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Objective-Cプログラミング言語の作成者が76歳で死去
Objective-C というプログラミング言語を開発した1人である Brad Cox 氏が、2021年の1月に76歳で亡くなっていた(
SCNow)。
IT業界にいる人なら、Objective-C という名前を聞いて、すぐにそれが何か分かるだろう。しかし、そうでない人たちにとっては、プログラミング言語の種類と、その特徴や背景を思い浮かべるのは難しいはずだ。
Objective-C は、初期の iPhone 向けアプリケーションの開発に利用されていたプログラミング言語だ。ある時期まで、iPhone のアプリケーションは、ほぼ全て Objective-C というプログラミング言語によって開発されていた。
Apple という会社と、切っても切り離せないプログラミング言語。いや、スティーブ・ジョブズと切っても切り離せないプログラミング言語と言った方が適切だ。
Brad Cox 氏の死を切っ掛けに、Objective-C というプログラミング言語の、数奇な運命をたどっていこう。
プログラムを書くためのプログラミング言語は、生物進化の系統樹のように、進化の系譜を持っていることが多い。
世の中には、いくつものプログラミング言語がある。それらで解決できない問題を解決したり、より生産性を高めるために、新しいプログラミング言語は開発されて世に解き放たれる。その際、先行のプログラミング言語を土台にすることが多い。
Objective-C というプログラミング言語の開発は、1983年に Brad Cox 氏と Tom Love 氏が設立した Stepstone 社によって始まった(
e-Words)。Objective-C というプログラミング言語は、C言語というプログラミング言語に、オブジェクト指向と呼ばれる開発手法を導入したものである。
このC言語にオブジェクト指向を導入するというアプローチは、実はもうひとつ存在する。C++(シープラスプラス)と呼ばれるプログラミング言語だ。こちらの言語も、1983年に誕生した(
e-Words)。
時代の要請により、同時期に似たような目的のプログラミング言語が、C言語から派生して誕生したというわけだ。その後、C++言語は、メジャーなプログラミング言語として、世を席巻する。そしてC++は、C言語の正統後継者としての地位を確立する。
対して Objective-C は、そうした地位を得ることはなかった。Objective-C は、C言語の派生としては、いささか奇妙な言語構造を持っていた。Objective-C は、C言語とはまったく異なるオブジェクト指向のプログラミング言語 Smalltalk と、C言語を合体させたものだった。
C言語的な部分は、C言語の仕様をそのまま、オブジェクト指向部分は Smalltalk を使う。Objective-C は、そうした奇妙な姿を持つプログラミング言語だった(
Objective-C入門)。