「うつ」誘発、たんぱく質? エピジェネティクスってなんぞね? - 関内関外日記

「うつ」誘発、たんぱく質? エピジェネティクスってなんぞね?

 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所(春日井市)は、体内のたんぱく質の一種に、恐怖や不安の増幅、ストレスによる活動低下など、うつ症状を誘発する働きがあることを突き止めた。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120217-OYT1T00116.htm

 とかいう記事を読んで、軽度であるかもしらんが抗うつ剤とか食べてる人間として気になったりもしたりして。でも、「HDAC6(ヒストン脱アセチル化酵素6)」、つーか、タンパク質? あんまり最近よんだ脳内のあれの話に出てくる単語って感じじゃねえな、などと。

 HDAC6の働きを阻害する化合物(HDAC6阻害剤:NCT-14b)を正常マウスに投与したところ、抗うつ様行動が観察されました。また既製の抗うつ薬に対する応答は、HDAC6遺伝子欠損マウスにおいても正常マウスと変わりませんでした。これらのことから、HDAC6阻害剤の作用メカニズムは、既製の抗うつ薬と重複しないと推測されます。

情動のコントロールに影響を及ぼすタンパク質の働きを発見 ~うつ病の病態解明・新規抗うつ薬の開発につながる成果~ - 愛知県

 愛知県の記者発表はこちら。さて、セロトニンにどうこうって話もある。タンパク質? ようわからん。で、HDACとかで検索してみる。

遺伝子の発現は遺伝子の塩基配列によるもの以外にDNAあるいはヒストンに対する後付けの修飾により制御される場合がある(エピジェネティックな制御)。ヒストンはDNAが巻きついているコアヒストン(H2AH2B、H3、H4)とDNAのリンカー部分に結合しているリンカーヒストン(H1)に大別される。コアヒストンのアセチル化はエピジェネティックな遺伝子の制御において重要な役割を担っている

 エピジェネティックな遺伝子の制御?(←だいたい小学校で理科に落ちこぼれた人間はこのくらいしか読めない) エピジェネティックってなんだ? 検索、検索。

 この記事を読んだ感想としては、「猫の写真がかわいい」ということであるが、「エピジェネティクス研究で何がわかるのか?」という、非理系の「で、何の役に立つの?」用の項目があって、「精神疾患の発症や行動異常との関連性」とか言ってるから、今回の記事のあれはこれだろうと推測してみたりして。

 ほんで、どちらかというと癌の方なんかで注目されていたりするようで、「エピゲノム創薬」注目やで、という話である。このあたりの、一般向けの「エピジェネティクスとは」あたりは、なんとなくわかりやすく書かれていて助かる。正確性はしらんが、新聞記事よりは量が多い。

エピジェネティクスの基礎研究は日本でも活発化しており、論文数では日本は世界の上位に位置する。これらの研究成果を活用した、日本発のエピジェネティック薬の創出に期待したい。

 とあるので、今回の記事はその期待に応えるものなのかどうか。

 神経可塑性には脳における遺伝子発現の制御機構が重要な役割をはたしている.とくにうつ病に関してはBDNF(brain-derived neurotrophic factor,脳由来神経栄養因子)の関与が強く示唆されており,ストレスの負荷によってBDNFの発現量が低下し,抗うつ薬の投与によってその発現が回復するといった報告がある1).さらに最近,DNAの塩基配列に依存しないエピジェネティックな遺伝子発現の調節機構と気分障害との関連が着目されている.

GDNFをコードする遺伝子のエピジェネティックな制御がストレスへの適応と不適応を決定する : ライフサイエンス 新着論文レビュー

 そんでほかに、こんなん出てきて、BDNF? とかまた新しい敵が出てきて困るが、なんか関係ありそうな気はする。まあともかく、気分障害みたいなもんは、遺伝子だけが決めてるんじゃねえし、その調節機構みたいなもんに手を入れれば治療になるだろう、みたいなことだろうか。

「我々は今までゲノムを解き明かせば全てが分かる」と思っていたと1990年代にエピジェネティックの可能性を説いたロックフェラー大学のデイビッド・アリスは言う。「しかし、いざヒトゲノムが解き明かされると、ゲノムは入り口でしかなくこれから先に大変な難問が控えていた」とアリス氏は言う。

エピジェネティックスとは分子生物学を考える上での基本的方向転換である。DNAは確かに生物を作る基本骨格であるが、DNAの情報はDNAの上を覆う化学物質の層にコントロールされているのが次第に明らかになった。

このDNA台本の修正はエピミュテーションと呼ばれていて、遺伝子のスイッチを不自然に入れたり切ったりする。別の言葉で言い換えると、DNAと言う生命の台本が重要なのではなくて、その台本を包む包装が重要であるという、生物学的、遺伝学の革命的思考だ。

http://mui-therapy.org/newfinding/epigenetics.html

 で、Newsweekの記事なんかが見つかって、たいへんわかりやすい。で、最後にこんなことが。

メンデルの法則に逆らう所か、ダーウィンの進化論まで揺るがすことになる

 ようわからんが、そうなの?

 そうしたらエピジェネティクス進化論というような言葉が見つかったりして。

 「獲得形質の遺伝は認められない」という「セントラルドグマ」の考え方の過大視に対して、細胞レベルでの「遺伝子の後天的修飾」研究が行われていると。

このような研究は「エピジェネティックス」と呼ばれており、各国で盛んに研究が行われており、後天的修飾の起きる範囲は一体どの程度なのか(どの程度にとどまるのか)、その仕組みはどうなっているのか、といったことが日々解き明かされようとしてはいる。

 などという。
 というわけで、理科のことはよくわからん(古舘がベンゼン環知らないのを馬鹿にしてた連中を<censored>したくなるレベル)からなんともわからんが、文系脳の恐怖的にはこんなふうに記事を読み、情報を辿りましたと。まあ、つまり、なんというか、根本的な機序や仕組み、言及されているものの大きさ、そんなものまったく分からず、言葉を追っかけただけ、というような。比喩や類推、連想、そういうレベルであって、これはわりかし古代人が薬草を使い始めたきっかけに似ているかもしれないし、これを100万倍くらい高度にしたらソーカル事件的なものになるのかなとか思った。おしまい。