横浜ブルク13にて。映画館へ行くのは今年二回目で、一回目は同じく園子温作品『恋の罪』。
僕は非常に、人間って言うのはこんなもんだよという絶望的な姿を丸裸にするような映画を撮り続けてはいたんですけども、それだけではもうやっていけないなというのが3.11以降の自分の映画のあり方で、それをやっぱり「ヒミズ」は自分の中の映画史、映画を作り続けてきた中で非常に転向したというか変わらざるをえなかったということです。それは1ついうと絶望していられない、へんな言い方で言うと希望に僕は負けたんです、絶望に勝ったというよりは希望に負けて希望を持たざるをえなくなった。
http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/800/96025.html
さて、『恋の罪』より先に作品の存在を知ったのは『ヒミズ』だ。上のNHKのインタビューをたまたま見て、「希望に負けた」という言葉にいくらかショックのようなものを受けた。いったいそれはどのような世界なのだろう。あのラーメンが獣臭い『冷たい熱帯魚』や『恋の罪』とはまったく違うものなのだろうか? それとも? と。え、ラーメンが獣臭いの意味がわからない? 俺にもよくわからないので、勝手に想像しろ。
……というか、まあ現国のテスト的に言えば「人間っていうのはこんなもんだよという絶望的な姿が丸裸になったラーメン」というところだろうか。どんなラーメンだ。
で、結論から言うとどうだったのだろう。やはりラーメンは獣臭かった、が、園子温の言う敗北も見て取った。じつにわかりやすく、最大の効果でぶっこんできたので、俺は少々やられてしまったという気にもなった。
すばらしい主役二人、でんでん無双と躍動する窪塚くん
と、俺絡みの話になると長くなるので、先に映画の感想を。というか、もしも観に行こうかどうか迷ってる人間がいるならば、迷わず行くべき、行けばわかる、わからんかもしらん。しかし、劇場のスクリーンに映る3.11大震災の廃墟の風景だけでも圧倒されるものがあるだろう。元のストーリーがどのようなもので、どのように3.11が組み込まれたのかわからないが(ちなみに原作未読です)、こうでなくてはならないようなものと思えた。
そして、どこか海外で賞をもらったという少年と少女もすばらしい。少年の方はバナナマンの設楽のような雰囲気もあるが、行き詰まり感もいきいきとした殺伐さも、病的ななにかも見せてくれた。そして、少女ときたら、彼女自身の境遇もあるというのに、彼を気にかけること、だんだん映画『プレシャス』のマライヤ・キャリーに見えてくるといっていい。パンツの見えっぷりなども豪快であって、すばらしい。
そしてさらに、でんでんである。いや、俺、キャストとかまったく知らないで見に行ったから、「出てきたー!」みたいになって、すげえよかった。このでんでんが、まあ、なんというか、いやはや。つーか、吹越満と渡辺哲と、なにかこう、なにか転生だとかパラレルだとかいろいろ思ったり思わなかったり。
そしてそして窪塚くんなのだね、窪塚洋介。これまた驚いた。なんというか、いかにも昔の窪塚くん的な役すぎて、ある意味はまりすぎてて、そこんところだけ別作品みてえになってたような気すらするが、でもいいんだ。なんか変な華があるというか、動いてるの見てるだけでいいという気になる。まあ、俺は妙に窪塚くんに惹かれるところがあるんだ(躍動する窪塚君をもっと見たい〜『凶気の桜』〜 - 関内関外日記)。というか、映画とか、事前にキャストとか知らないで行ったほうが楽しめるんじゃないのか? などととくに映画ファンとも言えない俺は思ったり思わなかったり。
で、「病気」な俺が見た『ヒミズ』
で、まあこの映画は自分の身の上にあまりに引き寄せられるというか、一致するところがありすぎて前のめり気味で見てしまうところがあった。俺はいまだに「あのとき親父殺しておけばな」などと普通に思っているような人間であって、もちろん住田に感情移入するところもあるが、それよりも他に出てきたたくんさんのキチガイの皆さんにも、だ。心の友か、おまえら。俺は心の中に宅間守みたいなのがはっきりと居座ってるし、そもそもなにかこう、人間として大切とされているなにかがスコーンと抜けていて、それを隠しつつ生きるくらいの適応力はあるが、まあ、抜けている。この映画でも、「そこは妊婦の腹いっとけよ!」とか、普通に思ったりしたし、普通に病んでいるのだろう。でも、内心が俺のようなやつというのが、そんなに少なくないような気もするし、じっさいにやらかすやつの割合がそれほどでもないだけで、劇場の半分、いや、四分の一くらいはあのシーンで同じこと思ったんじゃねえのか? 高く見積もり過ぎたか。哲学的ゾンビ(の誤用)じゃないが、そこんところがいまいち想像つかない。あと、関係ないけど、さっき見た『平清盛』で松山ケンイチが「俺は誰なんだ!」とか言いながら道の真中で叫んでて、『ヒミズ』マターかと思った。
それはそうとして、さらに言えば一人一殺のテロリスト志向みたいなものもずっと心に抱いている。本音を言えば、紙袋に包丁入れてうろついてるような人間で(本当に持ち歩いてないけど)、なにか揉め事があったりしたらすすんで巻き込まれて殺したり死んだりしたいというような破壊願望と希死念慮はひときわ強い。こないだも、駅で降車するときにおっさんが別のおっさんに「今おれをおしのけたろ!」「おい、こら」「おい、お前だ」って怒鳴りながら真後ろをヒタヒタついてったのを見て、俺はおもしろくなってきたと思って、露骨にそれをiPhoneの動画で撮るふりしながらついてったりしたりとか、わりとあやうい。
まあともかく、ここ二ヶ月くらい繰返し書いてきたことだけど、希死念慮、自殺願望vs殺傷事件みたいなのが俺の目下のところのテーマであるといっていい。いくらでも中二病的といわれてもいいし、素振りだけのやつと思われてもいいが、どうにもまったく行き着くのはその二択だといっていい。まあ、9:1くらいで自殺だけど。
が、このあたりはなんといえばいいかわからぬが、プッシュ通知的に「死のう死のう」と来ていたときに比べれば、こちらからサーバにアクセスしてみて、「やっぱりやばそうです」と返ってくるくらいの余裕はできている。問診票で問われれば「死にたいと思う」と思えるくらいの、余裕といえるかどうかわからない余裕だ。多分、薬のおかげだろうと思う。
そうだ、劇中で幾度か示唆されていたように、病気なのよ、俺は。おまえ(でんでん)に言われんでもわかっとる。だから、病院に行ったのだったし、だいたい上に書いてきたような内心も吐露してきたわけだ。そして、俺のほのかな希望というものがある。映画『ヒミズ』では直接描かれなかったそのさきのことだ。あまり口にするとまったく消えてしまいそうで言えないこと。
すなわち、一からの、いや、ゼロからのやり直し願望。リセット。これである。
あるいは。
ぼくに施された処置というのは、そういうものだった。ぼくの脳みそをクランクを抜いて、ボトムブラケットも抜いて、ひどくすっきりしてしまった。ぼくはジョンやレノンから別れても、うまくやっていけるのだと、そう説明されて、ボトムブラケットの抜けた穴を見て、すばらしいグリースを塗らければいけないと思うように言われた。ぼくはよごれを拭きとったまっさらなボトムブラケットの抜けた穴になって、新しいグリースを塗らなければいけないのだと、そのようなことを言われたのだ。
『カッコーの巣の上で』で逃げていくあいつより、むしろ脳みそを半分切り取られたりするくらいの矯正を受けて、まっさらになって、楽になってしまいたい、そういう希望だ。はっきり言ってしまうと、この日々の報われない上に過酷な労働(もう年度末が始まってる!)をしつつ、何週間か一度通院して、話して、薬食って、そんなものでは足りないという気がしている。
それこそ、ちょっと誰かぶっ殺してしかるべき場所に行かなければいけないのではないだろうか。そういえば、今は亡き村崎百郎もそんなことを言ってたっけ。少年法についてだが。ああ、しかし、俺はなにか、下手にこの社会に適応してきてしまったゆえに、中途半端な生地獄を味わってる。顎の小ささからくる睡眠時無呼吸症候群で昔から睡眠に障害があって、さらに発達障害、AD/HDくさくて、背も低くて膂力もなくて、二次障害っぽい強迫性障害と抑うつ状態出ても、かといってそんなものは、まあ社会から見たらぜんぜんたいへんな話ではなくて、もっと困っている人がたくさん不十分な支援しか受けられていない現実がある。はっきり言って自分でなんとかしろよというレベルかもしれないのだし、やはり他人に迷惑をかけないように自裁するしかないのだろう。
……っていうのが、思考の袋小路、だめな方、だめな方へ行こうとする「病気」特有のものなのだろうか。でもなんだろう、今年の1月1日のあの白くて小さな犬みたいに、周りが助けよう、やばい方に行かせないようにしようって、いくら努力してもすり抜けて行って、結局ああなってしまう。俺はあのとき、自転車を漕ぎながら、どこかどうにもならないような気もしていて、それは今、俺が俺に感じていることでもある。また、『ヒミズ』を見ながら、住田くんに対して感じていたことでもある。
あの犬は死んだ。俺はまだ生きてる。住田くんは? そして、これからの俺は? 俺は、希望に敗北することがあるのだろうか。ただ、希望の先でがんばることにひどく怯えていて、引くべき引き金があれば、引いてしまうのだろうと、今は、思う。おしまい。
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この映画のソーセージおすすめシーンが、『ヒミズ』のボートハウス宣伝連呼に少し被った。
これはあんまり覚えてないな。つーか、もっと観るべきやつあんだろ、という話だが、楽しみはとっておく。というか、近々観よう。
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原作は知らない。というか、この作者の絵柄が苦手で……。