トーマス・ファイ/ハイデルベルグ交響楽団のマリア・テレジア、56番 - ハイドン–交響曲

作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のアルバム収集とレビュー。音楽、旅、温泉、お酒など気ままに綴ります。

トーマス・ファイ/ハイデルベルグ交響楽団のマリア・テレジア、56番

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最近未入手のアルバムをHMV ONLINEで注文して届いたもの。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

おなじみトーマス・ファイ(Thomas Fey)指揮のハイデルベク交響楽団(Heidelberger Sinfoniker)の演奏でハイドンの交響曲48番「マリア・テレジア」、56番の2曲を収めたアルバム。収録は2009年1月20日から22日、ドイツ、ハイデルベルク西方のバート・デュルクハイムのナチュラル・ホルン・アカデミーでのセッション録音。レーベルはhänssler CLASSIC。

トーマス・ファイの交響曲シリーズは気づく度に入手しています。シュトルム・ウント・ドラング期の傑作「マリア・テレジア」が含まれているので気になってはいましたが、このアルバムはご縁がなく、いままで手元になかったもの。先日HMV ONLINEのバーゲンの際に未入手アルバムを何枚かまとめて注文していたもの。

ファイの演奏は今まで4回取りあげています。

2012/05/03 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイ/シュリアバッハ室内管の「時の移ろい」「告別」
2011/07/06 : ハイドン–交響曲 : 【新着】トーマス・ファイの「帝国」、54番
2010/12/26 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】トーマス・ファイのホルン協奏曲、ホルン信号
2010/08/01 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイの69番、86番、87番

最初はファイの前衛性が気になり素直に評価できなかったのですが、最近は痛快を極めるファイの術中にハマり、非常に気になる存在に。ハイドンの楽譜から表現の限りを尽くしてハイドンの交響曲の新たな価値を創造していこうと言う姿勢に感服しています。今日取り上げる「マリア・テレジア」は短調の名曲揃いのこの時期の曲のなかで晴朗かつ祝祭感に溢れる曲。ファイの演奏スタイルがぴしゃりとハマる曲との期待されます。

Hob.I:48 / Symphony No.48 "Maria Theresia" 「マリア・テレジア」 [C] (before 1769?)
いきなり炸裂するオーケストラ。鋭角的なアタックが心地よい刺激を与え、意外に滑らかに進むフレーズは推進力に溢れています。音が四方八方に飛び散る快感を味わえる名演奏。テンションの高いヴァイオリンはボウイングがキレまくって、演奏者も吹っ切れているよう。ファイのコントロールもここまで来ると、有無をも言わせぬ説得力。ティンパニの桴捌き素晴らしく、アーノンクールを超える知的刺激。途中テンポをふと落としたりと変化の付け方も万全。吹っ切れた完璧な演奏。
続くアダージョは、シュトルム・ウント・ドラング期の憂いを帯びた短調のメロディーラインをゆったりというよりも、じっくり一歩一歩噛み締めるように緊張感を保ちながらコントロール。ありきたりな演奏に陥らないところがファイの矜持でしょう。しっかりとした足取りとフレーズごとの表情付が独特の音楽。
メヌエットは、一律なテンポの演奏で、これまでで最も力感にあふれ、ファイならではの強烈なアクセントによって生き物のような生命感を帯びてきます。強音の迫力は抜群。痛快とはこの事でしょう。祝祭感溢れる演奏。時折聴かせる修飾音の変化が新鮮。ティンパニもかなり変化を聴かせて楽しんでいます。
フィナーレは、オケをフルに鳴らし、もはや抑えが利かないほどの充実ぶり。ホール中に響きわたるハイドンの名旋律。この説得力は流石。はち切れんばかりのオケの爆発。ティンパニ乱れ打ち。金管の号砲がホール中に轟きます。この「マリア・テレジア」の最高の演奏の一つでしょう。

Hob.I:56 / Symphony No.56 [C] (1774)
基本的に同一の正確の演奏。「マリア・テレジア」より数年後の作品。曲想は少し地味に変わるものの、ファイはフルコースの料理よろしく、まずは鮮烈なオーケストラの魅力でリスナーを圧倒。不思議と飽きる事がないのは、フレーズフレーズの説得力と、目的を見失わない指揮者の見識でしょうか。お祭り騒ぎとはこの演奏のことを言うのでしょう。次々と繰り出される響きの塊が耳を通って脳に達します。ハイドンの交響曲に潜むエネルギーをここまであからさまにした演奏はないのではないかと思わせる、まさに火の玉のような演奏。スピーカーからの音圧に吹き飛ばされそう。
この曲でも1楽章の爆発を鎮めるようなアダージョの絶妙の語り口が、曲の深みを増しています。木管楽器は普通に吹けばもちろん美しい響きの楽器であった事に気づかされます。それだけ1楽章の爆発は凄まじいものがありました。
メヌエットは非常に変わった曲。走り抜ける音階と、荒れ狂うティンパニ、そしてリズムを取り戻すオーケストラ。このような曲を良く思いつくものと感心しきり。この交響曲はハイドンの創意の塊のような曲。
フィナーレは変わった曲ですがやはり荒れ狂う嵐のような演奏。もう、ファイの勢いをだれも止めることができないでしょう。

ハイドンの交響曲に潜むエネルギーをこれほどまでに露骨かつ刺激的に表した演奏はありません。とくにこのアルバムで聴かれるファイのコントロールはキレまくり、嵐のような演奏。痛快至極。この演奏を聴かずしてハイドンを語るなと言われているような演奏。ノックアウトです。評価はもちろん両曲とも[+++++]としました。

この全集の進行、今後がますます楽しみになってきました。

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