2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧 - himaginary’s diary

2016-12-01から1ヶ月間の記事一覧

デス・スター破壊の経済学

デビッド・ベックワース経由で、昨年末に「It’s a Trap: Emperor Palpatine’s Poison Pill」という論文が出ていたことを知った。著者はセントルイス・ワシントン大学のZachary Feinstein。以下はその要旨。 In this paper we study the financial repercussi…

マッチング関数の分解

というNBER論文をピーター・ダイアモンドらが書いている(ungated版、スライド版)。原題は「Disaggregating the Matching Function」で、著者はPeter A. Diamond(MIT)、Ayşegül Şahin(NY連銀)。 以下はその要旨。 The aggregate matching (hiring) func…

新重商主義者の挑戦

戦後の日本の経済成長の方針を重商主義と表現した日経論説を批判するツイートを幾つか目にしたが、Wikipediaを見ると 20世紀に入っても、輸出主導で経済成長を図ろうという政策は、さまざまな形で見られる。このような貿易政策は、新重商主義あるいは単に重…

ストック担保制約のある開放経済の大小ならびにサンスポットショックに対する調整

というNBER論文をコロンビア大のStephanie Schmitt-GrohéとMartín Uribeが書いている(ungated版、原題は「Adjustment to Small, Large, and Sunspot Shocks in Open Economies With Stock Collateral Constraints」)。 以下はその要旨。 This paper charac…

資本主義4.1

資本主義4.0という概念を打ち出した(cf. ここ)アナトール・カレツキーが、23日付のProject Syndicate論説の末尾で、“良いか悪いかはともかく、「資本主義4.1」と私が呼ぶ新しい経済モデルの探求が明確に始まった(the search for new economic models that…

分布国民勘定:米国における手法と推計

というNBER論文をピケティ=サエズ=ザックマンが上げている*1。原題は「Distributional National Accounts: Methods and Estimates for the United States」で、著者はThomas Piketty(パリ経済学校)、Emmanuel Saez(UCバークレー)、Gabriel Zucman(同…

マネタリズムという亡霊

と題した講演(原題は「The Spectre of Monetarism」)をマーク・カーニーBOE総裁が、今月5日にリバプールジョンムーア大学のロスコー講演*1で行っている(クルーグマン経由のスキデルスキー経由)。以下はその冒頭。 Real incomes falling for a decade. Th…

M&Aは経済にとってプラスかマイナスか?

2ヶ月前に紹介した論文の著者の一人であるBruce Blonigenが、ProMarket*1のインタビューに答えている(H/T Economist's View、ちなみにBlonigenはMark Thomaのオレゴン大の同僚)。 そのインタビューでBlonigenは研究の概要について以下のように説明している…

ベイズの定理はキリスト教の擁護から始まった

というブログエントリにEconomist's Viewがリンクしている。そのエントリは、脳科学とベイズの定理を扱ったノーチラス誌*1のブログ記事の冒頭部を引用したものである。 以下はその冒頭部。 Presbyterian reverend Thomas Bayes had no reason to suspect he’…

テイラー「カシュカリはモデルを示せ」

20日エントリで紹介したカシュカリのWSJ論説に対し、ジョン・テイラーがWSJ論説で早速反論した上で、自ブログエントリでカシュカリはモデルを示していない、と批判した。 Kashkari mentioned the Taylor rule a lot in his op-ed. For example, he reported …

最低限の温暖化対策しかなされない時代における気候変動に関する予測と不確実性

というNBER論文をノードハウスが上げている。原題は「Projections and Uncertainties About Climate Change in an Era of Minimal Climate Policies」。 以下はその要旨。 Climate change remains one of the major international environmental challenges …

コンピュータにはFRBの仕事は務まらない

とミネアポリス連銀のカシュカリ総裁がWSJ論説で書いている(H/T Economist's View)。 以下はその後半部。 Over the past 25 years the world has seen extraordinary technological innovations, the rise of China, the creation and strains of the euro…

鉛筆なめなめ予測の精度

14日に紹介したBinderのエントリでは、インフレ率に関する人々の予測ならびに記憶が曖昧な証左として、回答されたインフレ率が5%の倍数に集まりやすい傾向が指摘されていた*1。 5日付のアトランタ連銀ブログ記事では、プロの予測者の成長率予測でも同様の傾…

サミュエルソン「日本ならば人間国宝になっていた経済学者」

13日死去したトーマス・シェリングについて、Tim Taylorがブログ記事を書いている。 Thomas Schelling (1921-2016), who died earlier this week, shared the economics Nobel prize in 2005 "for having enhanced our understanding of conflict and cooper…

トランプの大規模インフラ投資計画? これは罠だ。

と題したWaPo論説を、オバマ政権やヒラリー・クリントンの選挙活動で顧問を務めたロン・クラインが1ヶ月ほど前に書いている。原題は「Trump’s big infrastructure plan? It’s a trap.」で、アクバー提督の有名な台詞を意識しているのかな、と思ったら、案の…

「構造改革」という言葉は捨て去るべき

とデロングが唱えている。 "Structural reforms" are extremely dangerous unless you have a high-pressure economy to pull resources out of low productivity into high productivity sectors. The view in the high councils of Europe is that, when t…

日本の人口動態が生産性とインフレに与える影響

というIMF論文が出ている。原題は「The Impact of Demographics on Productivity and Inflation in Japan」で、著者はYihan Liu、Niklas Westelius。 以下はその要旨。 Is Japan’s aging and, more recently, declining population hampering growth and ref…

「1年前のインフレ率は?」「そんな昔のことは覚えてない」「1年後のインフレ率は?」「そんな先のことは分からない」

カサブランカ*1のボギー流に言えばそうなるのだろうが――あるいは宇崎竜童流に言えば「一寸前なら憶えちゃいるが 一年前だとチトわからねエなあ」といったところか――Carola Binderが「The Future is Uncertain, but So Is the Past(未来は不確かだが、過去も…

実体経済の変動は内生的、金融市場の変動は外生的

という主旨の論文をFrancis Dieboldが紹介している。論文のタイトルは「Uncertainty and Business Cycles: Exogenous Impulse or Endogenous Response?」で、著者はSydney C. Ludvigson(NYU)、Sai Ma(同)、Serena Ng(コロンビア大)。 以下はその要旨…

男らしい男を如何に女性的な仕事に就かせるか?

10日エントリで紹介したブログ記事でクルーグマンが、ラストベルト地域にサービス業を移転させても歓迎されないだろう、と書いていたが、その話を詳説したようなブルームバーグ論説が上がっている(H/T マンキュー)。書いたのはミシガン大学のBetsey Steven…

オールドケインジアンモデルとアスピリン

ロバート・ワルドマンが、オールドケインジアンモデルをアスピリンに例えている。 As usual, I want to talk about crude empiricism vs microfoundations. I will argue that we should look at what has been tried in the past and whether it seems to h…

貿易と事実と政治と

12/4にクルーグマンが、貿易と雇用に関する混乱を明確化する、として簡単なメモを書き、ブログで紹介した。以下はそのメモからの引用。 1. How much of a role did trade play in the long-term decline in the manufacturing share of total employment, wh…

韓国がインド(や他のアジア諸国)のために通貨を作っていた頃…

と題したエントリ(原題は「When South Korea printed currency for India (and other Asian countries)…」)でMostly Economicsが、インドのEconomic & Political Weekly誌の記事を紹介している。 以下は記事の要旨。 The 1980s was a period of currency s…

ボルカーのインフレ抑制は実際にはバーンズのインフレ抑制だったのか?

と題したエントリ(原題は「Was Volcker disinflation actually Burns disinflation?」)でMostly Economicsが、リッチモンド連銀のThomas A. Lubik、Christian Matthes、Tim Sablikが書いた小論を紹介している。 以下はその小論の要旨。 Economists often d…

株式のリターンのクロスセクションの歴史

という、ファーマ=フレンチの「The Cross-Section of Expected Stock Returns」論文のタイトルを予想から歴史に転じさせたような題名のNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The History of the Cross Section of Stock Returns」で、著者はJuhani…

米国はバナナ共和国への第一歩を踏み出したのか?

トランプのキヤリア社への圧力を取り上げたサマーズ論説(WaPo、本人サイト)に、クルーグマンとマンキューが反応した。 以下はクルーグマンの反応。 ...as Larry Summers says, the precedent — although tiny — is not good: it’s not just crony capitali…

経済学は経済学者に任せておくには重要過ぎる

というのは良く言われることだが(例:ここ)、物理学者でありサイエンスライターであるマーク・ブキャナンがブルームバーグ論説で以下の本を取り上げ、改めてそうした主張を展開している(H/T Mostly Economics)。The Econocracy: The Perils of Leaving E…

トランプ勝利の責任の一端は経済学者にもある

とダニ・ロドリックがProject Syndicateで書いている(H/T Mostly Economics)。 Are economists partly responsible for Donald Trump’s shocking victory in the US presidential election? Even if they may not have stopped Trump, economists would ha…

日の照るうちにマクロプルーデンシャルの干し草をつくれ

マクロプルーデンシャル政策ネタをもう一丁。BOEブログに、資本規制はタイミングが重要、という表題のエントリが上がっている(H/T Economist's View、原題は「Making Macroprudential Hay When the Sun Shines」)。 以下はその冒頭近くの文章。 Within the…

マクロプルーデンシャル政策の展望と課題

ペンシルベニア大のEnrique G. Mendozaが、「Macroprudential Policy: Promise and Challenges」というNBER論文を上げている(ungated版、スライド版)。 以下はその要旨。 Macroprudential policy holds the promise of becoming a powerful tool for preve…