子どもの自己肯定感とは?高める方法、親の接し方や心構え | Harmonies with KUMON

子どもの自己肯定感とは?
高める方法、親の接し方や心構え

子どもの自己肯定感を高める方法

子育てをする中で何かと耳にする「自己肯定感」。なぜ、子どもの自己肯定感を育むことが大事なのかを知っていますか?その理由や子どもの自己肯定感を育むために保護者ができること、心構えについて、複数の学校現場でスクールカウンセラーとしての経験を持つ、臨床心理士・公認心理師の相楽まりこさんに伺いました。

<教えてくれた人>
相楽まりこさん

臨床心理士、公認心理師、食育指導士。13歳と9歳のサッカー兄弟のママ。
soccer MAMA WEBでコラムを執筆。


子どもの自己肯定感とは? 高い子と低い子の違い

子どもの自己肯定感とは

子育てをするうえで、よく出てくるワードの一つ「自己肯定感」。子どもの自己肯定感とは、どんな自分でもありのままでいいんだと、心の奥底から自然と信じている状態です。

自己肯定が高い子どもは、かっこ悪い、情けない自分のこともスッと受け入れられて、強がりでもなく「自分は大丈夫」だと素直に信じています。自分のことはもちろん、他人のこと、さらに社会のことも信じることができるのです。
自己肯定感が高い子どもは、根拠なく「自分はできる」と信じているので、失敗を恐れず、何でもチャレンジし、どんどん行動していきます。

一方、自己肯定感の低い子どもは、自分のことを疑いやすく自信がありません。他人や社会、環境に対しても不信感を抱きやすいのです。そのため、「自分にはできないんじゃないか」「失敗したらどうしよう」「どうせ自分のことなんて誰も手伝ってくれないだろう」という気持ちが先行し、チャレンジできないのです。日々、行動しない方を選択したり、自信をつける経験を自らつかみにいかない傾向にあるでしょう。

自己肯定感とは「チャレンジするエネルギーの根源」とも言えるのです。だからこそ、保護者は子どもの自己肯定感を育んであげることが大切です。そして、それは子どもがこの先自立して生きていく上での最高のプレゼントになるのです。


知っておきたい、3つの自己肯定感

3つの自己肯定感

自己肯定感は、大きく3つに分けて考えることができます。
1つは、人との比較で生まれる「相対的自己肯定感」。テストでいい点を取った、友だちより速く走れたなど「あの人より勝っている」「周りより優れている」という感覚を得ることで育っていくものです。ただし、比較によって肯定しているので、これだけに頼って自己肯定感を育もうとすると、子どもは思い通りの結果にならなった時に気持ちが折れてしまう場合があります。

2つ目は、自分ならきっとできる・なんとかなる・大丈夫だと根拠なく思えている「絶対的自己肯定感」。これは、子どもの頃の保護者の接し方により育んでいけるものです(詳しくは下記を参照)。

3つ目は、自分の周りの環境や友だち関係に対して肯定的に感じている気持ちが拡大し、自分も肯定的に感じられる「恩恵受容的自己肯定感」。例えば、家族のことが大好きで自分もその一員であることが嬉しい、大好きなチームに自分も所属していることが誇りに思える、といった感覚です。「恩恵受容的自己肯定感」を育むには、子どもの環境を整える保護者のサポートが大事になると言えるでしょう。

大人になってから自己肯定感を立て直すのは大変です。とくに、絶対的自己肯定感を高めることはむずかしく、自己啓発など抜本的なことが必要になることもあるでしょう。だからこそ、自己肯定感がぐんぐん育つ子どもの頃の保護者の関りが大事なのです。


子どもの絶対的自己肯定感を高める方法

子どもの絶対的自己肯定感

子どもの絶対的自己肯定感を育むためには、保護者や周囲の大人の関わり方が何よりも大切です。
子どもの年齢に応じて、関わり方のポイントは違ってきます。

絶対的自己肯定感を高める方法①乳児期

乳児期は「肌に触れる」「目線を合わせる」「たくさんの言葉をかける」、この3つの関わりが大事になってきます。赤ちゃんは抱っこやハグをして肌に触れることで安心するもの。目線を合わせて色々な言葉をかけ、愛情を持って接しているということを肌に触れて伝えていくと、「この人は自分を守ってくれる」「絶対的に信頼できる人」という愛着形成が確立していきます。この時期が絶対的自己肯定感を育むベースになるので、しっかり時間をかけて行うことです。

乳児期から子どもを保育園に預けている保護者の中には、子どもとの時間を十分とることができないと不安に思う方もいるのではないでしょうか。保護者に限らず、保育園の先生など周りにいる養育者が、この時期が大事なことを理解し、肌に触れて目と目とを合わせて、色々な言葉をかけてあげるという関わりができていれば大丈夫です。

絶対的自己肯定感を高める方法② 3歳~小学校低学年

3歳を過ぎると自己主張がでてくるため、保護者は子どもの自我を尊重してあげることが大事になってきます。子どもの話をしっかり聞いてあげて、どういうことを考えているのか、どんな個性を持っているのかを知ることです。保護者が頭ごなしに「それは違う」「これが正解」などと決めつけてしまうと、子どもは自分の考えは尊重されないものなんだと、どんどん否定的になっていく可能性があります。この時期は、絶対的自己肯定感が最も育つ時期なので、子どもの内面や個性を尊重してあげましょう。

絶対的自己肯定感を高める方法③ 小学校中学年~小学校高学年

小学校中学年になると周囲のことが見えてくるようになるので、特に勉強やスポーツなどの分かりやすい分野では、自分よりできる、できないといった優劣が気になるようになります。自分と誰かを勝手に比較して傷ついてしまうなどナイーブな時期でもあるのです。だからこそ、保護者は「あなたのままで大丈夫だよ」とありのままの子どもを認める声をかけてあげることが大切。それだけで、子どもは安心できるのです。

また、先に述べた「恩恵受容的自己肯定感」を感じやすくなる時期でもあります。保護者が子どものコミュニティを広げてあげたり、よりいい環境に身を置けるようにサポートしてあげるといいでしょう。例えば、子どもが好きではないチームに無理に所属しているなら、新しいチームを一緒に探してあげるなど、子ども自身が好きだと思える人に囲まれる環境を整えてあげることです。

中学生以降は、保護者がとやかく口を出す時期ではなくなるため、ある程度子どもに任せながらも「あなたを信頼している」ということは伝え続け、安心できる環境を整えてあげるといいでしょう。


子どもの自己肯定感を下げてしまう接し方

子どもの意見を頭ごなしに否定したり、無視してしまうと、子どもの自己肯定感を下げてしまいます。また、嫌みっぽく言ってしまうことも、時に子どもを傷つけ、自己肯定感を下げてしまう要因に。余裕がないと、どうしても嫌みを言ってしまうことも増えてしまいがちなので、そんな時はまず保護者自身が一呼吸おいて余裕を持つことを優先してみましょう。

子どもと一緒にいる時、周囲から自分の子どもが褒められた場合「うちの子なんて~」と謙遜していませんか? 子どもには謙遜することがわからないので、「お母さんは本当はそんなふうに思っているんだ」と、保護者の本音がわからなくなり、自己肯定感が下がってしまうきっかけになることもあります。子どもが褒められた時は「嬉しいね」「よかったね」と一緒に受け止めるようにするといいでしょう。

子どもが失敗したり、問題が起きた時、保護者が子どもと一緒になって不安がる、子ども以上に慌ててしまう、つい感情的に激しく当たり散らしてしまう、といった対応になりがちです。これは、子どもの自己肯定感を下げてしまうことにつながる場合があります。子どもが何か問題に直面した時には、保護者はどっしり構え「あなたなら大丈夫、乗り越えられるよ」と笑顔で励まし、勇気づけるサポートをしてあげましょう。


子どもの自己肯定感を高めるために! 親ができること、心構え

子どもの自己肯定感を高めるために親ができること

子どもの自己肯定感を育むための方法として一般的なのは褒めること。ただし、褒めることは何かとの比較や評価が関わってくるので「相対的自己肯定感」に該当します。けれど、先に述べたように、相対的自己肯定感は結果が出なければすぐに崩れやすい脆さもあります。
自分なら大丈夫だと思える「絶対的自己肯定感」を育むには、「あなたは大丈夫だよ」と勇気づけることがベースになります。
残念ですが「これを言えばどんな子どもも自己肯定感が高まる」といった魔法の言葉はないと思った方がよいでしょう。どんなにいい言葉でも、その言葉をかけている保護者の顔が曇っていたり、余裕がなくて心ここにあらずだったら、子どもはそれをキャッチするため、言葉の力は失われてしまいます。

子どもの自己肯定感を育むために日常生活の中でできることは、親子で一緒に楽しむ時間をつくることです。一緒にゲームをして楽しむだけでも十分です。ある論文では、親子で一緒に料理を作った経験が多い子は、自己肯定感が高いというデータもあります。

そして、何よりも大事なのは、保護者自身が自分を大切にしている行動を子どもにみせていくことです。子どもは保護者のことを大人が思っている以上によく見ています。保護者自身が、自分をちゃんと大切に労って、余裕をもって子どもと笑顔で接しようと心がけていれば、それが巡り巡って、子どもも自分を大切にしようと思えることにつながっていくのです。

子育てをしていると、どうしても義務的にやることに追われがちに。でも、そこをいかに工夫して楽しもうとするかが大事です。「自分ほどこの子を愛している人は他にはいない」と、保護者が自分を肯定して子育てを楽しめば、自然と子どもの自己肯定感を育むこととシンクロします。実際、自己肯定感の高い子どもを持つ保護者は、自己犠牲的に子育てするのではなく、子育てを楽しもうとしている方が多いように感じます。子どもへの声かけの言葉を細かく気にするよりも、多少の失敗はあっても自信を持って楽しく子育てをしていれば、子どもも自分を信じられるバイタリティのある人に成長にしていくでしょう。


いかがでしたか?前編では、子どもの自己肯定感について、絶対的自己肯定感を育む方法、保護者の心構えなどをお届けしました。後編ではスポーツに打ち込んでいる子どもの能力の伸ばし方、自己効力感についてご紹介します。

取材・文:サカママ編集部 取材協力:相楽まりこ (臨床心理士、公認心理師、食育指導士)

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