【新着】豪華絵巻! メータ/ミュンヘンフィルの天地創造(ハイドン)
有無をも言わせぬ豪華絢爛絵巻。メータの至芸を堪能。
TOWER RECORDS / amazon
ズービン・メータ(Zubin Mehta)指揮のミュンヘン・フィルハーモニー合唱団(Philharmonisher Chor München)、ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団(Münchner Philharmoniker)の演奏で「天地創造」。収録は2019年6月22日から24日、ミュンヘンのガスタイクホールでのライブ。ミュンヘンフィルの自主制作盤。歌手は以下のとおり。
ガブリエル/エヴァ:モイカ・エルドマン(Mojca Erdmann)
ウリエル:ディミトリ・コルチャック(Dmitry Korchak)
ラファエル/アダム:ルネ・パーペ(René Pape)
しばらく前にこのアルバムがリリースされると知り注文を入れておいたもの。昔の録音かと思いきや、2019年のライブとのことで到着を心待ちにしておりました!
メータは私がクラシックを聴き始めた学生時代から何枚ものアルバムを通して聴いてきた人。当時Londonレーベルから次々と新譜がリリースされ、春の祭典、惑星、シェエラザードなどのアルバムに針を落としてワクワクしながら聴いたものです。その後しばらくメータの演奏からは遠ざかっていたものの、2018年バイエルン放送響の来日公演で体調不良のヤンソンスに代わって、病み上がりだったメータが来日して感動的なコンサートを聴くことができました。メータのタクトが繰り出すこってり重量級の演奏の迫力と面白さを再認識した次第。
2018/11/27 : コンサートレポート : ズービン・メータ渾身の春の祭典(ミューザ川崎)
そのメータが2019年にミュンヘンフィルを振った天地創造ということで、単に天地創造のアルバムの収集(収集済みの天地創造のアルバムは現在116種)ということのみならず、大いに期待して手に入れたという次第。ちなみにメータにはイスラエルフィルを振った天地創造の1986年のライブがリリースされており、こちらはレビュー済みです。
2012/09/15 : ハイドン–オラトリオ : 【新着】メータ/イスラエル・フィルの天地創造1986年ライヴ
このイスラエルフィルとのライブはバイエルン放送響を振った最近の演奏とはだいぶスタイルの異なる演奏でした。
Hob.XXI:2 "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796–1798)
アルバム冒頭の混沌の場面からエネルギーが迸りまくります! ライブながらセッション録音並の鮮明さ。予想通り磨き込まれたバランスよく図太い響きにいきなり圧倒されます。ノンヴィブラートやHIPなどどこ吹く風とオケを重厚に響かせます。ショルティ盤でも存在感を示したルネ・パーペのラファエルの第一声は流石の貫禄を感じさせるもの。そしてミュンヘンフィル合唱団のコーラスは透明感抜群。ウリエルのコルチャクは細めながらクッキリとした発声が特徴。ガブリエル役のエルドマンは張りのある声で古典のハイドンにしてはオペラ風の歌唱。録音は歌手にスポットライトを当てるのではなくオケとの一体感重視。
何より素晴らしいのがオケのとろけるようなハーモニー。メータがかなり緻密にコントロールしていることがわかります。第1部の終盤からクライマックスへの道程は次々と大波が押し寄せるように重厚に攻め入ります。迫力ばかりでなく美しいメロディーがクッキリと浮かび上がる至芸。次々と流れる曲はまるで絵巻物を見ているよう。メータならではの豪華絢爛絵巻といった風情。まさに横綱相撲。
第2部は美しいアリアの連続ですが、アリアばかりではなくメータの極上の伴奏も聴きどころ。というか歌手も悪くないのですが、オケの伴奏だけでも夢見心地。現代では様々な演奏スタイルがせめぎ合っていますが、そんなことはさておき、メータ流に磨き上げたオケの魅力の持つ説得力は揺るぎないものと感じさせます。
そして第3部も同様。アダムとエヴァ2つのデュエットはもちろん極上の癒しを放散。そして最後のクライマックスもしなやかかつ重厚に攻め、安心して身を任せることができます。まさに3番連続横綱相撲を堪能した気分。
ハイドンの書いた天地創造は古典期で宗教的なオラトリオですが、メータが描こうとしたのはそうした時代背景やテーマとは関係なくこの曲が持つ普遍的な音楽の素晴らしさ、楽しさ、美しさだったのでしょう。一見、伝統的なスタイルによる保守的演奏ではありますが、尖ってもいず、力んでもいず、オーケストラを完璧にコントロールして、この長大な曲を最初から最後まで安心して楽しめる絶品の演奏でまとめあげた手腕こそ、長年の音楽家生活でメータのたどり着いた、誰も到達したことのない世界に違いありません。私はこの演奏、いたく感動いたしました。ハイドンはきっとこのような演奏を望んでいたのだと思います。評価はもちろん[+++++]といたします。
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ズービン・メータ(Zubin Mehta)指揮のミュンヘン・フィルハーモニー合唱団(Philharmonisher Chor München)、ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団(Münchner Philharmoniker)の演奏で「天地創造」。収録は2019年6月22日から24日、ミュンヘンのガスタイクホールでのライブ。ミュンヘンフィルの自主制作盤。歌手は以下のとおり。
ガブリエル/エヴァ:モイカ・エルドマン(Mojca Erdmann)
ウリエル:ディミトリ・コルチャック(Dmitry Korchak)
ラファエル/アダム:ルネ・パーペ(René Pape)
しばらく前にこのアルバムがリリースされると知り注文を入れておいたもの。昔の録音かと思いきや、2019年のライブとのことで到着を心待ちにしておりました!
メータは私がクラシックを聴き始めた学生時代から何枚ものアルバムを通して聴いてきた人。当時Londonレーベルから次々と新譜がリリースされ、春の祭典、惑星、シェエラザードなどのアルバムに針を落としてワクワクしながら聴いたものです。その後しばらくメータの演奏からは遠ざかっていたものの、2018年バイエルン放送響の来日公演で体調不良のヤンソンスに代わって、病み上がりだったメータが来日して感動的なコンサートを聴くことができました。メータのタクトが繰り出すこってり重量級の演奏の迫力と面白さを再認識した次第。
2018/11/27 : コンサートレポート : ズービン・メータ渾身の春の祭典(ミューザ川崎)
そのメータが2019年にミュンヘンフィルを振った天地創造ということで、単に天地創造のアルバムの収集(収集済みの天地創造のアルバムは現在116種)ということのみならず、大いに期待して手に入れたという次第。ちなみにメータにはイスラエルフィルを振った天地創造の1986年のライブがリリースされており、こちらはレビュー済みです。
2012/09/15 : ハイドン–オラトリオ : 【新着】メータ/イスラエル・フィルの天地創造1986年ライヴ
このイスラエルフィルとのライブはバイエルン放送響を振った最近の演奏とはだいぶスタイルの異なる演奏でした。
Hob.XXI:2 "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796–1798)
アルバム冒頭の混沌の場面からエネルギーが迸りまくります! ライブながらセッション録音並の鮮明さ。予想通り磨き込まれたバランスよく図太い響きにいきなり圧倒されます。ノンヴィブラートやHIPなどどこ吹く風とオケを重厚に響かせます。ショルティ盤でも存在感を示したルネ・パーペのラファエルの第一声は流石の貫禄を感じさせるもの。そしてミュンヘンフィル合唱団のコーラスは透明感抜群。ウリエルのコルチャクは細めながらクッキリとした発声が特徴。ガブリエル役のエルドマンは張りのある声で古典のハイドンにしてはオペラ風の歌唱。録音は歌手にスポットライトを当てるのではなくオケとの一体感重視。
何より素晴らしいのがオケのとろけるようなハーモニー。メータがかなり緻密にコントロールしていることがわかります。第1部の終盤からクライマックスへの道程は次々と大波が押し寄せるように重厚に攻め入ります。迫力ばかりでなく美しいメロディーがクッキリと浮かび上がる至芸。次々と流れる曲はまるで絵巻物を見ているよう。メータならではの豪華絢爛絵巻といった風情。まさに横綱相撲。
第2部は美しいアリアの連続ですが、アリアばかりではなくメータの極上の伴奏も聴きどころ。というか歌手も悪くないのですが、オケの伴奏だけでも夢見心地。現代では様々な演奏スタイルがせめぎ合っていますが、そんなことはさておき、メータ流に磨き上げたオケの魅力の持つ説得力は揺るぎないものと感じさせます。
そして第3部も同様。アダムとエヴァ2つのデュエットはもちろん極上の癒しを放散。そして最後のクライマックスもしなやかかつ重厚に攻め、安心して身を任せることができます。まさに3番連続横綱相撲を堪能した気分。
ハイドンの書いた天地創造は古典期で宗教的なオラトリオですが、メータが描こうとしたのはそうした時代背景やテーマとは関係なくこの曲が持つ普遍的な音楽の素晴らしさ、楽しさ、美しさだったのでしょう。一見、伝統的なスタイルによる保守的演奏ではありますが、尖ってもいず、力んでもいず、オーケストラを完璧にコントロールして、この長大な曲を最初から最後まで安心して楽しめる絶品の演奏でまとめあげた手腕こそ、長年の音楽家生活でメータのたどり着いた、誰も到達したことのない世界に違いありません。私はこの演奏、いたく感動いたしました。ハイドンはきっとこのような演奏を望んでいたのだと思います。評価はもちろん[+++++]といたします。
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