飢餓とは?原因や世界の現状を知り、私たちにできることを考えよう


飢餓とは?原因や世界の現状を知り、私たちにできることを考えよう


  • 2020年3月5日
  • 2023年1月5日
  • 飢餓

世界では飢餓が大きな問題となっています。飢餓の現状や原因について理解を深めることは私たちにとっても大切なことです。

今後、世界では飢餓がさらに深刻となり、私たちも飢餓の脅威にさらされる危険性があります。

現在も飢餓に苦しんでいる人々が大勢おり、そのために私たちにできることもあるのです。

この記事では世界の現状や飢餓の原因などを紹介します。

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世界の飢餓の現状は?


世界では様々な地域で飢餓が広がっており、2019年7月に発表された報告書によると、世界では飢餓人口が8億2,160万人にも上ると報告されています。

その中でも最も厳しい状況に置かれているのはアフリカです。

飢餓蔓延率は世界で最も高いとされ、飢餓人口は2億5,610万人といまも増え続けています。
飢餓や食糧不足の地域では蔓延率が上昇傾向にあり、特に東アフリカでは人口の30.8%が栄養不足に苦しんでいる状況です。

また、飢餓人口が最も多いのはアジアと言われています。
その数は5億1390万人以上とされ、その多くは南アジア諸国に住む人々です。

飢餓が深刻なアフリカとアジアの両地域で、あらゆる形態の栄養不良が起こっています。
世界の発育阻害の子どもの10人中9人、消耗症の子どもの10人中9人は上記の2つの地域に集中しており、南アジアとサハラ以南のアフリカ地域では3人に1人の子どもが発育阻害となっています。

さらに中程度及び深刻な食糧不安の人口は20億人、低出生体重児の人口は2,050万人など、世界の飢餓は深刻な状態となっているのです。

(出典:WFP「世界の飢餓人口は3年連続で未だ減少せず、肥満は依然増加傾向-国連の報告」,2019)

  • アフリカは世界で最も高い飢餓蔓延率といわれている
  • 飢餓人口が最も多いのはアジアで5億1390万人以上にも上る
  • 南アジアとサハラ以南のアフリカ地域では3人に1人の子どもが発育阻害

飢餓の原因は?


飢餓を引き起こす主な要因として挙げられるのが、災害、紛争、貧困などです。

それぞれの要因がどのように飢餓を引き起こすのかを説明します。

災害

飢餓の要因として1つとして挙がるのが災害、特に自然災害によるものです。自然の力は強大ですが地震や津波以外にも、干ばつや洪水などが起こると農作物が被害を受けます

世界中で食糧不足に苦しむ人の8割以上が、自然災害が発生しやすい環境に暮らしていると言われています。そこで暮らす人の多くは農業で生計を立てていますが、わずかな資産基盤しか持っていないために人口増加や土壌・生態系の悪化、気候変動などの影響でさらに打撃を受けてしまうのです。

世界規模でこのような被害が起こっており、特に上記のアフリカやアジア地域ではその影響を大きく受けることで、飢餓が広がってしまっているケースもあります。
(出典:WFP「災害が飢餓に与える影響」,2015)

紛争

アフリカや中央・南アジアなどを中心に今も紛争が起こっている地域があります。紛争が起これば、その地域に住んでいた人は住まいを追われ、農地などを捨てて難民キャンプに避難する人も多くいます。

紛争が続いていると住んでいた場所に帰ることは難しく、帰れたとしても元の生活に戻るためには多くの時間を有することになります。その間、農作物をつくることもままならず、食糧不足は深刻になります。

避難した人々は紛争が終わるまでは難民キャンプでの生活となり、満足な食事や十分な水を得ることも困難な状態となり、飢餓状態に陥る人が増えることにもつながります。

2017年に国連が発表した報告書によると、10年以上減少傾向にあった飢餓人口が増加に転じた主な原因が、紛争の拡大とされています。2016年には7億7700万人だった飢餓人口が8億1500万人に増加したのです。

(出典:JAICAF「世界の食料安全保障と栄養の現状2017」)

貧困

貧困も飢餓の原因となります。農業が主の産業となっている貧困国などに住む農民は慢性的な貧困状態にいる人も多いです。

貧困であることから農業を行うための土地や水、種を確保する資金がないことで自給自足ができない、満足に食料を買うお金も無い状態に陥り、飢餓から抜け出せません。

また満足な教育を受けられないことから、他の職業に就き、貧困から脱出することもできないケースが多いのです。

これにより貧困は連鎖してしまい、飢餓は一層酷くなってしまいます。

先述した紛争もこの貧困に加担している地域もあり、複数の要因が飢餓人口が増大してしまっているという考え方もあります。

  • 飢餓の要因となるのは災害や紛争、貧困などがある
  • 世界中で食糧不足に苦しむ人の8割以上が、自然災害が発生しやすい環境に暮らしている
  • 10年以上減少傾向にあった飢餓人口が増加に転じた主な原因が、紛争の拡大

(出典:独立行政法人国際協力機構JICA「飢餓と発展途上国の農業」)

飢餓・食糧不足が深刻な国は?


それでは飢餓や食糧不足が深刻な国はどこなのでしょうか。

2021年のハンガーマップを基に、栄養不足の人口割合を地域ごとに分類し、それぞれの割合の範囲で該当する国名をまとめました。

ハンガーマップは国連世界食糧計画(WFP)が発表している世界地図で、世界の飢餓状況を栄養不足人口の割合により色分けして表現されています。

栄養不足の人口の割合 地域 国名
35%以上 東アジア 北朝鮮
アフリカ マダガスカル
ソマリア
ルワンダ
コンゴ民主共和国
コンゴ共和国
中央アフリカ
リベリア
北アメリカ ハイチ
西アジア イエメン
イラク
25-34.9% 南アジア アフガニスタン
アフリカ モザンビーク
タンザニア
ボツワナ
チャド
シエラレオネ
南アメリカ ベネズエラ
15-24.9% 東南アジア 東ティモール
パプアニューギニア
ソロモン諸島
南アジア インド
アフリカ エチオピア
ケニア
アンゴラ
ナミビア
ガボン
トーゴ
北アメリカ ニカラグア
グアテマラ
5-14.9% 中央アジア キルギス
パキスタン
東南アジア インドネシア
フィリピン
シンガポール
ボヌアツ
フィジー
ニューカレドニア
カンボジア
タイ
ベトナム
ラオス
ミャンマー
バングラディッシュ
南アジア スリランカ
バングラディシュ
西アジア オマーン
ヨルダン
イラン
アフリカ 南アフリカ
エスワティニ
エジプト
スーダン
カメルーン
ネイジェリア
ベナン
ガーナ
コートジボワール
セネガル
ガンビア
モーリタニア
マリ
南アメリカ パラグアイ
ボリビア
ペルー
エクアドル
コロンビア
ガイアナ
スリナム
トリニダード・ドバゴ
バルバドス
グレナダ
北アメリカ ドミニカ国
パナマ
ホンジュラス
エルサドバドル
ジャマイカ
メキシコ

このように見てみるとアジア、アフリカ、中南米の地域で栄養不足の人々の割合が多いことが分かります。国によって割合に違いはありますが、そのほとんどが深刻な飢餓状態に陥っていることがわかります。

(出典:WFP「ハンガーマップ2021」)

  • アフリカやアジア、中南米で栄養不足の人々の割合が多い
  • 35%以上の国はサハラ以南のアフリカ2集中している
  • アジアの国々では栄養不足の人の割合が5~14.9%であることが多い

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飢餓が人に与える影響


飢餓に陥ることで人にどのような影響を与えるのでしょうか。先述した栄養不良だけでなく、母子栄養における妊産婦のリスクへも影響を与えます。

また、飢餓によって肥満も引き起こされることがあります。

飢餓による栄養不良や母子栄養における妊産婦のリスク、肥満について解説します。

栄養不良

栄養不良は子どもに様々な障害を及ぼします。先述した通り、発育阻害を起こし、低身長や低体重の子どもを生んでしまっています。
2019年に発表された報告書では、5歳児未満で栄養不足になっている子どもは3億4,000万人であり、2人に1人の割合でビタミンAや鉄分などの栄養素が不足しています。

また1億4,900万人の子どもは発育障害であり、5,000万人の子どもが消耗症あるいは身長に対して低体重であるというデータもあります。

そしてこの栄養不良を原因として免疫力を低下させ、病気のリスクを高めてしまうため5歳未満の子どもの多くが命を落としているという現状も改善する必要があります。

栄養不良は子どもの今と未来を奪ってしまうのです。
(出典:ユニセフ「世界子供白書2019 栄養不足、隠れ飢餓、過体重…現代の栄養問題に焦点 子どもの健康を脅かす 栄養に乏しい食生活 日本以外の先進国では、子ども5人に1人が過体重」,2019)

肥満

栄養不良が起こる一方で過体重や肥満も起こるケースがあります。子どもは生後6ヶ月前後で離乳食に移行する必要がありますが、その際適切な食べ物が与えられていないことが多いと指摘されています。

飢餓により栄養価の高い食べ物は入手困難となってしまい、不適切な食事により過体重となってしまうこともあるのです。

飢餓で肥満になる理由

飢餓で肥満になる理由は上記のように栄養価の低い不適切な食事によるものだけではありません。

飢餓により食糧が十分に手に入らない環境そのものが肥満を生み出している原因にもなっています。

上述したように飢餓が深刻な国では栄養価の高い食べ物は入手困難です。食糧が豊富に手に入る国でも栄養価が高く新鮮な食べ物は比較的高価であり、食糧不足の国では安価で高カロリー、低栄養な食品を選ばなければいけない状況に陥ります。

そうなると栄養バランスの取れた食生活を送れず、これもまた栄養不良を起こすことがあります。

あるいは食べ物がいつ手に入るかわからないと言う不安感やストレスからバランスの悪い食事を過剰に摂取してしまうことになり、肥満を招いてしまうのです。
(出典:WFP「肥満と飢餓の「深い関係」」)

妊産婦のリスク・母子栄養

飢餓や栄養不良は妊産婦のリスクを高める原因でもあります。栄養不良が原因でなくなる新生児の数は80万人と言われています。

これは妊娠中の母体の栄養不良が原因です。母体が栄養不良状態だと生まれてくる子どもはその時点で栄養不良に陥っています。

また妊娠・授乳中の母体は通常より多くの栄養とエネルギーを必要とします。そのため母子ともに栄養不良の状態は危険であり、無事出産したとしても死亡リスクを高めてしまうことになるのです。

このような危機的状況を回避するためにも栄養価の高い食事を取ることが大切であり、栄養不良に陥っている母子ともに産後のケアが非常に重要になるのです。

(出典:WFP「WFPの母子栄養支援」)

(出典:ユニセフ「世界の飢餓人口の増加続く 最新の国連報告書」,2018)

  • 栄養不良は子どもに様々な障害を及ぼし、発育阻害や低身長、低体重の子どもを生む
  • 飢餓により食糧が十分に手に入らない環境が肥満を生み出している
  • 飢餓や栄養不良は妊産婦のリスクを高め、栄養不良が原因でなくなる新生児の数は80万人

飢餓・栄養不良が深刻な国や地域に対して必要な支援


飢餓や栄養不良が深刻な国や地域は自力ではその状態を改善できないことが多いとされています。

それには様々な要因がありますが、飢餓や栄養不良が深刻な国には外からの支援が必要となります。

飢餓や栄養不良の問題に対し、どのような支援が必要とされ、実際に取り組まれているのかを紹介します。

自立支援

上記のように食糧支援による飢餓の解消も自立支援に繋がりますが、それ以外にも自立のための支援は必要となります。

生活基盤を作り上げるためにはインフラの整備は不可欠であり、道路や井戸、かんがい設備などの建設や修復工事の支援も必要不可欠です。

また労働を呼びかけ、働いた人にはその対価として食糧や、食糧を購入するための現金の配給などの支援も行われます。

災害に強い地域社会の構築

飢餓の原因には気候変動や環境悪化、それに伴う水不足、感染症の蔓延、急激な人口増加など様々な要因が重なって起こります。

また紛争や政情不安などのショックとストレス因子も世界に甚大な悪影響を及ぼす可能性もあります。

このような状況になっても崩れない、ショックやストレス因子の影響も受けにくい環境を作るには、政府や国際機関が強い地域社会作りの視点を取り入れ、災害後であってもより良い社会を再建できるような社会にする必要があります。

学校給食支援

学校給食は子どもたちの栄養状態や健康改善に結びつきます。
それだけでなく、給食があることにより出席率や成績向上にも繋がるというデータも得られているため、学校給食支援も必要な支援方法として確立されています。

母子栄養支援

母子の栄養状態を改善することも大切です。先述したように母子は栄養不良に陥ることで、出産後に死亡するリスクが高くなります。

また母子が最も飢餓にさらされやすいとしており、緊急支援と復興・開発支援のいずれにおいてもこの層に対しての栄養支援や産後のケアなどが支援としては大きな効果を生み出せると考えられています。

  • 飢餓や栄養不良が深刻な国や地域は自力ではその状態を改善できないことが多い
  • 食糧の供給だけでなく、飢餓が起こらないための環境づくりへの支援も必要
  • 学校給食支援や母子の栄養支援や産後ケアなども大きな効果を生み出せる

(出典:WFP「支援活動の柱」)

日本が行っている飢餓・食糧問題への支援とは?


ここでは日本が行っている飢餓・食糧問題への支援を紹介します。

国際支援機関への資金拠出

日本では国連世界食糧計画(WFP)や国連食糧農業機関(FAO)などの国際支援機関を通じて、拠出を行うことで食糧支援をしています。

2015年には国連WFPの人道支援活動に対し、1億2,262万米ドルの拠出金を供与。

日本の拠出金はアフリカ・アジア・中東の27か国で弱い立場にある人々に必要な食糧と栄養を届ける支援活動に充てられたとされています。
(出典:WFP 「日本政府、27か国に国連WFPを通じて多額の食糧支援」,2015)

農業分野における技術協力

日本は農業の分野で豊富な知識や経験を持ってるため、飢餓で苦しむ人々や農業を主とする貧困国などに技術協力を提供しています。

例えばアフリカにおけるマメ類・イモ類の生産性向上のための研究開発を行い、その普及を支援する活動や、気候変動による農業生産環境の変化に適応した持続可能な農業栽培技術の開発などの支援です。

これらをアジア各地やアフリカで普及し、農業生産力の向上を促しています。

  • 日本ではWFPやFAOなどの国際支援機関を通じて、拠出により食糧支援を行っている
  • 2015年には国連WFPの人道支援活動に対し、1億2,262万米ドルの拠出金を供与
  • 飢餓で苦しむ人々や農業を主とする貧困国などに技術協力の提供も行う

(出典:農林水産省「平成31年度ODA予算等概算決定の事業概要」)

飢餓・栄養不良の人々に対して私たちができること


飢餓や栄養不良の人々に対して国や機関が様々な支援・取り組みを行っています。
私たちもほんの少しの行動でできる支援があります。

世界の現状を知る

世界の現状を知ることは何よりも大切です。行動を起こすにしても、できるだけ正しくどのような状況なのか知ることは、どのような行動、取り組みを行うべきなのか考える上での必須事項です。

なぜ飢餓や栄養不良が起こるのか、どのようにしたら改善できるのか、これらが私たちができる支援に繋がる第一歩になるのです。

支援を行う団体・組織に寄付をする

支援を行う団体や組織に寄付をするのは、飢餓に苦しむ人々を間接的に支援することに繋がります。

支援を行う団体の活動資金は寄付や募金が主となっています。

寄付金や募金が多く集まれば、それだけ多くの人を助ける支援が行われるのです。

ボランティアに参加する

ボランティアとして支援を行うには現地へ直接赴く海外ボランティアと、日本でできるボランティア活動があります。

海外ボランティア

海外青年協力隊やNGO・NPOが募集するボランティアへの参加は、現地に赴き直接的に支援を行うことが可能です。

海外でボランティアを行うには、申込みが必要です。ボランティアを行う国や内容などにの詳細について、一度調べてみると良いでしょう。

日本でできるボランティア

NPOなどの非営利団体は国内でイベントなどを行うところもあります。

支援活動の認知の普及や募金を集めるなど、イベントの準備や開催のボランティアに参加するのも間接的な支援に繋がります。

世界の飢餓や深刻な問題を広めるイベントもあるため、参加する人に現状を知ってもらう手助けができることもあります。

情報を発信・拡散する

情報を発信、そして拡散することも私たちにできる支援です。

例えばSNSやブログでは、多くの人に情報を拡散することができます。拡散した情報がきっかけとなり、行動を起こす人がいるかもしれません。

自分が行動を起こすことで、周りの人を巻き込み支援の輪を広げていくことにもつながります。

  • 世界の現状を知り、どのような行動、取り組みを行うべきなのか考えることは大切
  • 支援を行う団体や組織に寄付をすることは飢餓に苦しむ人々を支援することに繋がる
  • ボランティアにより直接的、あるいは間接的に飢餓に苦しむ人々を支援することができる

世界の飢餓の現状を知ったうえで私たちができる支援とは


災害や紛争、貧困などが原因で、世界の飢餓は深刻な状態となっています。

飢餓は、栄養不良や母子栄養不足による妊産婦のリスクが高まるなど命にかかわる問題です。

飢餓により命を落とす人々を一人でも多く救うためには、課題解決に取り組む方々や団体の存在が不可欠であります。しかしながら、継続した活動をおこなうためには資金や人材がまだまだ足りていません。

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