今朝は眠っていたかった、あるいは人類の根底にあるもの - 関内関外日記

今朝は眠っていたかった、あるいは人類の根底にあるもの

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今朝はとても心地のよい朝だった。目覚めがいいというのではない。寝心地がよい朝だ。だから、ずっと眠っていたかった。

右手首のスマートバンドの振動、枕元のiPhone XSの流す寝起きの音楽。どちらも速攻でオフにした。ベッドから降りた。今は目覚まし時計になっているiPhone SE(初代)の数分後のアラームも切った。そして、2つのiPhoneに30分後のタイマーをセットして、またおれは眠り始めた。

暑くもなく寒くもなく、珍しく窓からはいい感じの風がたまに入ってきた。ああ、こんなに眠るのに適した朝はないだろう、というくらいの気分だった。ボロボロでガタガタの寝具もなにも気にならない。最高に眠っていて気持ちいい朝だった。

15分くらいで目が覚めた。iPhoneを見て、残り10分。おれは2つのiPhoneのタイマー設定を20分にセットしなおして、また眠った。それくらい眠っていたい朝だった。

タイマーが鳴る3分前くらいにまた目を覚ました。おれは2つのiPhoneのタイマーを解除した。そして……前に倒れて少し目を閉じた。こんなに寝心地のよい朝なのに。しばらくしておれは起き上がり、歯を磨き、シャワーを浴びて、会社に行った。おれはこれでも律儀な人間なので、精神的な病からくる鉛様麻痺でなければ、快楽のために会社を休むようなことはしない。10分遅刻したけど。

しかし、寝心地のよい朝というのはなんなのだろうか。たまに吹き込む風を心地よく感じるとはどういうことなのだろうか?

もしもおれが、「朝起きてどこか(学校とか会社)に行かなくてはならない」という経験をしていなければ、今朝の寝心地のよさはあったのだろうか。起きる苦しみ、身支度をする面倒くささ、外に出る憂鬱、それを知っているからこそ、おれは朝の寝心地の良さ、二度寝の誘惑といったものを感じるのか。

あるいは、快適な温度、さわやかな風、こういう環境をとても心地よく感じ、寝るべきだと命じる心理というものが、根源的に備わっているのか。雑な進化心理学的な物言いをすれば、そのような状況をたまたま好もしく感じ、たまたま睡眠を選んできた人類がたまたま環境に適応し、少なくともおれという個体までは遺伝を保ってきた。

寒くもなく暑くもなく、適当にいい感じの風が吹いている朝は、眠っていたほうが、なにか子孫を残すのに結果的に有利になることがあった。そうなのかもしれない。そうでなかったやつはみんな滅んだ。いや、しらんけど。

しかしながら、人はどこから来てどこへ行くかといえば、安アパートから出て労働に行くのである。そういう意味では、人類根底の進化の鍵を投げ捨てているといっていい。おれには楽園追放仮説論者的なところがある。

それにしても今朝は眠っていたかった。そのくらい快適な天国が出現していた。環境と人体のすべてが奇跡的にマッチして、ともかく「今、ここで眠るのは気持ちよい」が出現していた。こんなこと、また訪れるだろうか? 訪れたとして、次こそは眠りを選択できるだろうか?

 

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