人間栄養学研究科 │ 聖徳大学大学院

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修了生紹介(福島由子さん)

23.06.24

【博士前期課程で取り組んだ研究】
私の研究テーマは、野生酵母を利用したフランスの伝統的な発酵菓子「クグロフ」の製パン性とその品質評価です(クグロフの紹介は、写真を参照してください)。菓子職人としてフランスへ留学していた際、フランスで日常的に食べていた菓子パンは、日本よりも良好な風味と高い嗜好性があると感じ、興味を持ったことが研究を始めるきっかけでした。当時、パンを発酵させる酵母の違いが、パンの風味や柔らかい食感に影響を与えているのではないかと考え、関心を持ち、帰国し研究に取り組むことになりました。
研究対象は、フランスのアルザス地方の伝統的な発酵菓子であるクグロフという、日本では菓子パンに相当するパンを選択しました。クグロフの特徴は、高ショ糖含量、高油脂含量であり、それらの成分に対するストレス耐性に乏しいとされている野生酵母Saccharomyces cerevisiaeを利用し、新規な発酵菓子クグロフの調製とその評価を行いました。
研究結果は、安定した発酵力が得られる市販酵母と、2種類の野生酵母の発酵力を比較し、同程度の膨化力であることが分かりました。この結果から、製造法の工夫により野生酵母の特性を生かした菓子パン製造への可能性を見つけることが出来ました。
聖徳大学短期大学部総合文化学科の副手として働きながら、社会人大学院生として2年間で修士号を取得できたことは、私にとって大変意義のある事だと感じています。当初は体力と気力が持つか不安はありましたが、勉学と仕事を両立できたことは自信に繋がりました。主査の小松﨑典子先生から実験方法、研究の進め方、論文の執筆方法など熱心な御指導を頂き、また研究科長の齋藤昌義先生からは英語の論文執筆の方法、安心して研究や勉強が出来るようにいつも考えて頂いたことなど、大変感謝しております。この2年間を振り返ると、大変充実した日々を送ることが出来たと感じています。

【今後のキャリアについて】
修士号取得したことによりステップアップしたいと考え、現在は他大学で調理科学分野の助手として勤務し、また同大学の大学院博士課程に進み、発酵菓子および菓子パンの研究を続けています。
修士課程の研究の後半では、クグロフの材料であるバターを健康効果が期待できる代替油脂で菓子パン製造が可能か検討しましたが、パンの膨らむメカニズム自体が複雑で、それにより解明できなかったことが多くありました。修士課程で得た成果を発展させるために、博士課程では、調理科学、食品製造・加工の面からアプローチし、発酵菓子についての基礎的な特性の解明を目指して、研究を進めていきたいと考えています。そしていつかはアカデミックポジションに就けるよう、これからも研究に邁進したいと思います。

クグロフ発祥の地であるフランス・アルザス地方へ出向き、本研究のクグロフが本場と同様に作製出来ているか、また同様のクオリティーか確認しました。フランスでは発酵菓子をViennoiserie(ヴィエノワズリー)と呼び、イースト発酵させた菓子パンのことを指します。現地でクグロフは、Pâtisserie (菓子屋)と Boulangerie (パン屋)の両方で売られています。

アルザス地方の首都ストラスブールのクグロフ職人さんから陶器の型で焼く利点と焼成のコツを教えて頂きました。使い込まれた陶器型は洗わず、布で拭くだけ。そのためバターが型に馴染んでおいしいとのことです。

2017-2019年の約2年間、菓子職人としてフランスに留学していました。当初は本場であるフランスで製菓技術を培うことが目的でした。しかし技術だけではなく、製菓や製パンの製造や加工、またそのプロセスで起こる様々な現象に対し、科学的に学ぶ必要性があると感じていました。そのため、「食」を栄養学、発酵学、調理科学の分野から、より専門的に学べる大学院で研究したいと思い、帰国しました。

修士論文発表会 クグロフの実物を紹介しました。
学位授与式の後、指導の先生方と。
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