角田大河の死について - 関内関外日記

角田大河の死について

2023年、おれは角田大河が絡む馬券を99レースで25,300円買って18,280円の払い戻しがあった。回収率は72%だった。

 

2024年、おれは角田大河が絡む馬券を62レースで17,200円買って18,170円の払い戻しがあった。回収率は106%だった。

 

2024年の記録は更新されることがない。今後いっさい更新されることはない。

 

角田大河が自殺したのではないか、という情報を知ったのは増田だった。増田からすぐに5chに飛んだ。藤田伸二のXを見た。どうなのか、これは。おれには判断できなかった。

 

角田大河の不祥事。競馬場の芝コースに自動車で乗り込んだ。長い騎乗停止が予想された。このごろ、騎手は不祥事続きだった。山口勲、的場文男、岡部誠と地方のレジェンドたち。そして中央の水沼、松若ときて、角田大河だった。なにが起きているのか。不祥事のリーディング争いでもあるのか。そう思うくらいだった。

 

そう思うくらいだった。そう思うくらいのこと。まさか、そんなことをブコメしたときには、すでに角田大河が死んでいたなど想像もしていなかった。

 

藤田伸二、そして瀧川寿希也の情報。藤田伸二の情報。藤田伸二という存在。元中央競馬騎手、ダービージョッキー、一流の騎手だった。いまは、なんというべきなのか。信じられるのか。よくわからない。ただ、「信じられない」と切って捨てるにはやはり藤田伸二という名前がある。鉄道事故の報道はたしかにあった。ただ、身元については触れられていなかった。五分五分くらいに思っていた。

 

それにしても、だ。もしも生きているなら、関係者が、スポーツ新聞含む競馬メディアのだれかがつぶやいてもいいだろう。それがないのは不自然だと思った。その不自然は、あくまで生存説に立ったものだったが、おれは生きていてほしいと考えていたから。

 

ただ、なかには生存を主張する自称関係者や、父親である調教師とやりとりした個人馬主の話なども出てきた。よくわからない。

 

やがて、デイリー新潮が記事にした。行方不明らしいという記事だった。ネットの憶測の域を出ないが、それでもJRAに取材はしていた。おれはこれで、競馬メディアからなんらかの反応があるんじゃないかと思った。結果、なかったが。

 

そして、北海道のメディアが、鉄道自殺者が滋賀県栗東市の二十代男性だと報じた。ほとんど決定的じゃないかと思った。

 

角田 大河騎手の逝去 JRA

本会所属騎手 角田 大河(つのだ たいが)殿(21歳)のご逝去につきまして、謹んでお知らせいたします。

決定的になった翌朝、公式発表があった。これが全文だった。詳細については触れられていなかった。ただ、もう詳細はわかっている。

 

最初に憶測の情報が出てから、ほぼ一週間、おれは角田大河の生死を気にしていた。行方不明なら行方不明で、競馬メディアが報じられないものかとも思った。しかし、今思えば、本当に行方不明ならば行方不明で、メディアの報道によってなにかがあってはいけないという判断もあるだろう。鉄道事故の情報があっても、ことがことだけに報じられなかったのかもしれない。

 

それにしても、そうだったらそれで、訃報が公式情報になった時点で、「報道を差し控えていた」くらいの言明はあっていいと思う。それは思う。

 

そんなことは、どうでもいいことではある。角田大河は死んだのだ。なぜ死を選んだのかももうわからない。永遠にわからない。なぜ馬場に自動車で乗り入れたのかもわからない。5chなどでは「躁鬱」という言葉が散見されたが、さてどうだろう。おれはまさに躁鬱病の当事者だが、もしそうであれば朝起きなくてはならない騎手という仕事自体できていなかったように思う。が、一時的な躁状態、鬱状態というものであればありうるかもしれない。おれにはわからない。

 

おれは角田大河を買っていた。買えるほうの騎手だった。買えるほうの騎手が死んでしまうのは悲しいし、すべての人間の死はさみしい。たとえ中央競馬の騎手という立場を失っても、馬に乗れるのだから、いくらでも生きる道はあったはずだ。中央競馬に戻ることもできたろうし、もっとさまざまな道があったはずだ。なにせ、馬に乗れるのだから。

 

でも、こういうことを言ってもすべてはむなしい。おれは二度と角田大河の馬券を買えない。