2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧 - himaginary’s diary

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

債務と財政赤字について真剣に考える:財政タカ派は我々の子供たちに多大な損害を与えた

と題したエントリ(原題は「Getting Serious About Debt and Deficits: The Deficit Hawks Did Enormous Harm to Our Kids」)でディーン・ベーカーが、インフレ圧力が限界に達する財政赤字幅が40年前より上昇した、と考えるべき理由を2つ挙げている。 所得…

独立は破壊的イノベーションの解ではない

Joshua Gansが表題のエントリ(原題は「Independence is no disruption solution」)で、下記の自著を参照しつつ、破壊的イノベーションに直面した企業が独立ユニットを立ち上げて新たなビジネス空間でスタートアップ企業ならびに自社そのものと競争する、と…

帰属消費における測定誤差

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Measurement Error in Imputed Consumption」で、著者はScott R. Baker*1(ノースウエスタン大)、Lorenz Kueng(同)、Steffen Meyer(ライプニッツ大)、Michaela Pagel(コロンビア大)。 以下はその…

商品通貨と金融政策

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Commodity Currencies and Monetary Policy」で、著者はMichael B. Devereux(ブリティッシュコロンビア大)、Gregor W. Smith(クイーンズ大)。 以下はその要旨。 Countries that specialize in commo…

信用の成長が実体経済の成長をクラウドアウトするのはなぜか?

というNBER論文をMoney, Banking, and Financial Marketsブログの主宰者の一人であるブランダイス大学のStephen G. Cecchettiらが書いている(3年前のバージョン)。原題は「Why Does Credit Growth Crowd Out Real Economic Growth?」で、もう一人の著者はB…

住宅価格リスクの認識と住宅保有

というNBER論文が上がっている(ungated[SSRN]版)。原題は「Perception of House Price Risk and Homeownership」で、著者はManuel Adelino(デューク大)、Antoinette Schoar(MIT)、Felipe Severino(ダートマス大)。 以下はその要旨。 This paper an…

金融危機か、住宅バブル崩壊か:大不況の深刻化を巡るバーナンキとクルーグマンの論争・続き

昨日紹介したバーナンキのエントリに、クルーグマンが「Steeper Versus Deeper (Wonkish)」と題したエントリで反論したほか、ディーン・ベーカーも異を唱えた。 以下はベーカーの論点の概要。 金融危機が、住宅価格の低下と、住宅バブルがもたらした消費ブー…

金融危機か、住宅バブル崩壊か:大不況の深刻化を巡るバーナンキとクルーグマンの論争

昨日エントリでは、10年前の危機の本質は信用不安であって住宅バブルの崩壊ではない、というバーナンキ=ポールソン=ガイトナー見解と、財政刺激策こそが対処策として重要、というサマーズの見解を対照させたDavid Warshのエントリを紹介した。一方、クルー…

10年前にオバマがやらなかったこと

Economic Principalsサイトを運営して経済コラムを書いているDavid Warshが、オバマとサマーズは危機当時に金融不安という本質を理解せずに財政政策に走った、という考察を示している。 Obama ... could have explained that, while a decline in home price…

中銀のコミュニケーションにおける非金融ニュース

というNBER論文が上がっている(ungated版[SSRN版])。原題は「Non-Monetary News in Central Bank Communication」で、著者はAnna Cieslak(デューク大)、Andreas Schrimpf(BIS)。 以下はその要旨。 We quantify the importance of non-monetary news …

金利の世界的トレンド

というNBER論文が上がっている(ungated版[NY連銀のスタッフレポート])。原題は「Global Trends in Interest Rates」で、著者はMarco Del Negro、Domenico Giannone、Marc P. Giannoni、Andrea Tambalotti(Marc Giannoniのみダラス連銀、他はNY連銀)。 …

漏れのあるマクロプルーデンシャル政策

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Macroprudential Policy with Leakages」で、著者はJulien Bengui(モントリオール大)、Javier Bianchi(ミネアポリス連銀)。 以下はその要旨。 The outreach of macroprudential policies is likely …

法外な課税特権

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The Exorbitant Tax Privilege」で、著者はThomas Wright、Gabriel Zucman(UCバークレー)。 以下はその要旨。 We estimate and attempt to explain the evolution of the taxes paid by U.S. multinat…

金融危機におけるパニック要因とバランスシート要因

バーナンキがブルッキングス研究所の学術誌「The Brookings Papers on Economic Activity (BPEA)」ならびにそれを基にした秋のコンファランス向けに「The real effects of the financial crisis」という論文を書き、その内容を「Financial panic and credit …

ルーチン的な仕事の消失の影響

SF連銀のEconomic Lettersで、製造業というよりはルーチン的な業務の衰退が職の喪失を招いている、という報告がなされている。レポートのタイトルは「The Prime-Age Workforce and Labor Market Polarization」で、著者はRob VallettaとNathaniel Barlow。 A…

大平穏期の復活?

「Is the Great Moderation back?」と題したブログエントリでAntonio Fatásが以下の図を示している。 The data speaks for itself. There is a marked reduction in volatility in the mid-80s that persisted all the way to 2007. Then the increase in vo…

知らん

奇しくも昨日エントリへの応答のようなタイトルだが、表題のNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「I Don't Know」で、著者はMatthew Backus(コロンビア大)、Andrew Little(UCバークレー)。 以下はその要旨。 Experts with reputational concern…

貴兄が知っていることを私が知っていると貴兄は知っているのか? サーベイデータにおける高次の考え

というNBER論文をCoibion=Gorodnichenko=Kumar*1らが上げている(ungated版)。原題は「Do You Know That I Know That You Know...? Higher-Order Beliefs in Survey Data」で、著者はOlivier Coibion(テキサス大オースティン校)、Yuriy Gorodnichenko(…

異時点間のケインジアン・クロス

というNBER論文を、ここで紹介した論文の著者であるAdrien Auclert(スタンフォード大)とMatthew Rognlie(ノースウエスタン大)らが書いている(ungated版。cf. キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)での6月のプレゼン、unrepresentative agentさんによる…

マイナス金利は銀行に大して悪影響を及ぼさない

「Why Have Negative Nominal Interest Rates Had Such a Small Effect on Bank Performance? Cross Country Evidence」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はJose A. Lopez(SF連銀)、Andrew K. Rose(UCバークレー)Mark M. Spiegel(SF連銀…

内生的に保険が不可能なテールリスクの存在下の資産価格

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Asset Pricing with Endogenously Uninsurable Tail Risk」で、著者はHengjie Ai(ミネソタ大)、Anmol Bhandari(同)。 以下はその要旨。 This paper studies asset pricing in a setting in which id…

リターンのボラティリティの長期記憶/スケーリング則

Francis Dieboldが、表題のブログエントリ(原題は「Long Memory / Scaling Laws in Return Volatility」)で以下のように書いている。 The 25-year accumulation of evidence for long memory / fractional integration / self-similarity / scaling laws i…

米国が再びゼロ金利に陥る確率は今後10年間で1/4

リッチモンド連銀の研究者(Thomas A. Lubik、Christian Matthes、David A. Price*1)が、同連銀のEconomic Briefで、今後10年間にFF金利が再びゼロ金利下限をヒットする確率はおよそ1/4である、という推計結果を示している。 Lubik and Matthes began by es…

死、トラウマ、および神:従軍経験が宗教性に与える影響

というNBER論文が上がっている。原題は「Death, Trauma and God: The Effect of Military Deployments on Religiosity」で、著者はResul Cesur(コネチカット大)、Travis Freidman(ニューハンプシャー大)、Joseph J. Sabia(サンディエゴ州立大学)。 以…

効用関数に資産を入れたニューケインジアンモデル

というNBER論文をサエズらが書いている。原題は「A New Keynesian Model with Wealth in the Utility Function」で、著者はPascal Michaillat(ブラウン大)、Emmanuel Saez(UCバークレー)。 以下はその要旨。 This paper extends the New Keynesian model…

部分的に平等主義のLASSO

ビッグデータから予測に使う説明変数を選択する手法について、5/27に紹介したNY連銀ブログエントリでは、以下の2つがある、と説明している。 疎モデル技法は、多数の説明変数候補から、予測力の最も高い説明変数の小集合を選択することに焦点を当てる。その…

サマーズの長期停滞論は責任逃れの方便だったのか?

スティグリッツが、名指しこそ避けたものの、サマーズの長期停滞論は自身の責任逃れの方便だった、というProject Syndicate論説を書いて物議を醸している。それにサマーズが同じくProject Syndicate論説で反論し、両者の言い分をアレックス・タバロックが簡…

スティーブン・ローチの見たQEの5つの教訓

AEIセミナーでの昨日紹介したケビン・ウォーシュ(Kevin Warsh)の講演の後には、元モルスタアジア会長で現イェール大・シニアフェローのスティーブン・ローチが登壇している。ローチもウォーシュと同様、QEにやや懐疑的な立場を示しており*1、以下の5つの論…

QE1策定に関わった元FRB理事のQE観

昨日紹介したQEを巡るAEIセミナーでは、危機時にFRB理事を務めていたKevin Warshも登壇している。Warshは、現時点の彼のQEの評価として以下の5点を挙げている。 QE1は成功だったが、単独で成功したわけではなく、FRBの他の政策との組み合わせの中で効果を発…

ギャニオン「日本で露わになった量的緩和の限界」

アメリカン・エンタープライズ研究所が、10年間の量的緩和の教訓をテーマとした講演とパネル討論の会を6月に開催した(H/T Mostly Economics)。その終盤の会場からの質問への回答の中で、ジョー・ギャニオンが日本のこれまでの量的緩和政策に毒を吐いている…