2009-01-01から1年間の記事一覧 - himaginary’s diary

2009-01-01から1年間の記事一覧

貿易の自由化と経済・続き

昨日のエントリでは、貿易自由化の経済への影響は中立というクルーグマン主張への批判の一つとして、サムナーの12/11エントリに触れた。 そのエントリでサムナーは、実際に貿易の自由度の変化が経済に影響を与えた例として、スムート・ホーリー法を取り上げ…

貿易の自由化と経済

クルーグマンが12/10ブログエントリで以下のような文章を書いた。 There are a lot of good things you can say about international trade. But it does not, repeat not, do anything to alleviate a shortage of overall demand. Yes, if you liberalize …

実質為替レートの意味

昨日紹介したクルーグマンのサミュエルソンの追悼エッセイで、「国際貿易の分野で仕事をしている人の多くは、議論が為替相場と国際収支に及ぶと、筋道の通らないことを言い始める(Most people who work in international trade tend to lose the thread whe…

サミュエルソンの8つの功績

クルーグマンは12/15ブログエントリで、サミュエルソンの経済学への主要な功績として8つの業績を挙げた。以下に同エントリのその8つの業績の紹介部分を訳してみる。 顕示選好理論 1930年代、経済学者は、消費者の選択に作用する要因は限界効用逓減にとどまら…

プログラマの生産性とは?

タイラー・コーエンがMarginal Revolutionの12/23エントリで引用している文章が興味深い。以下がその引用部。 Software output cannot be measured as easily as dollars or bricks. The best programmers do not write 10x as many lines of code and they …

サイモン・ジョンソンとディーン・ベーカーのバーナンキ批判

ここに来て、大物エコノミスト2人が相次いでバーナンキ再任反対論をぶち上げた。 今回の金融危機において最も言論の影響力があった知識人とされる*1サイモン・ジョンソンは、The Baseline Scenarioの12/24エントリの最後で、以下のように書いている*2。 Give…

Rowe「通貨供給の増加で流動性の罠は打ち破れる」

少し前に日本のブログ界で話題になったケインズの一般理論の19章を、WCIブログでNick Roweが以下のように要約している。 First, I'm going to bring J.M. Keynes in on my side. This is my interpretation of what he is saying in chapter 19 of the Gener…

コント:ブライアン君とブラッド君

以下のやり取りが少し面白かったので紹介。 Econlogの12/19エントリ。 Who Said It? Bryan Caplan "Critics of Paul Krugman call him acerbic and boastful, unfair on the attack and unwilling to make concessions on the defense, certain that he is c…

Thoma「リフレよりは財政政策を」

20日のエントリでバーナンキへの批判を紹介したが、Mark Thomaがその批判派を3種類に分類している(moneywatchの12/21コラム)。 ロン・ポールなどのリバタリアン。彼らはできればFRBなど廃止してしまいたいと思っている*1。 WSJ編集局などの金融業界(cf. …

大平穏期の原因は?

Economist's Viewの12/17エントリで、Mark Thomaが大平穏期(The Great Moderation)について論じている。 彼はまず、Macroeconomic Advisers, LLCのためにJames Morleyワシントン大学准教授が書いたレポートから以下の図を引用し、経済成長率の変動が、1984…

ブロダ=ワインシュタイン論文とその後の財政推移

少し前に、ブロダ=ワインシュタイン論文「Happy News from the Dismal Science: Reassessing the Japanese Fiscal Policy and Sustainability(Christian Broda, David E. Weinstein)」というものが話題になった。日本語に訳されたものが「ポスト平成不況…

「あなたはモラルハザードの定義そのものだ」

‘You Are the Definition of a Moral Hazard’――何だか「あなたは疑惑の総合商社だ」という発言を連想させるが、バーナンキに対してジム・バニング上院議員が、12/3の米上院銀行委員会の承認公聴会の席上でそう言い放ったという。さらにバーナンキの再任を阻…

排出量取引と炭素税に関する基礎的経済学

Econospeakでピーター・ドーマン(Peter Dorman)が表題(「The Basic Economics of Carbon Permits versus Carbon Taxes」)のScribdを公開した*1ので、以下に拙訳で紹介する。 多分幾つかの簡単な図が、排出量取引と炭素税を巡る議論を覆っている混乱の霧…

現在の米財政赤字の大部分はブッシュ時代の遺産

というシンクタンクCenter on Budget and Policy Priorities(CBPP)によるレポートをEconomist's Viewが紹介している。下記がそのグラフ*1。 なお、クルーグマンは8/27ブログエントリで、OMB予測を元に*2、ブッシュ減税とイラク戦争の現時点の公的債務に対…

コント:ポール君とグレッグ君(2009年第16弾)

日本では民主党の公約に代表されるように最低賃金を引き上げろという声があり、それに反対する声もあるが*1、米国では保守派が、むしろ最低賃金を引き下げて失業率を下げろ、と主張しているらしい。そして、当然のごとくクルーグマンを筆頭とするリベラル派…

2日で外れた経済予測

マンキューが12/9ブログエントリで、マシュー・カーン (Matthew Kahn)カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校(UCLA)環境研究所、経済学部、公共政策学部教授の以下の予測を紹介した。 Professor Mankiw should consider incorporating the following income…

サミュエルソンと現在の経済危機・続き

昨日の続き。 A question about the exact science stuff before going back to policy questions. One of the things for which you are most famous is for writing the Foundations of Economic Analysis, which as I understand it attempted to bring a…

サミュエルソンと現在の経済危機

サミュエルソンが亡くなった。半年ほど前に彼のThe Atlanticでのインタビューを紹介したが、そのインタビューで今回の経済危機について触れた部分を改めて紹介したい。 I have a couple of questions about the current debate. Do you think large fiscal s…

銀行を分割する必要は無い?

これまで拙ブログで何度か銀行の規模を縮小すべき、という意見を紹介してきた(ここ、ここ、ここ、ここ)。しかし、ここに来て、それに反対する声もちらほら出始めてきた。 12/3付けのボストングローブ論説で、ハーバード大教授のEd Glaeserが以下のようなこ…

日本の鏡像としてのカナダ・再説

以前、WCIブログのStephen Gordonのエントリを取り上げ、そこでのカナダ経済の分析を日本の鏡像として捉えたことがあったが(ここ、ここ)、Gordonの12/9エントリのカナダ経済に関する分析が、また日本と取らし合わせて考えると興味深いものになっている。 …

エンドレス・サマーズ

という記事が1ヶ月ほど前にヴァニティ・フェアに掲載された(マンキューブログ経由)。内容的には以前紹介したニューヨーカーのサマーズ紹介記事と似ているが、よりサマーズの私生活や人間性に焦点を当てた記事となっている。サマーズの人となりを知るにはニ…

クライメートゲート事件と筑波大事件の奇妙な符合

最近世間を騒がせているクライメートゲート事件に関する記事を読んでいて、拙ブログで少し前に取り上げた筑波大プラズマ研究改竄事件となんか似ているな、と思ったので、以下に気が付いた共通点を思いつくままに挙げてみる。なお、あくまでも素人による感想…

二匹の鼠

最近、経済が流動性の罠に落ちた後の各国の状況について、この映画の以下の台詞が極めて暗示的に思えてならない。 Two little mice fell in a bucket of cream. The first mouse quickly gave up and drowned. The second mouse, wouldn't quit. He struggle…

「日本が国債のマネタイズをしないのは狂気の沙汰」

昨日のエントリでギャグノンの主張を取り上げたブログエントリを幾つか紹介したが、その中に「Economists for Firing Larry Summers」というものがあった。これは名前の通りサマーズのオバマ政権からの解雇を訴えるブログで、複数の経済学者による共同ブログ…

ギャグノン「日銀は100〜200兆円の長期債を購入すべし」

ピーターソン国際経済研究所のエコノミストでFRBの勤務経験もあるジョセフ・ギャグノン(Joseph Gagnon)という人が提言したリフレ政策が、英米のブログ界でちょっとした話題になっている(Economist's View、デビッド・ベックワース、Free Exchange、Bill W…

マイクロファイナンスの効果は実は大したことはない?

先日、マイクロファイナンスブームの原点ともいうべき番組の放送を紹介したが、最近ではそうしたブームに対する揺り戻しのようなことも起きているらしい。1年前に商業化の波に揺れるマイクロファイナンスの現状を紹介したティム・ハーフォードが、ボストング…

バーナンキは再任されるべきか?

バーナンキFRB議長を再任するかどうかの上院での審議がたけなわとなっているが、NYタイムズの経済ブログEconomixで、エコノミスト等の賛否の声がデビッド・レオンハートによりまとめられている。 ニュースで報じられているように、バーモント出身で無所属の…

財政再建のための10の方法

ジェフ・フランケルというハーバード・ケネディスクールの教授が、ナショナル・ジャーナルによる財政再建に関する以下の11/30付けの問いかけに対し、10項目のリストを挙げている(Economist's View経由)。 President Obama and his team said recently that…

プロテスタンティズムは経済発展に貢献しなかった?

タイラー・コーエンがDavide Cantoniというハーバード大の研究者の面白い論文を紹介している。以下はその論文の抄録の拙訳。 マックス・ウェーバーの「プロ倫」を筆頭とした多くの理論が、プロテスタンティズムは経済発展に有利、という仮説を唱えてきた。神…

自己充足的予言とレイ・ブラッドベリ

経済学や社会学で自己充足的予言というのは有名な概念である。本ブログでも最近ここやここで取り上げた。Wikipediaによると、そうした予言は古来から存在していたが、その用語自体を発明して社会学の概念として定着させたのは、ノーベル経済学賞を受賞したロ…