(2018年10月13日 アルツハイマー型認知症の診断から約11年8ヶ月)
*ジジとおママ銀行等に行く
年末になると野暮用が増えます。それはジジもなんです。
最近は足腰が弱くなり、あまり足を運ばなくなったのですが、年末はいくつか銀行を回ります。しばらくやっていなかった通帳記帳、引落しのために預金を他の口座に移したり…。しかも、近所のATMではなく、電車に乗って窓口のある支店に行く必要があったり…。
一般的には大した事ではありません。
でも、90歳を過ぎたジジには中々ハードルが高いお出掛けです。
自らはシルバーカーを押して、アルツハイマー型認知症のおママを連れて歩く。
これって、天候に恵まれない難しい。この時期だと寒くても風が強くても無理です。
そして、自分の体調、おママの気分。
全てを鑑みて、ジジが行けると判断した時が絶好のチャンスなのです。
ジジはこれを先週の、暖かな日に決行しました。(^O^)
「今日行くから」とジジから急に電話があったのが、当日の朝でした。(°_°)
まだ自宅にいた私は、時間的に最初から最後までジジとおママの行脚のお供をするのは不可能で、途中から合流する事にしました。
*おママったら❗️
私は商業地の駅に降り立ち、ジジの携帯(ガラケー)に電話しました。
すると、すでに2人は駅からやや離れた郵便局で最初の用事を済ませたようです。
「これからそっちに行くから、某銀行支店前で待っていて」
しかし、やや暫く待っても、なかなか2人は現れません。
(歩くのが遅いし、もう2人ともかなりお疲れかも…。途中で転んだりしていなければいいけど。)
商店の立ち並ぶ道は、若い学生さんやお勤めの人たち、高齢の人から小洒落た奥さん達が行き交っていました。駅前広場でフリーマーケットが開催されていたから、余計に人手が多かったのでしょう。
その雑踏の中に、シルバーカーを押すジジと、後ろをついて歩くおママの姿を見つけた時、私は心底ホッとしました。
果たして…、2人はかなり草臥状態。だって家から最寄りの駅に行って、電車に乗って、人出の多い街を歩いているのですから…。仕方ない。
しかし、ジジの表情には単に足腰のだけでない疲労感が滲んでいました。
おママときたら、文句たらたらですもの。
「もう、どこへ行くのよ。こんなに歩いてどうするのよ。私はもう分からないわ❗️」
銀行で貰ったらしく、丸めた筒状のカレンダーを手に持っているおママは、それを使ってシルバーカーを押すジジも背中を軽く突いたり、叩いたりしています。
「お母さん、大人げない事はやめてよ。」
私が制しても、「えいっ❗️」とか言いながら止めません。ごく軽くですから、大して痛くはないのと思うけど、公衆の面前で如何なものか…。
「チャーコさんが来るまで、ずっとこんなだった…。」
ジジは気の毒に、げんなりとしていました。
「ほら、お母さんやめましょう!歩かされて疲れているのは分かるけど、お父さんを突いても仕方ないわよ。子供みたいなことはやめて。」
おママは流石に自分の行為が褒められたものでないと感じたのか、バツが悪そうに笑いました。
「もう、私はどうしたらいいか分からないのよ〜。」
確かに、ジジは目的も目的地も把握しているから、頑張って歩けます。
でも、おママはそうじゃないのです。
どこへ行くために?
何をするために?
何度聞いてもすぐ忘れるから、おママは歩いている理由がわかりません。
歩いても、歩いても辿り着かない感覚に襲われて、気持ちは不安と不満で渦巻いてしまったのでしょう。考えてみれば、おママも気の毒です。
*チャーコ、とばっちりを受ける
夕方、オネコが実家に来たので、私はこの事を話しました。
するとオネコは、
「うんと歩かされてブー垂れるのは、誰かさんと同じね。」
「えーーーっ!小さい頃の話なのに❗️」
私の事ですよ…。
昔、私が小学校に上がる頃、おママとオネコと旅行に行きました。
その時、あまりに長く歩かされて、私は酷く愚図ったのです。その時の態度の悪さは自分でも少し記憶にありますが、50歳を過ぎて、今更言われるなんて❗️(°_°)
「多分、今のおママの精神年齢はあの時のチャーコさんと同じくらいなのかもね。」
それはどうか分かりませんが…。
あの旅行の時、幼い私にはどんなに歩いても目的地が見えてこないし、その目的地が何かもよく理解出来ていなかったのだと思います。
歩いても歩いても辿り着かない…。
当時の私には終わり無き苦痛に思えたのでしょう。
私も歳をとって認知症になったら…。
また小さい頃のように、この日のおママのように、
うんと歩かされてブー垂れたりして…ね…。(^O^)
⬆︎使用した千代紙です。
おママの貼り絵を見て下さり、ありがとうございます。