumedha Gupta、Thuy D. Nguyen、Felipe Lozano Rojas、Shyam Raman、Byungkyu Lee…

予測可能性:拡大する疫病の転換点と終息は正確に予測できるのか?

というスペインの4人の研究者が書いた論文にタイラー・コーエンがリンクしている。原題は「Predictability: Can the turning point and end of an expanding epidemic be precisely forecast?」で、著者はMario Castro、Saúl Ares、José A. Cuesta、Susanna …

CDCのかくも長き不在

今回のパンデミックで米疾病予防管理センター(CDC)が機能していない、というStat News記事*1をタイラー・コーエンが紹介している。記事の著者はハーバード・グローバル・ヘルス・インスティテュートのアシシュ・ジャ(Ashish K. Jha)所長*2。 以下は冒頭…