特定技能「外食業」で外国人を雇用したい!デリバリーでも可能?詳しく解説
2号の創設などで注目されている特定技能の対象分野の一つに、「外食業」があります。日本人同様に働くことができますが、外食業のどんな職種につくことができるのでしょうか?
業態や職種、在留資格申請のための試験、採用フローなどについて詳しく解説します。
監修:行政書士/近藤 環(サポート行政書士法人)
在留資格に関するコンサルティング業務を担当。2019年に新設された「特定技能」も多数手がけ、申請取次実績は年間800件以上。 行政書士(東京都行政書士会所属 /第19082232号)
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特定技能「外食業」とは?
外国人が日本で働くためには、在留資格の中でも就労が認められている通称「就労ビザ」が必要です。就労ビザは複数の種類があり、そのうちの一つが「特定技能」の外食業分野(以下、特定技能「外食業」)です。
特特定技能は日本の深刻な人手不足を補うために創設された制度・在留資格です。
特定技能「外食業」分野においては、レストランなどのホール業務からラーメン店の調理スタッフなど、外食業とその関連業務に従事することが可能です。
特定技能には1号と2号があり、「外食業」分野は1号のみでしたが、2023年秋に2号が創設されました。業務範囲や取得要件などについては、後ほど詳しく解説したいと思います。
● 在留期間:1号は通算で上限5年まで。2号は在留期間更新の回数に上限なし
● 一定の専門性・技能を有しており、即戦力として働ける
● 技能水準:試験等で確認
※技能実習 2 号を良好に修了した者は試験等免除
● 日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認
※技能実習 2 号を良好に修了した者は試験等免除
● 家族帯同は基本的に認められていない ※2号は可能
● 受入れ機関または登録支援機関によるサポートが義務付けられている
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外食業界の人手不足と特定技能「外食業」分野ができた背景
日本の外食産業は、これまで人手不足の状況が続いてきました。
厚生労働省のデータによると、2024年4月の外食産業における有効求人倍率は「3.56」で、全産業の平均有効求人倍率である「1.16」と比べて大幅に高い数字であると言えます。
また、外食業を含む「宿泊業、飲食サービス業」の欠員率は、3.8%と高水準にあります。
この人手不足を解消するためにさまざまな手段が模索されていますが、その一つとして外国人労働者の活躍が期待されています。
外国人雇用状況の届出状況によると外食業で働く外国人労働者の構成比は留学生などの「資格外活動」が全体の半分を占める55%と最も多く、次いで永住者などの「身分に基づく在留資格」が22%、特定技能や技能、技術・人文知識・国際業務などの「専門的・技術的分野」が18%となっており、多くは留学生などのアルバイトに頼っている状況です。
しかし、資格外活動は就労できる業務内容や時間数に制限があり、日本人のように働いてもらうことは難しい状況です。飲食業界の深刻な人手不足に対応するために、特定技能制度対象12分野(当時は14分野)に外食業が設定されました。
外食ニーズの高まりにより、特定技能「外食業」の外国人が拡大中
2019年に創設された特定技能は創設当初こそ在留者数が少なかったものの、2022年から大きくその数を伸ばしています。
出入国在留管理庁の統計によれば、特定技能「外食業」の外国人は2023年12月末時点で累計13,312人、1年前の2022年12月末時点から約2.5倍の急激な増加をみせました。
これは新型コロナウイルス感染拡大の影響で発令されていた緊急事態宣言が解除され、飲食店では通常営業が再開したことが大きな要因です。飲食業会はもともと人手不足だったにもかかわらず、さらに人手不足となりました。また、新規入国の制限により留学生の数が減ってアルバイト採用ができないことも一因でしょう。
▼飲食業界の人手不足についてさらに詳しく知りたい場合は以下の記事をご覧ください。
では、特定技能「外食業」ではどんな業務が可能なのでしょうか。
特定技能「外食業」で可能な業務
特定技能「外食業」の外国人は、外食業に関わるさまざまな業務に従事できます。
外食業全般(飲食物調理、接客、店舗管理) 〔1業務区分〕
一例として、調理やホールでの接客業務、店舗管理や原材料の仕入れなどの業務全般が可能です。病院などの給食施設で働くこともできます。
特定技能「外食業」は、外食業の範囲内であれば、他の就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)のような業務制限がほとんどありません。日本人を雇用する場合に近しい業務ができ、アルバイト雇用とは違い継続的な育成・スキルの蓄積などを行っていくことができます。
また、特定技能「外食業」の受け入れは日本標準産業分類のうち、「76 飲食店」「77 持ち帰り・配達飲食サービス業」に該当する飲食店であれば可能です。大手チェーンでも個人経営でも問題ありません。想定される業態は以下の通りです。
食堂、喫茶店、レストラン、ファーストフード店、料理店、仕出し料理店、テイクアウト専門店(店内で調理した飲食料品を渡すもの)、宅配専門店(店内で調理した飲食料品を配達するもの)
特定技能「外食業」でフードデリバリーは可能?
特定技能「外食業」の外国人が、業務内容のうちの一つとして、デリバリー業務を行うことは可能です。調理も接客もないデリバリーのみの業務に従事することはできません。
ちなみに、2023年4月現在、その他の就労ビザにおいても、フードデリバリー業務のみをさせることは不可能です。
▶参考:外食業分野における外国人材の受入れについて|農林水産省
ホテル内のレストランでも就労可能
宿泊施設の配膳・調理の業務のみであれば就労可能です。
例えば、料理の配膳、盛り付け、洗い物や皿のセッティングが該当します。
ただし、ホテルのフロントやベッドメイキングなどの業務は行えないため、ご注意ください。ホテル業務全般を行いたい場合は特定技能「宿泊業」分野が該当しますので、そちらの外国人を採用すると良いでしょう。
幅広い仕事をこなせる特定技能「外食業」は期待値が高い資格
一般的な日本の外食業専門の在留資格は、特定技能「外食業」しかありません。
在留資格「技能」も外食業には従事できますが、外国料理の専門店が対象で日本料理店では働けず、調理以外の業務も基本的には従事できないという制限があります。さらに申請のハードルがかなり高く、10年分の在職証明書が必要になることに加えて、職歴の中身も審査されます。難易度の高い調理ができなくても問題ない職場も多く、そのような職場に能力の高い在留資格を雇用することはミスマッチを生んでしまいます。
比較的、取得要件が低く外食に関わるさまざまな業務に対応でき、日本人同様の活躍が見込める特定技能は期待値の高い在留資格といえるでしょう。
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受け入れ企業の要件
外国人を雇用する企業にも要件があり、満たす必要があります。
特定技能外国人を雇用する際、企業は以下の基準と雇用後の義務を果たします。
① 外国人と結ぶ雇用契約が適切(例:報酬額が日本人と同等以上)
② 機関自体が適切(例:5年以内に出入国・労働法令違反がない)
③ 外国人を支援する体制あり ※登録支援機関に委託可
(例:外国人が理解できる言語で支援できる)
④ 外国人を支援する計画が適切
(例:生活オリエンテーション等を含む)
【受入れ機関(企業)の義務】
① 外国人と結んだ雇用契約を確実に履行(例:報酬を適切に支払う)
② 外国人への支援を適切に実施
→ 支援を登録支援機関に委託も可。全部委託すれば【外国人を受け入れるための基準】の③も満たす。
③ 出入国在留管理庁への各種届出
【協議会への加入】
特定技能制度の適切な運用を図るため、12分野ごとに所管省庁が設置する機関が協議会です。
特定技能外国人を受け入れられるように、構成員の連携、制度や情報の周知、法令遵守の啓発などを行う役割を担います。
協議会への加入タイミングは特定技能の在留資格申請前※となっています。 ※2024年6月15日以降
特定技能「外食業」1号の取得要件・方法
特定技能「外食業」の在留資格を取得する方法と、雇用するまでの流れについてご紹介します。
特定技能1号の在留資格を取得するルートは以下のどちらかです。
ルート1:特定技能試験に合格する
「外食業特定技能1号技能測定試験」と「日本語能力試験」に合格する必要があります。
ルート2:技能実習2号を良好に修了し、特定技能1号へ移行する
技能実習2号を良好に修了、または技能実習3号の実習計画を満了することで在留資格の変更申請が可能です。
外食業分野への移行対象は「医療・福祉施設給食製造職種」のみ。
国籍は関係ありませんが、海外現地で試験が実施されているかどうかや国ごとに独自の採用ルールがあるため、注意が必要となります。短期滞在ビザで来日し、日本で受験をする方法も可能です。
各国の独自ルールなどについてはこちらの資料をご覧ください。
ここからは具体的に見ていきましょう。
「外食業特定技能1号技能測定試験」と「日本語能力試験」に合格する
特定技能「外食業」を申請するためには、外国人本人が以下の2つの試験に合格しておく必要があります。
合格した外国人でなければ在留資格申請は許可されません。
①外食業特定技能1号技能測定試験
試験科目は「学科試験」と「実技試験」の2科目70分で行います。
試験の内容は外食業の仕事内容についての技能水準を問うもので、学科試験は外食の業務に必要な日本語能力を、実技試験は正しい行動の選択と作業計画を立てられるかの能力を測ります。
試験は1年通して3回、大まかに3月、8月、11月頃に行われ、事前のマイページの申請が必要となります。日本国内会場と海外の会場で実施されていて、海外はフィリピン、インドネシア、ネパール、ミャンマー、カンボジア、タイ、スリランカで実施されています。
申し込みや日程の詳細は「OTAFF 一般社団法人外国人食品産業技能評価機構」のサイトで確認できます。
②日本語能力試験
日本語能力試験は「日本語能力試験(N4以上)」または「国際交流基金日本語基礎テスト(200点以上)」のどちらかを受験します。どちらを選んでも問題ありません。日本語の能力試験の認定目安は以下の通りです。
N1:幅広い場面で使われる日本語を理解することができる
N2:日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N3:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N4:基本的な日本語を理解することができる
N5:基本的な日本語をある程度理解することができる
日本の四年制大学に通う留学生の多くはN2の取得を目指しており、最難関のN1の合格率は国内外合計で30%程度となっています。
日本語能力試験についてはさらに詳しく知りたい場合は以下の記事をご覧ください。
▼特定技能の試験制度全般については、以下の記事をで解説しています。
外食業特定技能1号技能測定試験の合格率は?
2023年に実施された外食業特定技能1号技能測定試験は合格率64.1%でした。
受験者の8割が合格している農業などと比較すると少し難易度が高いかもしれません。
試験の合格率や各国の実施状況の詳細はコチラからご覧ください。
外食業の特定技能2号について
特定技能2号は2分野のみでしたが、2023年に拡大し、介護以外の11分野で2号を受け入れが可能となりました。外食業も特定技能2号の対象です。
特定技能「外食業」では2024年3月より技能試験が開始され、292人が受験、113人が合格しました。すでに特定技能2号として働き始めている人も出てきています。
特定技能2号は家族帯同が可能で、在留期限の更新回数にも上限はないため、長く働きたいと考えている外国人にとって待望の2号拡大となりました。また、在留期限を更新し続けられれば、永住権を取得できる可能性があるかもしれません。
外国人にとってメリットが多いことから、特定技能2号の取得を望む外国人材が増えています。
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取得方法
外食業分野において特定技能2号の在留資格で受け入れる外国人は、以下に定める (1)の実務経験を有し、かつ(2)及び(3)の試験に合格する必要があります。
(1)複数のアルバイト従業員や特定技能外国人等を指導・監督しながら接客を含む作業に従事し、店舗管理を補助する者(副店長、サブマネージャー等)としての2年間の実務経験
(2) 「外食業特定技能2号技能測定試験」
(3) 「日本語能力試験(JLPT)(N3以上)
特定技能外国人の雇用までの流れ
ここでは、「海外にいる外国人を日本に呼び寄せて雇用する場合」における流れを説明します。
なお、外国人本人があらかじめ試験に合格しておく必要があります。
「特定技能雇用契約」を締結する
企業はオンライン面接などを行い、採用する外国人を決め、「特定技能雇用契約」を結びます。
「1号特定技能外国人支援計画」を作成する
「1号特定技能外国人支援計画」は、外国人がスムーズに業務に従事し、問題なく日常生活を送れるように、企業が外国人に対して実施するサポートを計画したものを指します。作成した支援計画書は外国人本人に写しを交付し「十分に理解した」という署名をもらいます。そのため、内容は外国人本人が理解できる言語で説明する必要があります。
事前ガイダンスを実施する
企業が外国人に対してテレビ電話などにより事前ガイダンスを実施し、健康診断を受診させます。これは特定技能外国人支援計画に含まれている支援の一つです。
在留資格を申請する
企業が在留資格認定証明書交付申請書を提出し、特定技能「外食業」を申請します。提出先は、申請代理人となっている職員の勤務地を管轄する、出入国在留管理庁となります。この際、健康診断の診断書も必要です。
「在留資格認定証明書」を外国人に郵送する
審査が通ると、「在留資格認定証明書」が交付されますので、交付されたら海外にいる外国人本人に郵送します。電子メールで交付された場合はメールを転送します。
外国人が現地で査証(ビザ)を申請する
外国人が「在留資格認定証明書」を現地の日本大使館などに提出し、「査証(ビザ)」を申請し、受け取ります。
外国人が来日し、就労スタート
外国人が査証と在留資格認定証明書を持って来日し、就労する流れになります。在留資格認定証明書の有効期限は、発行から3か月以内です。
ここまでのフローのなかで、事前ガイダンスなどの特定技能外国人支援業務は、登録支援機関へ委託することが可能です。
登録支援機関とは何かについては、以下の記事をご覧ください。
違法にならないために注意すべきこと
特定技能「外食業」の外国人を雇用するときには以下の点に注意しましょう。たとえ知らなかったとしても、違法になってしまうことがあります。
特定技能「外食業」で従事できない業務・形態がある
特定技能「外食業」の外国人は、直接雇用する必要があり、派遣では雇うことができません。
また、風俗営業法に規定される店の場合、接待はもちろん不可ですが、調理業務、接客もできないため、そのような店では外国人を雇用することができません。
特定技能「外食業」の外国人の賃金は日本人と同等である必要がある
報酬は、日本人と同等でなければならなりません。日本人と同じ業務であるにもかかわらず「外国人だから」という理由で安い給料を設定することはできません。
外国人の賃金について注意すべきポイントをまとめた記事がありますので、参考にしてください。
まとめ
日本の外食産業は慢性的な人手不足の状況にあり、外国人材の需要が非常に高いことが特徴です。特に新型コロナウイルスによる営業自粛等から働き手を減らしていた外食業では、需要が回復したことで更に人手不足が深刻になってしまいました。
かつて外食業界で働いていた人材が他業界へ流出してしまったことで、日本人の採用は難易度が高くなっており、特定技能「外食業」は、今後も重宝される資格と言えるでしょう。
飲食店のスタッフとして外国人を雇用し、調理やホール業務、デリバリーなどの幅広い業務を任せたいのであれば、特定技能「外食業」を検討してみてはいかがでしょうか。
また、特定技能「外食業」の外国人を飲食店で雇用したい場合、違法にならないために、雇用形態や業務内容・給与の水準に注意しましょう。
特定技能外国人を自社・自店舗で雇用できるのか気になった方は、マイナビグローバルにお気軽にご相談ください。飲食店への豊富な採用支援実績をもとにご相談にお答えします。