カラヤン/ベルリンフィルの86番 - ハイドン–交響曲

作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のアルバム収集とレビュー。音楽、旅、温泉、お酒など気ままに綴ります。

カラヤン/ベルリンフィルの86番

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今日は予告通りカラヤンのパリセットから。

KarajanPariset.jpg
amazon(別装丁盤)

ヘルベルト・フォン・カラヤン(Herbert von Karajan)指揮のベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏でハイドンの交響曲82番から87番、所謂「パリ・セット」を収めたアルバム。収録は1980年6月から9月にかけて、本拠地、ベルリン・フィルハーモニーでのセッション録音。レーベルはもちろん天下のDGです。

手元のアルバムは上のジャケット写真どおりのオリジナルのCD。

Karajan.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

こちらは比較的最近リリースされたパリセットの6曲とザロモンセットの12曲を合わせた7枚組。今手に入れるならこちらでしょう。

カラヤンのハイドンの交響曲は、当ブログの初期の記事でちょっと触れた事があります。

2010/02/10 : ハイドン–交響曲 : カラヤンのハイドン再考

カラヤンは嫌いではなく、ハイドンでも天地創造のヴンダーリヒとのセッション録音では、その類いまれなコントロールにより、素晴らしい盛り上がりを聴かせ、ベスト盤の一枚であることは多くの人も認めるところでしょう。また、カラヤンの演奏は若い時のものの方が飛ぶ鳥を落とす勢いすら感じさせる覇気が前面に出ていて、お薦めできるものが多いですね。ハイドンではウィーンフィルとのロンドン、太鼓連打などこの例でしょう。

ところが、このベルリンフィルとのパリセット、ザロモンセットは、カラヤン晩年のレガートを効かせたカラヤンスタイルの演奏がちょっと鼻につくのと、デッドな(デッドすぎる?)録音が災いして、ハイドンの楽しさよりも、力づくでの演奏との印象が強いアルバム。確かに良く聴くと磨き抜かれたベルリンフィルの重量級の演奏は素晴らしいものの、それがハイドンの交響曲のいい演奏かと問われると、手放しでそうだとは言い難いというところ。

ま、こんな風に思ってきた訳です。昨日なぜか弾みで、このパリセットのアルバムを手に取り、パリセットでは最も好きな86番の演奏をかなり久しぶりに聴いてみた次第です。この印象は変わるでしょうか?

Hob.I:86 / Symphony No.86 [D] (1786)
以前聴いた時とはオーディオセットのセッティングも実は変わっていて、以前ほどデッドな録音が気にはならなくなっています。デッドには変わりありませんが、不自然とまでは言えないでしょう。艶やかな序奏は流石ベルリンフィル。主題に入ってからの迫力もベルリンフィルならでは。ただ、直球過ぎてフレーズに遊びがなく、少々堅苦しさを感じてしまうところもあります。弦楽器の分厚い響き、特に低音楽器の響きはカラヤン時代のベルリンフィルのトレードマークでしたでしょう。響きは厚いながらも研ぎすまされて室内楽的な純粋さも併せ持っています。
機知を語るというよりはストイックに攻めるハイドン。正攻法、正面突破、全力投球の真面目な演奏です。全盛期の余裕を感じさせる覇気溢れるカラヤンの姿は見られず、一心不乱に自身の理想とする音響美の宮殿を構築しようとする建築家の視点のようです。
2楽章はカラヤンならではの楽章を立体的に聴かせようとする、入りから終わりまでの起伏を、俯瞰したような客観的な語り口で描いていきます。フレーズをじっくり描いていく事で重厚感もあり、1楽章同様室内楽的な透明感もある演奏。テンポが揺るぎだにしないのが流石カラヤンのタクト。
メヌエットはこの曲の中でももっとも力が抜けた楽章。力感溢れていて、力こぶもあるのですが、聴いていて一番楽天的に聴こえる楽章。これで良く響くホールでの録音だったら、だいぶ違って聴こえたに違いありません。やはりデッドな録音が弱点になっているような気がします。オケの厚みがデッドな響きのせいで単調に響いてしまいます。
フィナーレはベルリンフィルの威力炸裂。テンポの安定感は流石で各楽器がうなりをあげて鬩ぎあっているのでしょうが、響きはデッドなので、真空での演奏のように聴こえ、迫力ある響きは脳内で補います。おそらくワンポイント的なマイクはなく、各楽器をオンマイクで拾ったマルチチャネル録音のように聴こえます。定位感はかなり不鮮明なのに響きはクッキリしたものです。各楽器の位置関係も判然としません。最後分厚いオーケストラの響きと想像される音響によるクライマックス。

カラヤンの演奏スタイルは一貫したカラヤンスタイルですが、これだけデッドな録音で聴くと、迫力がちょっとくどく感じたり、単調な響きになってしまいます。冒頭でデッドな録音が以前より気にならなくなったと言っておきながら、やはり最後は録音の問題が印象に大きく影響している感は否めません。おそらくこの演奏をサントリーホールで演奏して生で聴いたらさぞかし素晴らしかったのではなかったかと想像しています。物理特性という意味ではなく、響きとしての録音はアルバムの印象に大きな影響があるのは明らかなところ。評価は[+++]としておきます。

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2 Comments

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michael

No title

こんばんは
カラヤンの86番ですか、良くもわるくも興味わきますね;ちょうどパリ・セットがオークションにでています;
DGではG.ヘルマンスが録音の専属ですが、来日公演のサントリーホールでNHKのスタッフが録音したCDは程よくクリアーでしっとり感もあり、この録音ならハイドンもいけそうな感じです^^

Daisy

Re: No title

michaelさん、おはようございます。
いつもコメントありがとうございます。晩年のカラヤンの録音はブルックナーの7番など枯淡の境地を聴かせるものもありますが、このハイドンのようにカチカチのものも少なくありませんね。こうゆう音が晩年のカラヤン自身の好み、もしくはカラヤンのオーディオセットと相性が良かったからなのではないかと想像しています。出来れば定位感の良い普通の録音で聴いてみたいものです。

  • 2012/06/19 (Tue) 07:17
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