このご時世、ライブに行った。どのご時世かというと、コロナウイルスのオミクロン株BA.5大流行のご時世である。実際おれは、コロナによってくるりのライブをキャンセルしたことがある。
去年のことである。去年と今年で、なにが同じでなにが違うのか。よくわからない。よくわからないが、今年はキャンセルしようという話にはならなかった。「なんとなく大丈夫だろう」という心理が強くなっているのかもしれない。
そんなことはどうでもいい。
ひさびさの、くるりのライブである。配信を見たりしたが……やはりライブハウスの音は違う。腹に響く。オールスタンディングのクラブチッタ。キャパの半分とは言わないが、ちょっと余裕のあるSOLD OUT。このくらい空間があったほうがいい、などと言うのもよくないか。
さて、ニューアルバムを引っさげて、というわけでもないライブツアー。どういうセットリストでくるのか? というところ。
さあ、最初は? 「Bus toFinsbury」。京都から来た。おれはこないだ京都に行ったばかりだ。そして、「目玉のおやじ」、「コンバット・ダンス」……?
これは配信で言ってた、マイナーな曲ばかりのライブ? と、思ったら、十曲終わった段階のMCで、「くるりのファンでも三割知ってるくらい」みたいなことを言う。もう、そんなセトリ。たしかに聴いてみればサビを口ずさむことはできるが、「曲名は?」といわれても「え?」となるものばかり。いや、今どきの音楽の聴き方で曲名を覚えにくくなってはいるけれど。でも、おれは一応アルバム全部持ってるんだ。まったく知らんのはないだろう。
と、思っていたら、たしか二度目のMCのあとで岸田繁が「自分には思い入れのある曲」と曲名を告げて、演奏をはじめて……「小さい拍手」と言って客を煽った(というほどのことではないけど)、「TIME」という曲。これ、知らんかった。えー、なんだろうって、終わったあと調べてみたら「Remember me」のマキシシングルのカップリング曲じゃねえの。シングルは押さえてないわー。負けました。つーか、勝ち負けじゃあないけれど。なんかしっとりした曲だったような気がする。気になる。まあ、そんなの配信なりサブスクなりですぐにゲットできる時代か。
まあ、そんなんで、前半からかなり激しめの存在は地味な曲からはじまり、有名所を小出しにしつつも、激シブの選曲という展開。長くやっているスタッフも「新曲ですか」と聞いてきたとか話してたぞ。ほんとかしらんけど。ただ、ライブでほとんど演ったことない曲が多いのは確かだ。レアだ。
一方で、ライブでよくやってるなーというのは「ブレーメン」、「モーニング・ペーパー」、「Tokyo OP」(おれはこの曲を聴くたびに幻のオリンピックを思い出す)。「上海蟹」。メジャーどころは教科書に載る「ばらの花」、「ハイウェイ」、「ロックンロール」あたりか。あとはもう、ライブ行って確かめてください。
でね、それにしてもね、なんというかね、岸田繁の歌の迫力がすごかったね。ここ一、二年のインタビューで歌い方が変わったみたいなこと言ってるけど、ますます「歌唱!」という感じになってきている。昔より上手だの下手だのではなく、なんか歌い方が違うんよ。情念をすごい込めているというか。抑揚というか、なんかおれ、音楽知らんからいい言葉で説明できないけど。
だからもう、何回か生で聴いているおなじみの「上海蟹」も今までに聴いたことがない感じだったし、「街」の迫力よ。今までのライブの中で、一番すげえ歌じゃないかと思った。曲としてすごかったのはあのライブのあれ、というのはあるけど、歌の凄みみたいなのは、今日が一番じゃねえのか。「青い空」もよかったなー。
いや、まじで、いきなり特殊な新楽器を使ったり(タモリ倶楽部かと思った)、どっか完全にマニアックなところに行ってしまいそうなところもありながら、ロックンロールの本道みたいなところを「どうや!」って決めて帰るところ、くるりかっこええのよ。常に変わりつづけつつも、どっかに行ったきりにならないところがすごい。ファンサービスも忘れない(いや、有名曲を演るのがサービスというわけじゃなく、いい曲はいい曲だし、おれは「ハイウェイ」聴けて満足だし)、そういうところよ。
というわけで、「何やるのかわからないから、行こうかな」というくるりファンも、何やってるのかわからない可能性があるので行くべきだし、くるりそんなに知らない人もいろんなタイプの曲聴けて楽しいと思うし、まあ、行け。行ってトリコロールタオル買え。クオリティーティーシャツも買え。以上。
↑とりあえずこれで「有名曲」はおさえられるんじゃないだろうか。
↑「昔、京都音博に行ったら、観光シーズンでビジネスホテルが一泊三万円だった」とか話している人がいた。京都こわいな。