2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧 - himaginary’s diary

2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ユリ・サニコフと動学的契約への連続時間アプローチ

このたびジョン・ベイツ・クラーク賞を受賞したユリ・サニコフの業績を、A Fine Theoremブログが表題のエントリ(原題は「Yuliy Sannikov and the Continuous Time Approach to Dynamic Contracting」)で取り上げている。以下はそこからの引用。 Sannikov’s…

ナッジが逆効果になる時

について警告した記事をライス大学のUtpal Dholakiaがハーバードビジネスレビューに書いている(H/T Mostly Economics)。 以下はその冒頭部。 In the approximately eight years since the book Nudge, by Richard Thaler and Cass Sunstein, came out, nud…

南部の富は風と共に去ったのか?

「The Impact of the Civil War on Southern Wealth Holders」というNBER論文が上がっている。著者はBrandon Dupont(西ワシントン大)、Joshua Rosenbloom(アイオワ州立大)。 以下はその要旨。 The U.S. Civil War and emancipation wiped out a substant…

何が外国人戦闘員をISISに参加させているのか?

という、かなり時事的な国際政治のトピックを扱ったNBER論文が上がっている。原題は「What Explains the Flow of Foreign Fighters to ISIS?」で、著者はEfraim Benmelech(ノースウエスタン大)、Esteban F. Klor(ヘブライ大)。 以下はその要旨。 This pa…

クルーグマンがファンブルしたこと

クルーグマンが、自らの1990年代末の日本に関する分析を振り返り、自分の最良の仕事であった、と書いている。そして、モデルを書き下ろすまでは流動性の罠など幻想に過ぎず、日本の金融当局が仕事をしていないだけだと思っていたが、モデルを書いてみたらそ…

貿易赤字はいかに職を奪うのか?

アラン・ブラインダーが貿易に関するWSJ論説を書き、マンキューが「Alan Blinder has a great column」としてリンクした一方で、ディーン・ベーカーとジャレッド・バーンスタインが反発している。 両者が特に反発したのが以下の一節。 The U.S. multilateral…

サンダース経済分析騒動・余聞

サンダース候補の経済政策の効果についての分析で騒動を引き起こしたジェラルド・フリードマンがINETブログに記事を書き、EconospeakのProGrowthLiberal(PGL)やクルーグマンの反発を買っている*1。特に反発を買ったのが、ローマー夫妻も新しい古典派に取り…

経済学基本原理誇張主義

ノアピニオン氏が、経済学入門で習うような基本原理の正しさを過大に評価する傾向を「101ism」と呼んだ*1。それを受けてクルーグマンが、「101 Boosterism」というブログエントリを書いている。そこで彼は、仮に経済学基本原理が正しいとしても、それが重要…

ゲーテッドコミュニティへの道?

「Stirring Up a Hornets' Nest: Geographic Distribution of Crime」というNBER論文が上がっている(ungated版)。著者はSebastian Galiani(メリーランド大)、Ivan Lopez Cruz(インディアナ大)、Gustavo Torrens(同)。 以下はその要旨。 This paper d…

開放経済における長期停滞

というNBER論文をサマーズとエガートソンらが書いている。論文の原題は「Secular Stagnation in the Open Economy」で、著者はGauti B. Eggertsson(ブラウン大)、Neil R. Mehrotra(同)、Lawrence H. Summers(ハーバード大)。 以下はその要旨。 Conditi…

インフレ引き上げのための金利引き上げ? ニューケインジアンモデルにおける新フィッシャー性

新フィッシャー派(フィッシャー式逆さ眼鏡派)の理論に関する表題のNBER論文が上がっている。原題は「Raise Rates to Raise Inflation? Neo-Fisherianism in the New Keynesian Model」で、著者はJulio Garín(ジョージア大)、Robert Lester(コルビー大)…

銀行危機への企業の対応性:信頼と企業間信用の役割

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「Corporate Resilience to Banking Crises: The Roles of Trust and Trade Credit」で、著者はRoss Levine(UCバークレー)、Chen Lin(香港大)、Wensi Xie(香港中文大)。 以下はその要旨。 Are firms…

失業給付延長の限定的なマクロ経済的影響

失業給付の延長が雇用に与えた影響についての研究はこれまでも紹介したことがあったが(ここ、ここ)、その件についてのまた新たな表題のNBER論文が上がっている。原題は「The Limited Macroeconomic Effects of Unemployment Benefit Extensions」で、著者…

変動相場制は経常収支の調整を早めるか?

前回エントリで紹介したクルーグマンの議論では、海外からの資本流入が突然止まるケース(「sudden stop」)について触れた際にBOEブログエントリにリンクしていたが、そのリンク先では、変動相場制の方が固定相場制よりも経常収支の不均衡をより速やかに調…

弾力性悲観主義

クルーグマンが、実質為替相場は貿易収支に影響しない、という最近復活しつつある議論を「弾力性悲観主義(elasticity pessimism)」と呼び、それへの反論として以下の3点を指摘している。 欧州周縁国への資本流入はインフレと実質為替相場の増価をもたらし…

金融危機における流動性の実体経済への影響:自動車販売からの実証的結果

というNBER論文が上がっている(ungated版)。原題は「The Real Effects of Liquidity During the Financial Crisis: Evidence from Automobiles」で、著者はEfraim Benmelech(ノースウエスタン大)、Ralf R. Meisenzahl(FRB)、Rodney Ramcharan(南カリ…

クルーグマン「保護主義は大量失業をもたらさない」

4/9付エントリでクルーグマンが以下のように書いている。 I come here not to praise Trump — God no — and would be happy to see his political ambitions buried, with maximum ignominy. He would destroy American civil society; destroy our hopes of…

投資家調査に見る暴落に関する見方

というNBER論文をシラーらが書いている。原題は「Crash Beliefs From Investor Surveys」で、著者はWilliam N. Goetzmann(イェール大)、Dasol Kim(ケース・ウェスタン・リザーブ大)、Robert J. Shiller(イェール大)。 以下はその要旨。 Historical dat…

貿易開放度の測定

というNBER論文が上がっている。原題は「Measuring Openness to Trade」で、著者はMichael E. Waugh(NYU)、B. Ravikumar(セントルイス連銀)。 以下はその要旨。 In this paper we derive a new measure of openness—the trade potential index—that quan…

医者は間違いを犯す、よって治療法が改善できる

コロンビア大のW. Bentley MacLeodが「Viewpoint: The Human Capital Approach to Inference」というNBER論文(ungated版)を書いている(H/T Francis Diebold)。以下はその要旨。 The purpose of this essay is to discuss the “human capital” approach t…

インフレ期待に関する誤解

デロングが自戒の意味を込めて、クルーグマン「The Return of Depression Economics」(1999年*1)に対する当時の書評を再掲している。自戒の意味を込めて、というのは、以下の記述が誤っていたことを本人も認めているためである。 But at this point Krugma…

インフルエンザ・パンデミック・リスクの総コスト

というNBER論文をサマーズらが書き、サマーズHPで紹介されている(ungated版もアップされている)ほか、こちらのサイトでは皮肉交じりに紹介されている。原題は「The Inclusive Cost of Pandemic Influenza Risk」で、著者はVictoria Y. Fan(ハワイ大)、De…

割引オイラー方程式に関するノート

というNBER論文をエミ・ナカムラ(Emi Nakamura)とJon Steinssonらが書いている(ungated版)。原題は「The Discounted Euler Equation: A Note」で、著者はAlisdair McKay(ボストン大)、Emi Nakamura(コロンビア大)、Jón Steinsson(同)。 以下はその…

金融摩擦と最適インフレ率

についてマーカス・ブルナーメイヤーらが書いたNBER論文が上がっている(ungated版)*1。論文のタイトルは「On the Optimal Inflation Rate」で、著者はMarkus K. Brunnermeier、Yuliy Sannikov(いずれもプリンストン大)。 以下はその要旨。 In our incomp…

非伝統的金融政策の理論/金融モデルにおけるアニマルスピリット

ロジャー・ファーマーのNBER論文が2本上がっている。一つは「The Theory of Unconventional Monetary Policy」と題されたPawel Zabczyk(BOE)との共著論文(ungated版)で、要旨は以下の通り。 This paper is about the effectiveness of qualitative easin…

オンライン価格とオフライン価格は似ているのだろうか? 大手マルチチャネル小売業者からの実証結果

というNBER論文(原題は「Are Online and Offine Prices Similar? Evidence from Large Multi-Channel Retailers」)をAlberto F. Cavallo(MIT)が書いている。 以下はその要旨。 Online prices are increasingly being used for a variety of inflation me…

FRBのストレステストの結果に含まれる情報の評価

というスタッフレポートをNY連銀が出している。原題は「Evaluating the Information in the Federal Reserve Stress Tests」で、著者はMark Flannery(SEC、フロリダ大)、Beverly Hirtle(NY連銀)、Anna Kovner(同)。 以下はその要旨。 We present evide…

企業の高収益の意味を判断するのは時期尚早?

昨日紹介したサマーズの企業収益に関する考察はエコノミスト誌のカバーストーリーを受けたものだったが、同じカバーストーリーを見てConversable EconomistブログのTim Taylorも企業収益について考えを巡らせている。 以下はその概要。 GDPに対する比率など…

企業の高収益と長期停滞仮説

について「Corporate profits are near record highs. Here's why that’s a problem.」と題した論説でサマーズが論じている(H/T Economist's View;初出はWaPoのWonkblog)。 記事の冒頭でサマーズは、米国企業の利益率が史上最高に近いこと、利益のうち資…

IT関係者と経済学関係者の意見交換会開かる

昨日都内で、情報技術関係者と経済学関係者の会合が開かれた。ビッグデータ処理など情報技術においても経済学が無視できなくなっており、同時に経済学でも高度な情報技術がますます必要とされていることから、両者の意見交換会を開いてお互いの分野の交流を…