200gで10,000円の和牛ステーキを喰らう - 関内関外日記

200gで10,000円の和牛ステーキを喰らう

200g10,000円の肉をいただいた。おれに贈られた和牛券である。京丹波平井牛である。ふだん、100g78円とかのカナダ産豚肉ばかり食っているおれには、かなりハードルが高い代物が来たといっていい。ただ、ステーキ肉を選んだのはおれだ、おれだ、おれだった。

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贈り主は船橋の人である。船橋の人はときどきおれにお恵みとともにある種の課題を与える。この肉もそうであった。

まず、クール宅急便で届いた。冷凍の肉である。これをどうするか。解凍する。どうやって? 説明書によれば前の晩に冷蔵庫に入れろという。冷蔵庫でじんわり解凍しろという。なるほど。が、冷蔵庫で一晩と半日、なんかまだ固い感じがする。とはいえ、常温で解凍するなとある。しかしながら、焼く前には常温にしておけという。おれは困った。困って、冷蔵庫から出して押してみたり、戻したりしつつ、とりあえず一時間前くらいに出すことにした。

ソースはどうする? いい肉は塩コショウだけでいいのか? よくわからない。スーパーの肉売り場の、普段寄り付かない牛肉のところを見てみると、「宮のタレ」の使い切りパックがあった。「宮のタレ」……ネットでたまに見る、北関東人のソウルフードだ。とりあえず、これを買った。肉にちゃんとステーキソースが添付されていることに気づかずに。

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約2人前。おれは独身である。肉は一人で食う。そこで、ステーキには付け合せのようなものが必要ではないかと思う。「あ、セブン-イレブンにそういう冷凍の何かがあった」と思った。

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グリル野菜……、ちょっと思っていたのとは違った。思っていたのは、ブロッコリーとニンジンとかの洋風野菜の冷凍。でも、選択肢はない。これをレンチンして、さらにフライパンに投入して、「宮のタレ」をかける。それしかない。

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とはいえ、本命はこいつである。こいつ呼ばわりなどできる身分ではないが、どうしたものかわからない。「ちょっと馬券で勝ったからステーキ肉でも買うか」といってアメリカンなりカナディアンなりオージーなりといったステーキ肉を買ったということすらない。そこに和牛のステーキは重すぎる。だが、焼かねばならぬ、なにごとも。

で、とりあえずフライパンで肉についていた牛脂を温めつつ、野菜要員をレンチンした。レンチンして、フライパンに入れた。そして、宮のタレを投入した。ここまでなら気が楽だ。問題は肉だ。肉に切れ目を入れて、添付の塩コショウを振りかける。そして、フライパンに投入。

……肉はわりと薄い。薄いが面積はある。わりと簡単に火が通るような感じだ。このあたりは時間との勝負だ。なんとなくいい肉なので、ベリーなレアでいいような気もする。一方で、レアすぎてぬるい肉も嫌だなと思う。難しい。難しいが、肉の色は変わっていき、宮のタレをかけ、ひっくり返さねばならぬ。高い肉をふだんから食べている人間というのは、この決断を常に行っているのか……?

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して、やや生めに焼いた肉を、まな板の上に乗せて包丁で切った。おれはステーキを載せるような平たい皿を持っていない。そして、ふだん冷しゃぶサラダなどに使っている皿に盛った。あまり美味しそうには見えないのは、正直な感想。そして、箸で食ってみたら……。

……、なんか、わかんねー。こんなに柔らかいステーキは食ったことがねえとは言える。言えるが、美味いのかなんなのか、宮のタレなのか、もはや不明である。熱いうちに食わなければと思う一方で、高価なものだからゆっくり食おうなどとも思う。セブン-イレブンの冷凍野菜に宮のタレは合う。だが、果たして、この高級肉に合っているのかどうか、おれには判断できない。そりゃもう美味しいのだが、おれがこの100g5,000円の肉にふさわしい調理をしたかどうかとういところで疑念は尽きない。ついでに、コンビニで一番高い赤ワインが合ってるのかどうかもわからない。

おれは興奮して肉を食い、肉を食って、肉を食い終えた。正解は見えない。もしもこの肉をステーキ職人が焼くような店で食ったらさらに倍だろうか、もっとだろうか。そんなことばかり考えてしまう。「いい肉を焼いて食った、うまかった!」と言えるような人間に生まれたかったような気もする。

来世だ。来世に、このクラスの肉を優雅に味わえる人間になろう。人間に、なるんだ。

 

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