2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧 - himaginary’s diary

2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

緊密な相関、緩い相関、無相関

Think outside the box(totb)さんが既に取り上げているが、投資の金利への反応が乏しい、という論文をEconomist誌が表題の記事(原題は「Tight, loose, irrelevant」)で紹介している*1。以前、CFOへのアンケート調査に基づく同主旨のFRB論文を取り上げた…

ミクロ経済の不確実性と国際貿易とマクロの変動

以下はGeorge Alessandria(ロチェスター大学からフィラデルフィア連銀に出向)、Horag Choi(豪モナシュ大学)、Joseph P. Kaboski(ノートルダム大学)、Virgiliu Midrigan(NYU)のNBER論文「Microeconomic Uncertainty, International Trade, and Aggreg…

反循環的政策としての所要準備額

以下はPablo Federico(ブラックロック)、Carlos A. Vegh(ジョンズ・ホプキンス大)、Guillermo Vuletin(ブルッキングス研究所)によるNBER論文「Reserve Requirement Policy over the Business Cycle」*1の要旨。 Based on a novel quarterly dataset fo…

最低賃金はやはり低熟練労働者に悪影響を与える

David Neumark、J.M. Ian Salas、William Wascherが、最低賃金に関する自らの研究の正しさを主張するNBER論文「More on Recent Evidence on the Effects of Minimum Wages in the United States」を書いている。 以下はその要旨。 A central issue in estima…

コランダー「研究能力と政策提言能力を同一視している経済学者は経済学の洞察を忘れている」

David Colanderがジャン・ティロールのノーベル賞受賞に寄せて、ノーベル賞受賞者に政策の処方箋を訊くのは間違いだ、というINETブログエントリを書いている(H/T Mostly Economics)。そこで彼は、街灯の下で鍵を探すという経済学に関する寓話を引き、以下…

相続財産は経済的機会をもたらす?

格差について触れたイエレンのボストン講演が波紋を呼んでいるが、ブルッキングス研究所のRichard V. Reevesが、一般の受け止め方に反し、この講演はイエレンの内なる保守主義を明らかにしたのではないか、と評している。Reevesによれば、イエレンは、米国に…

ヘリコプターはまだ呼ぶな!

以前紹介したWillem Buiterのヘリコプターマネー論文にTony Yatesが表題のブログエントリ(原題は「Don’t call the helicopters yet!」)で異議を唱え、それにNick Roweとサイモン・レン−ルイスが反応し、さらにそれにYatesが反論した。 以前紹介したBuiter…

アベノミクス下で長期金利と銀行の金利リスクエクスポージャーはどうなるか?

IMFOAPのHPサイドバー経由の論文をもう一丁。以下は昨年10月のSerkan Arslanalp、Raphael W. Lamによる「Outlook for Interest Rates and Japanese Banks’ Risk Exposures under Abenomics」の要旨。 This paper examines how Japan’s long-term interest ra…

円が買われる時

昨日紹介したIMFペーパーは、IMFアジア太平洋地域事務所 (OAP)のHPのサイドバー「Working Papers/Staff Discussion Notes/IMF Survey」でもリストアップされていた。そこには他に「The Curious Case of the Yen as a Safe Haven Currency: A Forensic Analys…

日本の高齢化はデフレ的か?

というIMFワーキングペーパーが出ている(H/T Edward Hugh)。原題は「Is Japan’s Population Aging Deflationary?」で、著者はDerek Anderson、Dennis P. J. Botman、Ben Hunt 。 以下はその要旨。 Japan has the most rapidly aging population in the wor…

ユーロ加盟後のポーランドや如何に?

という趣旨の5年前の論文がなぜかEconomist's Viewのサイドバーの「Monetary Economics Working Papers」の欄に浮上していた。原題は「The Macroeconomic Effects of Losing Autonomous Monetary Policy after the Euro Adoption in Poland」で、著者はMich…

…そして期待リターンのクロスセクション

昨日エントリで紹介したワルドマンの考察に内容的に近い表題のNBER論文をタイラー・コーエンが紹介している。論文の原題は「…and the Cross-Section of Expected Returns」で*1、著者はCampbell R. Harvey(デューク大)、Yan Liu(テキサスA&M大)、Heqing …

ドイツ人が真珠湾を爆撃した時

ここで紹介した2010年のバーナンキ宛書簡の署名者の一人であるAQRキャピタルのCliff Asness――アルファベット順なので筆頭署名者になっている――が、クルーグマンらの批判に対し、ドイツ人が真珠湾を爆撃した時のように*1まだ決着は付いちゃいねえ、と猛然と反…

新フィッシャー派はニューケインジアンよりもニューケインジアンモデルを正しく理解している

The Everyday Economistブログを運営するジョシュ・ヘンドリクソン(Josh Hendrickson)が、Peter Howittの1992年論文*1を参照しつつ、ジョン・コクランらフィッシャー式逆さ眼鏡派/新フィッシャー派*2のニューケインジアンモデル解釈は正しい、と論じてい…

債務、デフォルト、債務免除の遠い鏡

カーメン・ラインハートがChristoph Trebesch(ミュンヘン大)と共に表題のNBER論文(ungated版*1)を書いている(原題は「A Distant Mirror of Debt, Default, and Relief」*2)。 以下はその要旨。 We take a first pass at quantifying the magnitudes of…

酔いどれ投資

3年ほど前にブログ上の貨幣論議でStephen Williamsonと丁々発止とやり合い*1、最近はピケティ論で久々にエコノブロゴスフィアの表舞台に顔を覗かせたMatthew Rognlieが、アンドレイ・シュライファーらとNBER論文(ungated版)を書いている。論文のタイトルは…

ずれた間の悪さも…・補足

12日エントリに関して、 window.twttr = (function(d, s, id) { var js, fjs = d.getElementsByTagName(s)[0], t = window.twttr || {}; if (d.getElementById(id)) return t; js = d.createElement(s); js.id = id; js.src = "https://platform.twitter.com…

自国窮乏化論者が忘れていること・補足

昨日エントリに、 輸入価格の為替感応度の方が低すぎるように見えるので、こちらを0.7程度に上げたシミュレーションをやって欲しかった というコメントを頂いたので、試しにやってみる。 <円ドル:13年度=103.5、14年度=107> <円ドル:13年度=110、14…

自国窮乏化論者が忘れていること

岩田一政氏が円安による交易損失に警鐘を発している(H/T 本石町日記さん)。それを読んで、円安になれば円建ての輸出価格も上がり、その点において輸入資源価格の上昇と円安は異なる、という単純な事実をきちんと押さえていないのではないか、という点が気…

ずれた間の悪さも…

齊藤誠氏が、三井住友トラストペンションジャーナルの2014年6月号(Vol.3)の記事において、実質為替レートと日米の物価連動国債の金利差との関係について考察している(H/T 氏の10/11ツイート)。両者の関係自体への考察には異論は無いが、結論の一項で以下…

ナルシシズムと自信過剰と成功と

クリス・ディローが表題の件について以下のような考えを巡らせている。 自信過剰とナルシシズムから経済的成功への因果関係はあるだろう。 ナルシストは挫折によって心が折れないだけの面の皮の厚さがある。 雇用者が実際の能力と取り違えるような出来る雰囲…

構造予測への月次データフローの活用

というBOE論文をNEP-DGE Blogが紹介している(H/T EconAcademics.org)。論文の原題は「Exploiting the monthly data flow in structural forecasting」で、著者はDomenico Giannone(ローマ社会科学国際自由大学(LUISS)、CEPR)、Francesca Monti(BOE、CfM…

為替相場ポピュリズム

という論文をフランスはセルジー=ポントワーズ大学のSainan HuangとCristina Terraが書いている(原題は「Exchange Rate Populism」)。 以下はその要旨。 East Asian and Latin American economies present opposite exchange rate electoral cycles: exch…

頑健なベンチマークの設計

というNBER論文をダレル・ダフィーらが書いている。原題は「Robust Benchmark Design」で、著者はDarrell Duffie、Piotr Dworczak(いずれもスタンフォード大)。 以下はその要旨。 Recent scandals over the manipulation of LIBOR and foreign exchange be…

公共投資が本当にフリーランチである理由

3日エントリではIMFの公共支出論に対するマンキューの懐疑論を取り上げ、以下のように書いた。 なお、インフラ支出については最近サマーズもIMFと同様の主張をしているが(cf. ここ)、かつての上司への気兼ねのためか、マンキューはサマーズへの批判を控え…

過剰な数学が経済学の空白をもたらした?

アーノルド・クリングが、マクロ経済学の現状について論じたMark ThomaのThe Fiscal Times論説を取り上げ、以下のように述べている。 The problem with macroeconomics is not that it has become overly mathematical – it is not the tools and techniques…

沈黙を破ったFRB

ウィリアム・ダドリーNY連銀総裁が、10/2のNYUスターン経営大学院での講演*1で、セガーラによる告発の件に触れたという。WSJ、ブルームバーグ(抄訳)、ビジネスウィークが報じている。 以下はWSJ記事より。 The New York Fed on Friday put out a statement…

それでも量的緩和は間違っていた

2010年11月15日付けのバーナンキ宛ての公開書簡(邦訳1、邦訳2)から4年が経ち、米経済が回復している現況――企業の債務は低下する一方で利益は最高益を記録し、失業率は書簡当時の9.8%から6.1%に低下*1、S&Pは2009年3月9日時点からほぼ3倍になった――を受けて…

インフラ支出のビッグ・プッシュは是か非か?

IMFの研究者が先進国での公共投資によるインフラ整備を訴えたのに対し、マンキューが疑問を呈した。さらにそのマンキューにEconospeakのピーター・ドーマンが疑問を呈している。 Abdul Abiad, David Furceri, and Petia Topalova (IMF Survey) The study, wh…

ラムゼイの税理論

29日、昨日に続いて、スティグリッツが9月にアップしたNBER論文を紹介する。以下は「In Praise of Frank Ramsey's Contribution to the Theory of Taxation」と題されたNBER論文の要旨。 Frank Ramsey’s classic paper "A contribution to the theory of tax…