ハインツ・ホリガーのオーボエ協奏曲(伝ハイドン)
暑いので、気楽に聴ける曲です。
ハインツ・ホリガー(Heinz Holliger)のオーボエ、デヴィッド・ジンマン(David Zinman)指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(Concertgebouw-Orchester, Amsterdam)の演奏で、以前はハイドンの作とされたオーボエ協奏曲(Hob.VIIg:C1)、ロッシーニのオーボエと小オーケストラのための変奏曲、アントン・ライヒャのコール・アングレと管弦楽のための情景、ドニゼッティのコール・アングレ協奏曲の4曲を収めたLP。収録に関する情報は記されていませんが、レーベル面にはPマークが1979年と印刷されています。レーベルはもちろんPHILIPS。
ハイドンのオーボエ協奏曲はハイドン自身が書いたものではないというのはご承知の通りですが、意外にいい曲なのでそれがわかった上でも録音は結構な数がリリースされています。当ブログでもこれまでに3件レビューしています。
2015/04/28 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】フランソワ・ルルーのリラ協奏曲、オーボエ協奏曲(ハイドン)
2015/03/23 : ハイドン–協奏曲 : パウルス・ファン・デア・メルヴェ/ヴァントのオーボエ協奏曲(伝ハイドン)
2015/03/22 : ハイドン–協奏曲 : エルネスト・ロンボーのオーボエ協奏曲(伝ハイドン)
オーボエ協奏曲についてはロンボーの記事をご覧ください。ちなみに取り上げた3枚のアルバムはいずれも名演奏。特にオーケストラパートの充実した演奏が印象に残るものでした。
そして、オーボエといえばもちろんハインツ・ホリガー、本命登場です。このアルバムを手に入れたのは昨年でしたが、それまでホリガーにこの曲の録音があることを知りませんでした。しかも、ジンマン指揮のコンセルトヘボウ管による全盛期の蘭PHILIPSの録音ということで言うことありません。ホリガーはモーツァルトのオーボエ協奏曲に素晴らしい演奏を残しています。これはかつての愛聴盤です。
2010/10/14 : ハイドン以外のレビュー : ホリガーのモーツァルトのオーボエ協奏曲
Concerto per il oboe [C] (Hob.VIIg.C1)
スカッとホールに広がるオーケストラの響き。PHILIPSによるコンセルトヘボウの見事な響きにいきなりうっとり。LPのコンディションも最高で実体感溢れる響きに酔いしれます。さすがにデヴィッド・ジンマンが振るだけあってオーケストラのコントロールは精緻。ホリガーのソロはあの細めながら伸びやかな音色が期待通り。独特のアーティキュレーションによってホリガーの演奏だとすぐにわかります。モーツァルトの演奏でもそうでしたが、この天真爛漫な伸びやかさはホリガーならでは。ソロの伸びやかさに触発されてかどうかわかりませんが、オケの方も超高鮮度の演奏で応えます。スピーカーの周りがコンセルトヘボウになったような見事な録音に思わずヴォリュームを上げて美音を浴びる快感に身をゆだねます。実に克明なオケの演奏に対してオーボエのソロが可憐に飛び回り、天真爛漫な境地に至ります。音色が変化するわけではないのに実に多彩な表情の変化をを見せます。1楽章のカデンツァはホリガーのしなやかな音階が極限まで透明に昇華する見事なもの。1楽章からノックアウト気味です。
続くアンダンテは、ちょっとハイドンによるメロディーとは異なる趣を帯びているように感じますが、メロディーの美しさはモーツァルト的な洗練も感じる名曲。ハイドンだったらもっと多様な展開を絡ませてくるような気がします。ただモーツァルトで孤高の境地を聴かせたホリガーの手にかかると、この曲の美しさを見事に洗練の極致まで持っていきます。ここでもジンマンはホリガーの自在な表現にしっかりと寄り添って、テンポも呼吸も見事に合わせてきます。
フィナーレの入りも絶妙な軽さ。この入りしかないという見事なもの。そしてオケの反応の鮮やかさは神がかったもの。ホリガーは遊びまわるようにテンポを動かし、そして完全に透明な響きに吸い込まれて行くようにメロディーを伸びやかに描き続け、オケとの対話を楽しむよう。最後はオケがキリリと引き締めて終了。
ロッシーニの曲はオペラの1場面のような曲。ロッシーニ独特の明るいメロディーと翳りの交錯が見事に描かれた曲。ホリガーの妙技とオケの反応の鮮やかさがハイドンの曲以上に活きてきます。ライヒャの曲ははじめて聴きますがなかなか味わいのある美しいメロディーが聴きごたえ充分。オーボエよりも渋い音色のコール・アングレもホリガー流に見事に操ります。そしてドニゼッティの曲もオペラの一場面のようなドラマティックなもの。ホリガーのコール・アングレがちょうど歌手のアリアのような存在。もちろん歌手の表現をもうわまわらんとするホリガーの表現力が聴きどころ。B面の3曲は気軽に楽しめるくつろいだ曲ばかりでした。
このアルバム、流石ハインツ・ホリガーという演奏。やはり他の奏者とははっきりと異なるホリガーならではのオーボエの演奏を聴かせます。軽やかさと伸びやかさの表現は他の奏者とは一線を画するところ。そしてデヴィッド・ジンマンの振るアムステルダムコンセルトヘボウ管の伴奏も完璧。何より全盛期のPHILIPSの空気感溢れる素晴らしい録音がこの演奏に華を添えます。ハイドンの評価はもちろん[+++++]とします。
ハインツ・ホリガー(Heinz Holliger)のオーボエ、デヴィッド・ジンマン(David Zinman)指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(Concertgebouw-Orchester, Amsterdam)の演奏で、以前はハイドンの作とされたオーボエ協奏曲(Hob.VIIg:C1)、ロッシーニのオーボエと小オーケストラのための変奏曲、アントン・ライヒャのコール・アングレと管弦楽のための情景、ドニゼッティのコール・アングレ協奏曲の4曲を収めたLP。収録に関する情報は記されていませんが、レーベル面にはPマークが1979年と印刷されています。レーベルはもちろんPHILIPS。
ハイドンのオーボエ協奏曲はハイドン自身が書いたものではないというのはご承知の通りですが、意外にいい曲なのでそれがわかった上でも録音は結構な数がリリースされています。当ブログでもこれまでに3件レビューしています。
2015/04/28 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】フランソワ・ルルーのリラ協奏曲、オーボエ協奏曲(ハイドン)
2015/03/23 : ハイドン–協奏曲 : パウルス・ファン・デア・メルヴェ/ヴァントのオーボエ協奏曲(伝ハイドン)
2015/03/22 : ハイドン–協奏曲 : エルネスト・ロンボーのオーボエ協奏曲(伝ハイドン)
オーボエ協奏曲についてはロンボーの記事をご覧ください。ちなみに取り上げた3枚のアルバムはいずれも名演奏。特にオーケストラパートの充実した演奏が印象に残るものでした。
そして、オーボエといえばもちろんハインツ・ホリガー、本命登場です。このアルバムを手に入れたのは昨年でしたが、それまでホリガーにこの曲の録音があることを知りませんでした。しかも、ジンマン指揮のコンセルトヘボウ管による全盛期の蘭PHILIPSの録音ということで言うことありません。ホリガーはモーツァルトのオーボエ協奏曲に素晴らしい演奏を残しています。これはかつての愛聴盤です。
2010/10/14 : ハイドン以外のレビュー : ホリガーのモーツァルトのオーボエ協奏曲
Concerto per il oboe [C] (Hob.VIIg.C1)
スカッとホールに広がるオーケストラの響き。PHILIPSによるコンセルトヘボウの見事な響きにいきなりうっとり。LPのコンディションも最高で実体感溢れる響きに酔いしれます。さすがにデヴィッド・ジンマンが振るだけあってオーケストラのコントロールは精緻。ホリガーのソロはあの細めながら伸びやかな音色が期待通り。独特のアーティキュレーションによってホリガーの演奏だとすぐにわかります。モーツァルトの演奏でもそうでしたが、この天真爛漫な伸びやかさはホリガーならでは。ソロの伸びやかさに触発されてかどうかわかりませんが、オケの方も超高鮮度の演奏で応えます。スピーカーの周りがコンセルトヘボウになったような見事な録音に思わずヴォリュームを上げて美音を浴びる快感に身をゆだねます。実に克明なオケの演奏に対してオーボエのソロが可憐に飛び回り、天真爛漫な境地に至ります。音色が変化するわけではないのに実に多彩な表情の変化をを見せます。1楽章のカデンツァはホリガーのしなやかな音階が極限まで透明に昇華する見事なもの。1楽章からノックアウト気味です。
続くアンダンテは、ちょっとハイドンによるメロディーとは異なる趣を帯びているように感じますが、メロディーの美しさはモーツァルト的な洗練も感じる名曲。ハイドンだったらもっと多様な展開を絡ませてくるような気がします。ただモーツァルトで孤高の境地を聴かせたホリガーの手にかかると、この曲の美しさを見事に洗練の極致まで持っていきます。ここでもジンマンはホリガーの自在な表現にしっかりと寄り添って、テンポも呼吸も見事に合わせてきます。
フィナーレの入りも絶妙な軽さ。この入りしかないという見事なもの。そしてオケの反応の鮮やかさは神がかったもの。ホリガーは遊びまわるようにテンポを動かし、そして完全に透明な響きに吸い込まれて行くようにメロディーを伸びやかに描き続け、オケとの対話を楽しむよう。最後はオケがキリリと引き締めて終了。
ロッシーニの曲はオペラの1場面のような曲。ロッシーニ独特の明るいメロディーと翳りの交錯が見事に描かれた曲。ホリガーの妙技とオケの反応の鮮やかさがハイドンの曲以上に活きてきます。ライヒャの曲ははじめて聴きますがなかなか味わいのある美しいメロディーが聴きごたえ充分。オーボエよりも渋い音色のコール・アングレもホリガー流に見事に操ります。そしてドニゼッティの曲もオペラの一場面のようなドラマティックなもの。ホリガーのコール・アングレがちょうど歌手のアリアのような存在。もちろん歌手の表現をもうわまわらんとするホリガーの表現力が聴きどころ。B面の3曲は気軽に楽しめるくつろいだ曲ばかりでした。
このアルバム、流石ハインツ・ホリガーという演奏。やはり他の奏者とははっきりと異なるホリガーならではのオーボエの演奏を聴かせます。軽やかさと伸びやかさの表現は他の奏者とは一線を画するところ。そしてデヴィッド・ジンマンの振るアムステルダムコンセルトヘボウ管の伴奏も完璧。何より全盛期のPHILIPSの空気感溢れる素晴らしい録音がこの演奏に華を添えます。ハイドンの評価はもちろん[+++++]とします。
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