《地盤品質判定士コラム第18回》 住宅の不同沈下対策 | 一般社団法人 地盤品質判定士会

《地盤品質判定士コラム第18回》 住宅の不同沈下対策

1.はじめに

 約40年前までの住宅は特に基礎に特別なことを行うことはありませんでした。バブルのころより軟弱な地盤や傾斜地を造成して住宅が多く建てられるようになり不同沈下する事例が増えたのです。そのため住宅地でもできる安価な調査と補強工事が開発され普及してきました。

 住宅の基礎は、ビルなど中高層の建築物の基礎に比べ、その選定は、かえって難しいといわれています。中高層だと、重量が重いのでしっかりとした地盤で支えれば、比較的簡単です。住宅の場合しっかりした地盤で支えなくても、そこそこの地盤で十分持ちますし、場合によっては、軟らかい地盤でも問題ないケースもあります。

2.不同沈下対策工法の流れ

表1 不同沈下対策の流れ

 住宅の不同沈下対策の工法は、表1に示すように、この20年では技術の変化が激しく新しい工法が次々と開発・実用化されています。民間市場ですので安価であれば公共工事に比べて採用されやすいので新工法の採用は安全性には注意が必要です。 ただし性能証明を取得している工法や地盤保証会社が認定している工法は信頼性が高いといえます。

3.不同沈下対策工法の選定

 新築の場合には推定で約6割の住宅で何らかの不同沈下対策の地盤補強工事を実施してると思われます。

 その選定にあたっては、安全性やコストはもちろんのこと近年では耐震性も重要な要素です。更には住宅地盤特有の都市部の狭小地でできる小型の機械であることや工事の振動や粉じん、土壌汚染といった環境面を含めた工法の選択が必要です。最近の考えで二酸化炭素の排出に敏感なユーザーも増えているようです。

表2 地盤別おすすめ基礎
   引用:橋本光則『誰も教えてくれなかった宅地地盤の話78』ザ・メディアジョンPP119,2003

 したがって住宅基礎においては、一つの建物に対していろいろな基礎工法が考えられますので、予算や工法の種類によって松竹梅の基礎補強を選ぶことができます。

 ただし一般のユーザーは住宅基礎の知識があまりないので住宅メーカーや工務店の勧められるままに施工しているのが現状です。これからは中立的な地盤品質判定士などのアドバイスをもらうなどで納得のいく不同沈下対策ができる時代になるとよいと思います。

4.不同沈下対策の分類

現在住宅で行われている不同沈下対策の分類方法はいろいろありますが施工会社で分けると

(1)住宅会社(基礎業者)にて行う方法

(2)地盤補強専門会社にて行う方法

(3)沈下修正会社にて行う方法

があります。

(1)住宅会社の方法としては

 ①基礎構造を深基礎にする。ジオグリッド、大型土のう、発泡スチロールなどの敷設

 ②基礎根切り直下を十分転圧する。
  部分的に地盤の悪いところを良質土や砕石で置き換え転圧する。

(2)地盤補強専門会社の方法としては

 ①表層地盤改良

  乾式表層改良、湿式ブロック状改良、シート砕石併用、コマ型ブロック

 ②杭系地盤補強

  深層混合処理(柱状改良)、小口径鋼管(ストレート及び先端翼付)、
  コンクリート杭、小径杭工法(場所打ちセメント杭、細径鋼管)、
  木杭、柱状改良と小径杭の併用工法

 ③その他

  砕石杭

(3)沈下修正会社の方法としては

 ①鋼管圧入(アンダーピニング)工法

 ②耐圧盤工法

 ③土台上げ工法

 ④注入工法(水ガラス系薬液注入、基礎下ウレタン注入)

などが挙げられます。

5.住宅の液状化による不同沈下対策と費用

 住宅の液状化対策についての詳細な話は他のコラムに譲りますが、不同沈下対策と概算の費用は表3の様になります。詳しくは参考文献を確認ください。同じ面積でも深さや工法で費用は大きく変わります。現状では住宅の液状化対策の普及頻度はまだ低いようです。

表3.住宅の液状化対策の参考 
引用:一般社団法人 レジリエンスジャパン推進協議会『住宅を対象とした液状化調査・対策の手引書』pp129、2016に筆者が加筆

橋本 光則

地盤品質判定士会幹事。地盤品質判定士会中国支部幹事長。かつて住宅地盤品質協会・理事・技術委員長を歴任。現在は地盤会社顧問、地盤補償会社審査員、建物沈下修正業者連合会理事として従事している。
住宅基礎・地盤補強が専門。住宅地盤事業の先駆け。在来木造住宅に初めて柱状改良を自宅に施工した。
著書に『誰も教えてくれなかった宅地・地盤の話87』『強(こわ)い地盤の話(住宅基礎地盤の失敗例に学ぶ)』(共著)他がある。
地盤品質判定士の社会貢献度アップに協力していきたい。

#不同沈下対策 #住宅