最新パート『KYONOSUKE FOR G-SHOCK』完成記念
スケーター山下京之助的! スケビ名作劇場
日本のみならず世界中から注目されるストリートスケーターの山下京之助。日本スケート界が誇る期待の星でもある彼の最新ビデオパートが、12月14日にお披露目された。
本記事ではG-SHOCKのために撮影された最新パート『KYONOSUKE FOR G-SHOCK︎』を本人のコメントとともに紹介したい。また後半では、山下京之助が今イチオシのスケビ5本をピックアップしてくれた。
山下京之助とは?
弱冠19歳(2023年12月現在)にして世界を舞台に活躍する、今最もアツい次世代プロスケーター。
Luis Mora(ルイス・モラ)の動画に出演したことをきっかけに注目されるようになった彼は、アメリカのレジェンドスケーターP.Rod (ポール・ロドリゲス)が立ち上げたスケートカンパニーのPrimitive Skateboardsに所属し、本場アメリカでも多くのフッテージを残している。Primitive 『Define.』やLakaiのウェルカムパートも大きな話題となった。そんな京之助のプロフィールは【こちら】
スポットチョイスの妙で切り拓く
“ストリートスケート”の新境地
スケーターにとってビデオパートとは、世界に向けて発表する作品であるというだけでなく自身のスケートスタイルを表現する手段でもある。スポット、トリック、果ては音楽、編集に至るまで一切手を抜くことなく“自分らしさ”を追求して完成させていく。今回リリースされた最新ビデオパートにも、山下京之助の“今”が詰め込まれている。
これまでテクニカルでクリーン、スタイリッシュな映像で世界を魅了してきた京之助。今回のビデオの見どころを尋ねると、「よりアンダーグラウンドなストリートスケートらしさ」という意外な答えが返ってきた。
「僕は今まで海外のスポットで撮影をすることが多かったんです。ただ今回は東京で撮った映像を積極的に織り交ぜたビデオにしています。路地裏や狭い場所など東京らしいロケーションが多い分、より一層アンダーグラウンドな印象になっていると思います。今までトライしてこなかった斬新なスポットでの映像や、トリックの選び方にも注目してもらえたら嬉しいです」。
特に気に入っているシーンはないか聞くと、悩みながら2つのトリックを挙げてくれた。
「一つは路地裏から車道に飛び出しながら木と電柱の狭い隙間をキックフリップ(※1)で超えていくシーンです。僕は普段、こういう場所を撮影スポットに選ばないんです。フィルマーの方に教えてもらった場所なんですが、現場を見てキックフリップしかないと思って撮影しました。よく行くLAにはこういう場所はないんですよ。いかにも“The 東京”という感じのスポットなのですごく気に入っています」。
※1 つま先でデッキを一回転させる技
スポットチョイスはストリートスケートの醍醐味の一つ。どんなトリックで街を切り取るかにこそスケーターの“スタイル”が現れる。
「もう一つのお気に入りは、台湾で撮影した長いダウンレールでのフロントスミス(※2)ですね。メイクするまで3時間くらいかかって大変でしたけど、その分メイクできた時は嬉しかったです。現地の台湾スケーターも一緒に喜んでくれて最高でした。実は台湾には未だスケーターが滑ったことのないスポットがたくさんあって、滞在中は連日スポット巡りをしていました。未開拓で誰も滑ってない場所を映像に残すことは、話題性という意味でも大事だと思ってます。台湾で滑るのは2度目でしたが、東京には無いようなスポットで滑れて充実した撮影になりました」。
※2 前のトラックを下に落とした形で後ろのトラックをレールにグラインドさせる技
上の2つの言葉からも分かる通り、ストリートスケートのカッコよさは決してトリックの難易度だけで決まるわけではない。ストリートスケートでは、スポットの特徴を活かすために敢えてシンプルなトリックを選ぶこともあれば、オリジナリティ溢れるトリックでスポットへアプローチすることもある。誰が、どこで、どんなトリックをメイクするか。そういったこだわりが、見る者に新鮮な驚きや興奮を与えてくれるのだ。
今回のビデオパートは、山下京之助ならではの“テクニカルなライディング”と“ストリートスケートへのアプローチ”が詰め込まれているからこそ、ここまで見応えのある映像に仕上がっている。続けて彼は、スケートビデオを撮ることに対する難しさや魅力について語った。
「スケートボードの撮影って実はすごく大変で、トリックの難易度やセキュリティの厳しさなどを考慮すると、1日に1シーン撮れるか撮れないかくらいなんです。それくらいスケートビデオの撮影には時間と労力がかかる。それでもスケーターたちは全力で挑むんです。大変だからこそ手を抜きたくない。だって多くの人に楽しんでほしいし、それを見た人が刺激を受けてスケボーを始めるきっかけになったら最高ですからね」。
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No.1 『Louie Lopez “Days of Grace”』
京之助に影響を与えたスケーターが見せる
ストリートへのクリエイティブなアプローチに注目!
山下京之助が一番影響を受けたというスケーター、Louie Lopez(ルイ・ロペス)。彼は、ハンドレールからステア(※3)まで、あらゆるセクションを使ったトリックでトップレベルの実力を持つオールラウンド・スケーター。2019年にスケートカンパニーのFUCKING AWESOMEに加入し、その2年後の2021年に本ビデオパートをリリースした。Louie Lopezといえば、ビッグステアなどで高難易度のトリックを連発するテクニカルなビッグトリッカーの印象が強いが、本作ではアンダーグラウンドなストリートカルチャーをルーツに持つFUCKING AWESOMEらしいラフなストリートスケートを披露。日常を切り取ったような着飾らないカッコよさが絶妙なバランスでミックスされた作品となっている。
※3 階段のこと
「このパートは彼特有のハンマートリック(※4)がメインというよりも、作品としてのトータルの流れが良いんです。各トリックはそこまで難しくないものが多いんですが、ストリートスケートとしてすごく見ていて気持ちいい。そんな部分に惹かれるし、僕も彼のスタイルに影響を受けて、自分の撮影でもシンプルなトリックを敢えてチョイスすることもあります。使われている曲もカッコいいし時間も4分くらいなので、サクッと何度も見てしまう映像です」。
※4 特大の手すりや階段で行う技や難易度の高い技
No.2 『NIKE SB “7 Ball”』
欧州ストリートシーンを知りたいならこれ!
注目のアップカマー総出演の最新フッテージ
「このビデオには好きなスケーターが出ていたので、今年の6月に公開された瞬間にチェックしてアガッたのを覚えてます」。
そう紹介してくれたこのビデオは、ヨーロッパで最近注目のアップカマーをフィーチャーしたNIKE SBの『7 Ball』。
「ヨーロッパのスケーターにはスポットの選び方や使い方が独特で面白い人が多いんですよ。特に注目してほしいのは、一番最後に出てくるEetu Tropainen(エーツ・トロパイネン)です。中でも【33:22~33:27】のバンク(※5)に入ってフェンスに50-50(※6)を掛けるシーンが好きですね。このスポットを見てこんな滑り方を思いつくのかっていう驚きもありますし、ライディングとしてもちょっと普通のレベルじゃないですよ。このビデオは割と玄人向けかもしれませんが、“こんな場所でこんな滑り方を思いつくのか!”っていうスポットの使い方に注意して見ていくととても楽しめると思います」。
※5 傾斜のついた路面
※6 前後の両トラックをレールやレッジにかけてグラインドする技
この作品を撮影したフィルマーは、ヨーロッパスケートシーンを舞台に実力のある次世代スケーターを撮っているWill Miles(ウィル・マイルス)。彼がセレクトしたであろうスケーターが出演する本作は、ヨーロッパシーンで勢いのある若手に注目するならマストでチェックしたい1本。音楽やファッション、そしてストリートの雰囲気混みで、ヨーロッパの魅力をギュッと凝縮した作品だ。
No.3 『HUF “Forever”』
アーティスティックな世界観が堪能できる
HUFの最新ビデオは休日のお供にうってつけ
元祖オーリーマスターとしても知られるレジェンドスケーター、Keith Hufnagel(キース・ハフナゲル)が立ち上げたアパレルブランドのHUF初のフルレングスビデオとなるのが本作『Forever』。2020年に46歳の若さでこの世を去ったKieth Hufnagelに捧げたこの作品は、HUFの世界観を堪能できる作品だ。
「これは世界観も音楽もお洒落なのでぜひ見てほしいですね。出演スケーターも僕好みなんですよね。NYのスケーターであるCyrus Bennett(サイラス・ベネット)のライディングには特に注目してほしい。キレッキレなキックフリップと少し荒削りな滑りがNYの街並みとマッチしていてカッコいいんですよ。他にも、Dick Rizzo(ディック・リゾ)のザ・NYな渋い滑りや、Nick Matthews(ニック・マシューズ)のハイクオリティなレッジ・トリック(※7)も見逃せないポイント。
ちなみにNYって荒いスポットが多いんです。なので映像で見る以上にトリックの難易度が高い。それをものともせずにガンガン攻めていく彼らの姿にはストリートスケートの魅力が詰まってます」。
※7 縁石で行う技
「世界観も音楽もカッコいい」と京之助が語る通り、このビデオはスケートフッテージだけでなく使われている音楽にも強いこだわりを感じる1本。それは、音楽まで含めて楽しんでくれ、と言わんばかりにスケーターの名前と使われている楽曲名が一緒に紹介されるクレジット【37:31~38:34】にも現れている。
No.4 『Niels Bennett “HEROES/HELDEN”』
フィルマー2人による2部構成のビデオは
何度も見返したくなる面白さ!
GIRL SKATEBOARDS所属のスケーター、Niels Bennett(ニールス・ベネット)のソロパートが、イギリスのスケートメディアFreeskatemagより公開されている。この映像はこれまで前例のない、2人のフィルマーによる前編・後編の2部構成というかなり珍しい構成なのが特徴だ。
「GIRL SKATEBOARDSは1993年にスタートしたデッキカンパニーで、数々のハイクオリティな名作ビデオも出している名門。歴史的にもスタープレイヤーを数多く擁していることもあって、レジェンドスケーターがいっぱいいるっていうイメージが強いですが、そんなチームの中で一際異彩を放っているニューカマーがNiels Bennettなんですよ。彼は良い意味でGIRLっぽくないですよね? 常にテクニカルで難しい動きを選んでスケートしている印象で、それが新鮮に見えるんです。いろんなトリックをサクッとメイクしてるんですけど、見た目以上に難しいトリックばっかりなのもポイントが高いです。前編はChris Mulhern(クリス・ミュレン)、後編はTorsten Frank(トーステン・フランク)という2人のフィルマーが撮影しているんですが、僕は前編が好きなんですよね。同じスケーターでもフィルマーによって映像の違いがあるのも面白くて、何度も見返したくなります。他のビデオにはない楽しみ方があって、刺激をたくさん得られるオススメビデオです!」
No.5 『SOUR SOLUTION “THE SOUR SOLUTION Ⅲ”』
予想の斜め上をいくトリックの連打で
スケートの魅力を120%伝えてくれる名作
こちらは、スペインのバルセロナを拠点にするスケートカンパニーのSOUR SOLUTIONがドロップした『THE SOUR SOLUTION Ⅲ』。
「何この動き? みたいな人間離れした動きをするスケーターが多いですよね。特にビデオ後半のGustav Tonnesen(グスタブ・トネセン)とSimon Isaksson(サイモン・イザクソン)のパートは、他では見かけないタイプのスケートが見られます。僕はトップバッターのVincent Huhta(ヴィンセント・フフタ)が一番のお気に入り。【1:10~4:23】で、彼は思うままにナチュラルに滑っている印象なんです。ただただ好きなようにラフに滑っている姿がカッコいい。こういうのを見ると刺激をもらえますし憧れますね。フィルミングも面白いし、長年スケーターに愛されているビデオカメラのVX1000(※8)で撮られた映像は、スピード感や迫力まで感じられるんですよ」。
※8 1995年にSonyから発売されたビデオカメラ
一概にスケートビデオと言っても、出演スケーターやフィルマーによってその作風はさまざま。SOUR SOLUTIONの特徴的なスタイルを見れば、スケートをしたことが無い人でも「イメージしてたスケートボードとなんか違う」という感想になるはず。わかりやすいのはGustav Tonnesenの脱力感MAXの独創的なスタイル【30:55~31:27】。挙句の果てにはフィルマーが撮影中のVX1000を360フリップ(※9)させるという、本気なのかジョークなのかわからないトリック? までメイク。この様子はSNS上でも話題になっていたほど【32:18~32:33】。今までスケートスポットに見えていなかった場所もアイデア次第でスケータブルになると思い知らされる1本。
※9 デッキを縦横共に1回転させる技。トレフリップ。