ティボー/コルトー/カザルスによるジプシー・ロンド
今日は85年前の録音を。
(NAXOS盤)HMV ONLINE/ amazon / TOWER RECORDS
ジャック・ティボー(Jacques Thibaud)のヴァイオリン、アルフレッド・コルトー(Alfred Cortot)ののピアノの演奏を集めたアルバム。ハイドンはパブロ・カザルス(Pablo Casals)のチェロを加えたピアノ三重奏曲(Hob.XV:25)が2曲目に収められています。他にバッハのブランデンブルク協奏曲5番とベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」が収録されています。ハイドンの収録は1927年6月20日、なんと85年前の録音。レーベルは古めのヒストリカル録音復刻を多く手がけているBiddulph RECORDINGS。ライナーノーツにはハイドンの演奏はHMV DA 895/6という原盤から起こされたものとのこと。
今回レビューに取りあげるにあたって調べたところ、Biddulph RECORDINGSのアルバムは流通していないようです。そこでアルバム写真下のリンクはハイドンはおそらく同音源であろうNAXOS盤のものを張っています。
ジャック・ティボーは私の年代だと、実はあまり親しみはありませんが、クライスラーと並び称される名ヴァイオリニスト。1880年フランスのボルドーに生まれ、1953年飛行機事故で亡くなっています。1905年にはこの演奏でトリオを組んだ、コルトー、カザルスとカザルス三重奏団を結成し、翌1906年からコンサートを開くようになったとの事。
アルフレッド・コルトーも同様、ご年配の方にはなじみがあるでしょう。1877年スイスに生まれ、1962年に亡くなった大ピアニスト。ショパンの演奏等で知られた人でしょう。先に触れたカザルス三重奏団は1920年代後半まで演奏を続けたが、ティボーとコルトーの仲が疎遠となり、解散したとのこと。ということでこのアルバムの演奏はこのトリオの絶頂期の録音でしょう。
カザルスは紹介の必要はないでしょう。以前カザルスが指揮したアルバムを取りあげていますのでそちらをご参照ください。
2011/01/12 : ハイドン–交響曲 : パブロ・カザルス指揮の驚愕、95番、告別-2
2011/01/11 : ハイドン–交響曲 : パブロ・カザルス指揮の驚愕、95番、告別
CDをかけると、SPらしいスクラッチノイズが郷愁を誘います。
Hob.XV:25 / Piano Trio (Nr.39/op.73-2) [G] (1795)
派手に針音がしますが、ヴァイオリン、チェロ、ピアノは鮮明に録られており、定位感も悪くありません。リアリティは驚くほど。良質なSP盤から奏でられる素晴らしい音楽。以前取りあげた古いクァルテットがポルタメントを多用した演奏だったのに対し、ティボーのヴァイオリンは直裁な響きながら味わい深いフレージングでじつに雰囲気の良いもの。歴史の流れを感じる演奏。コルトーは軽いタッチで雰囲気豊かな伴奏。カザルスのチェロも2人の演奏によく合わせながらも、存在感のある弓さばき。ティボーのヴァイオリンは実に美しい響きを聴かせます。
2楽章のボコ・アダージョは針音を伴奏に時間の流れが止まりかけるような至福の一時。この曲の美しいメロディーをティボー、コルトー、カザルスがかわるがわる受け継いで奏でていきます。まるで、月夜の静かな海に浮かぶボートで波の揺れを楽しむがごとき風情。ティボーのヴァイオリンはポルタメントっぽい節回しが聴かれます。この豊穣な音楽は何でしょうか。
有名なジプシー・ロンドはちょっとビリつきを伴うものの、それほど聴きづらくありません。SP録音の優秀さを重知らされるダイナミックな展開。これより後の時代の録音でもこれだけのリアリティはなかなか出せないものです。かなりはっきりとしたアクセントをつけて有名な旋律を重ねていきます。終盤は音量をかなり抑えて意欲的な表現。
ティボー、コルトー、カザルスという神様のような3人によるハイドンの演奏。今の時代の演奏とははっきり異なるものの、この豊かな音楽は85年の歳月を経てもなお、人の心に届きます。針音を伴って聴こえる素晴らしい音楽。連綿とつづく演奏の歴史のパースペクティヴ上の金字塔と言っていいものだと思います。続く「クロイツェル・ソナタ」もさらに鮮明な録音によって眼前に3人が降臨したような素晴らしい録音。いやはや恐れ入りました。評価は[+++++]とします。
このアルバム、手に入れたのはおそらく20年くらい前で長らくホコリをかぶっていました。85年経っても聴く価値のある素晴らしい録音です。ヒストリカルなものの好きな方はもちろん、多くの方に聴いてほしい素晴らしい演奏。リンクをつけたNAXOS盤は未聴のため、この素晴らしいリアリティがNAXOS盤でも聴けるかどうかはわかりません。
(NAXOS盤)HMV ONLINE/ amazon / TOWER RECORDS
ジャック・ティボー(Jacques Thibaud)のヴァイオリン、アルフレッド・コルトー(Alfred Cortot)ののピアノの演奏を集めたアルバム。ハイドンはパブロ・カザルス(Pablo Casals)のチェロを加えたピアノ三重奏曲(Hob.XV:25)が2曲目に収められています。他にバッハのブランデンブルク協奏曲5番とベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」が収録されています。ハイドンの収録は1927年6月20日、なんと85年前の録音。レーベルは古めのヒストリカル録音復刻を多く手がけているBiddulph RECORDINGS。ライナーノーツにはハイドンの演奏はHMV DA 895/6という原盤から起こされたものとのこと。
今回レビューに取りあげるにあたって調べたところ、Biddulph RECORDINGSのアルバムは流通していないようです。そこでアルバム写真下のリンクはハイドンはおそらく同音源であろうNAXOS盤のものを張っています。
ジャック・ティボーは私の年代だと、実はあまり親しみはありませんが、クライスラーと並び称される名ヴァイオリニスト。1880年フランスのボルドーに生まれ、1953年飛行機事故で亡くなっています。1905年にはこの演奏でトリオを組んだ、コルトー、カザルスとカザルス三重奏団を結成し、翌1906年からコンサートを開くようになったとの事。
アルフレッド・コルトーも同様、ご年配の方にはなじみがあるでしょう。1877年スイスに生まれ、1962年に亡くなった大ピアニスト。ショパンの演奏等で知られた人でしょう。先に触れたカザルス三重奏団は1920年代後半まで演奏を続けたが、ティボーとコルトーの仲が疎遠となり、解散したとのこと。ということでこのアルバムの演奏はこのトリオの絶頂期の録音でしょう。
カザルスは紹介の必要はないでしょう。以前カザルスが指揮したアルバムを取りあげていますのでそちらをご参照ください。
2011/01/12 : ハイドン–交響曲 : パブロ・カザルス指揮の驚愕、95番、告別-2
2011/01/11 : ハイドン–交響曲 : パブロ・カザルス指揮の驚愕、95番、告別
CDをかけると、SPらしいスクラッチノイズが郷愁を誘います。
Hob.XV:25 / Piano Trio (Nr.39/op.73-2) [G] (1795)
派手に針音がしますが、ヴァイオリン、チェロ、ピアノは鮮明に録られており、定位感も悪くありません。リアリティは驚くほど。良質なSP盤から奏でられる素晴らしい音楽。以前取りあげた古いクァルテットがポルタメントを多用した演奏だったのに対し、ティボーのヴァイオリンは直裁な響きながら味わい深いフレージングでじつに雰囲気の良いもの。歴史の流れを感じる演奏。コルトーは軽いタッチで雰囲気豊かな伴奏。カザルスのチェロも2人の演奏によく合わせながらも、存在感のある弓さばき。ティボーのヴァイオリンは実に美しい響きを聴かせます。
2楽章のボコ・アダージョは針音を伴奏に時間の流れが止まりかけるような至福の一時。この曲の美しいメロディーをティボー、コルトー、カザルスがかわるがわる受け継いで奏でていきます。まるで、月夜の静かな海に浮かぶボートで波の揺れを楽しむがごとき風情。ティボーのヴァイオリンはポルタメントっぽい節回しが聴かれます。この豊穣な音楽は何でしょうか。
有名なジプシー・ロンドはちょっとビリつきを伴うものの、それほど聴きづらくありません。SP録音の優秀さを重知らされるダイナミックな展開。これより後の時代の録音でもこれだけのリアリティはなかなか出せないものです。かなりはっきりとしたアクセントをつけて有名な旋律を重ねていきます。終盤は音量をかなり抑えて意欲的な表現。
ティボー、コルトー、カザルスという神様のような3人によるハイドンの演奏。今の時代の演奏とははっきり異なるものの、この豊かな音楽は85年の歳月を経てもなお、人の心に届きます。針音を伴って聴こえる素晴らしい音楽。連綿とつづく演奏の歴史のパースペクティヴ上の金字塔と言っていいものだと思います。続く「クロイツェル・ソナタ」もさらに鮮明な録音によって眼前に3人が降臨したような素晴らしい録音。いやはや恐れ入りました。評価は[+++++]とします。
このアルバム、手に入れたのはおそらく20年くらい前で長らくホコリをかぶっていました。85年経っても聴く価値のある素晴らしい録音です。ヒストリカルなものの好きな方はもちろん、多くの方に聴いてほしい素晴らしい演奏。リンクをつけたNAXOS盤は未聴のため、この素晴らしいリアリティがNAXOS盤でも聴けるかどうかはわかりません。
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