平成最後の菊花賞を当てる - 関内関外日記

平成最後の菊花賞を当てる

おれは菊花賞が近づくにつれて、ある馬の名前が浮かんでいた。いや、名前ではない、「なんかの重賞でアホみたいな末脚を使った馬」だ。記事や登録馬の一覧を見て思い出した、フィエールマンだ。福島のラジオNIKKEI賞、アホみたいな位置から短い直線を突き抜けてきて二着になった馬。こいつは素質馬だ。そして、あまり体質の強くない馬だ。

ダービー馬ワグネリアンがいない。エタリオウは一つしか勝ち星がない。ブラストワンピースは新潟を経ての異例のローテ。これなら、フィエールマンが勝負になってもいいのではないか。そう思った。たとえ関東馬が過去十年でゴールドアクターの三着しか馬券になっていなかったとしても。

そう思っていたら、金曜夕方発売の東スポの一面がフィエールマンだった。

東スポの本紙が本命を打ってきた。密かに狙っていたのだからあまり目立っては困る。とはいえ、往々にして本命寄りの「本紙」が本命を打ってきたことは、少し強いことではある。無理筋ではない。おまけに鞍上はルメールだ。

大きなレースでは、だいたいルメールデムーロを買っておけばいい。……というようなことは、いつもTOKYO FMの「スカイロケットカンパニー」という番組で、マンボウやしろ浜崎美保の間でかわされているやり取りだ。マンボウやしろロードクエストが好きで競馬に入った。浜崎秘書は競馬を知らない。ただ、マンボウやしろがG1の結果を述べるたびに出てくる「ルメール」、「デムーロ」という名前を覚え、「なんでルメールデムーロから買わないんですか?」というのがパターン。

して、今回もそのパターンになった。一着フィエールマン、鞍上はルメール。二着エタリオウ、鞍上はデムーロ。ついでに三着はユーキャンスマイル、鞍上は武豊。あるいは、競馬初心者が騎手の名前から買ったら当たった、というケースが少なくないのかもしれない。

おれはといえば、フィエールマン本命。けれど、ホープフルステークスから買い続けているステイフーリッシュの、あまりの人気のなさに、思わず二頭本命を採用。結果から言えば、余計な出費だったかもしれない。が、ステイフーリッシュのオッズに賭けたい理由もあった。

土曜から11レースも連続で外した。当ててもトントン、あるいはガミるタイプ、つまりはわりと本命~中穴狙いのおれにとって11レース連続で馬券にならないというのは、結構なダメージだ。だから、あまりに低いステイフーリッシュをけっこう買い足した。夢を買った。もちろん、ステイフーリッシュの可能性も弱点もそれなりに知っての上だ。贔屓の馬だからだ。

が、ステイフーリッシュは来なかった。

来たのはフィエールマンの方だった。「やっぱりルメールデムーロかよ」という決着になった。おれは万歳だ。単勝馬連、ワイド。ついでに三連複がついてくればよかったが、さすがにユーキャンスマイルは五頭ボックスに入れられなかった。エポカドーロ、ジェネラーレウーノ、エタリオウ、そしてフィエールマン、ステイフーリッシュ。エポカドーロとジェネラーレウーノはどっちか来るだろう。エタリオウは連対しそうだ。そして本命の二頭。ただ、武豊はこのところ三着に来る。そういう理由でワイドには入れた。悪くない配当だった。

とはいえ、レース展開を読めていたかどうかというと、読めていなかった。アイトーンが逃げて、メイショウテッコンが続き、エポカドーロやジェネラーレウーノが先行して、最後は持久力勝負みたいになると思っていた。ステイフーリッシュがありえるならば、先行からの粘り込み。ただ、展開と関係なくフィエールマンが突っ込んでくる、あるいはルメールがいつものごとく先行馬にしてしまう、そんな展望。

ところが、実際のレースはスローからのヨーイドン。これはフィエールマンに向いたといえる。結果オーライだ。アーモンドアイしかり、これからはレース間隔についていろいろと考えを改めなければいけないかもしれない。

しかしなんだ、フィエールマンの評価というのはどういうものだろうか。三千メートルの菊花賞という特異な舞台で、スローのヨーイドンを差し切った。どのくらい力があるのか。まあ、福島のあのレースでもアホみたいな脚使ってたし、直線の長いコースならもっと、なのか、逆に小回りの方が、なのか。距離適性からして、まだつかめないところがある。

二着はエタリオウ。最強の一勝馬とか二勝馬というポジションに定着するのかどうか。ステイゴールド産駒最後の世代、父の足跡をたどれば、最後は歓喜が待っていることだろう。とりあえずサウンズオブアースくらいの位置には行けるのではないか。

三着は武豊のユーキャンスマイル。母の父にダンスインザダークが入っている、かつての菊花賞血統。それで三着想定の馬券を買った人は上手いかもしれないが、この展開で、というのは予想できたのだろうか。

エポカドーロとジェネラーレウーノは持久戦に持ち込むまでもなく掲示板外。人気していたブラストワンピースはわりと戦える感じ。展開の鍵を握っていたかもしれないメイショウテッコンは、どんな感じになっていくのか。

三冠最後の菊花賞。これからそれぞれの道を歩んでいく。おれは東京の芝二千四百が一番好きなコースだが、こと三歳クラシックについては菊花賞が一番好きかもしれない。中には春の天皇賞を勝つステイヤーがいるかもしれないし、適正距離に戻って輝くマイラーが混じっているかもしれない。

ともかく、これにて牡馬牝馬ともにクラシックレースはおしまいだ。それぞれ、自らの道を歩んでくれ、走ってくれ。楽しみにしているぜ。以上。

 

 

……ちなみに、おれが一番驚いた菊花賞はといえば、ナリタトップロードが勝ったレースだった。失礼な物言いになるが、「まさか渡辺が!」であった。騎手の経験や腕が物言う菊を勝つとは、まったく思っていなかったのだ。いやはや。