外国人労働者のための日本語教育とは?自社にあった教育方法を考えよう!
外国人労働者を雇用するにあたって気になるのが、日本語レベルです。採用後、外国人労働者の日本語のスキルが上達するか、コミュニケーションがきちんととれるようになるかどうかは、企業の日本語教育に左右される部分が大きいことをご存知でしょうか。
外国人労働者の日本語レベルの現状、日本語レベル別向上の必要性、コミュニケーションの重要性を解説するとともに、企業で可能な日本語教育の方法もご紹介します。
目次
閉じる
外国人労働者の受け入れとコミュニケーションの重要性
外国人を職場に受け入れるにあたって、企業がもっとも心配していることのひとつに、コミュニケーションの問題があります。対人接客の必要がある場合はもちろん、現場職員との意思疎通のためにコミュニケーションを重要視している企業が多いはずです。
コミュニケーションが円滑に行えない場合、行き違いからトラブルが起きたり、日本人社員の業務効率が下がったり、人間関係の悪化を招いたりします。職場への定着も視野に入れている採用担当者にとって、不安要素であることは間違いないでしょう。
では、これらの不安要素をなくすために、外国人労働者とのコミュニケーションを円滑にするにはどうすればよいでしょうか。
コミュニケーションをとるためには日本語教育・文化的背景の理解・伝わる会話スキルの3つが重要
外国人労働者とのコミュニケーションを円滑にするために、3つの大切なことがあります。
◆ 日本人・外国人の双方が、コミュニケーションの文化的背景を理解する
◆ 現場では、外国人労働者に伝わりやすい会話をする
詳しく見ていきましょう。
採用後にも外国人の日本語レベルを高める
英語や母国語などが盛んに使用されるような職場や、無言で仕事をしないと行けない業種でもない限り、日本語レベルは高い方が良いとされることは間違いありません。しかし日本で生活していれば日本語レベルが自然と高くなるかというとそうではありません。実際に、2年の実習を終えた技能実習生であっても、日本語での会話が困難という方がいます。普段から意識的に日本語を使用しているか、日本語教育の支援があったかどうかで大きな差が生まれています。
技能実習の2年と言わず、さらに長く働いてほしいのであれば、なおさら日本語教育をして活躍してもらえるような支援を行いましょう。
日本人・外国人の双方が、コミュニケーションの文化的背景を理解する
日本語レベルが高ければ意思疎通が正確にできるかというと実はそうではなく、双方の文化的背景を理解しなければ、思わぬことですれ違いやトラブルが起きてしまいます。人が何か行動をする・判断をする際の基準には母国の文化や習慣が影響していて、知っておくと「あの行動は理解できない」というストレスが減るのです。
文化ギャップによるストレスは、日本人から外国人に対してだけではなく、外国人から日本人に対しても起こります。外国人にも日本人の考え方や文化を知ってもらいましょう。
日本人側も外国人労働者に伝わりやすい会話をする
外国人相手に限った話ではありませんが、日本人側が相手が理解しやすい会話を身に着けるということも大切です。日本語はあいまいな表現が多いことから、日本人同士でもコミュニケーションミスがよく起こります。
日本人同士でも難しいのですから、日本語が母国語ではなく日本文化にも馴染みがうすい外国人とのコミュニケーションでミスが起きないわけがありません。
このように複合的な努力や対策を行うことで、行き違うことなく円滑なコミュニケーションをとることができるのです。今回は3つのなかから「日本語教育」について詳しく解説していきたいと思います。
外国人労働者の日本語レベルと日本語教育の現状
外国人の日本語能力ですが、よく指標とされるものに「日本語能力試験(JLPT)」があります。日本語学校や大学などに通う留学生や外国人労働者の多くが取得をしている試験で、レベルはN1~N4まであり、在留資格「特定技能」の取得でもN4以上が要件とされています。
それぞれのレベルの認定の目安について、日本語能力試験では以下のように設定されています。
N2:日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N3:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
N4:基本的な日本語を理解することができる
日本語学校などを卒業した外国人はN3レベルなどが多いとされています。日本の専門学校や大学を卒業していると、N2、N1レベルの方が多くなります。
18 歳以上の中長期在留者および「特別永住者」に調査した「在留外国人に対する基礎調査報告書」によると、外国人の「話す・聞く能力」は、永住者や技術・人文知識・国際業務、留学において6割強が「仕事や学業に差し支えがない」「日本人と同程度に会話できる」と答えています。
このグラフにおける「日本人と同程度に会話できる」というのが、JLPTのN1相当でしょう。実際にN1レベルの外国人材とのコミュニケーションはスムーズです。
ところが、技能実習や家族滞在、日本人の配偶者等の場合は、約半分以上が「日本語レベルが仕事に差し支えのある」位置に相当しています。また、上記の資料に特定技能はありませんが、特定技能の取得要件が日本語能力試験N4以上となると、留学生や技術・人文知識・国際業務ほどの日本語レベルをもった人材は多くありません。
このように、現在人手不足の業界で働く人材が多い在留資格において、日本人と同等レベルの日本語能力を持つ外国人が求人に応募してくることは、非常に稀であるということがわかります。また出会えたとしても引く手あまたな人材ですから、より良い条件を提示できなければ採用に至ることができません。
日本語教育方法と向上度合いの相関性
日本語の教育方法と向上度合いについてはどうでしょうか。
マイナビグローバルが外国人労働者受け入れ実績のある介護事業者に実施したアンケート※によると、全体の63%が「企業が日本語学習のサポートを行っている」と回答しました。
「何かしらの教育または補助をしている」と回答した介護事業者は「日本語レベルが向上した」と評価した割合が高く、日本語学習のサポートと日本語レベルの向上は相関していると言えるでしょう。
さらに、これらの学習方法がスキルアップに繋がっているかどうかについては、学習方法により大きく差が出ているようです。日本語学習の方法はいくつもありますが、せっかく行っても効果がないのでは意味がありません。向上度合いなども考慮し、自社にあった学習方法を検討されることをお勧めします。
アンケートの回答の詳細は以下からご覧ください。
※介護業界における外国人採用状況アンケート調査結果(株式会社マイナビグローバル)、調査期間:2021年9月1日~9月30日、対象:全国の介護事業者、有効回答数:107事業者
では、具体的にどんな学習・教育方法があるか見ていきましょう。
日本語教育の方法
外国人労働者に対する日本語教育には、主に4つの方法があります。
2. 入社前・入社後に日本語学校に通う
3. 独学
4. ボランティアの日本語教室に通う
それぞれメリット・デメリットがあるので、自社にあった方法を選びましょう。
1. 受け入れ企業が研修を行う
1つ目は外国人材の受け入れを行う企業が研修を行う方法です。
この場合、自社で授業などの学習指導を行うパターンと、外部から講師などを呼ぶパターンが考えられます。しかし日本語教育の全てを企業や採用担当者などが行うことはおすすめしません。
日本語教育というと小学生に国語を教えるようなイメージを持つ方もいますが、母国語にない発音を教えたり、日本語レベル別に適切な学習を設定したり、ビジネスに必要なフレーズや日本文化を教えたりする必要があります。これには一定の専門スキルが必要です。せっかく時間を使っても日本語が上達しなければ意味がありません。企業主体で教育するのであれば、日本語教師を招く、オンライン授業を依頼する、専用のカリキュラム・教材を使用するなどといった手段で行いましょう。
企業が研修を行うメリットとしては、企業側で学習の時間を確保できることが挙げられます。慣れない生活を送るなか業務時間外で学習時間を確保するというのは難しいので、業務時間内に、週に1日数時間を確保するなどがお勧めです。また、学習の進捗状況やどれくらいレベルアップしたかなどを見て、相談に乗ったり成果を評価したりできます。
2. 入社前・入社後に日本語学校に通う
2つ目は、採用が決定してから入社前・入社後に日本語学校へ通う方法です。
ここでいう日本語学校とは法務省から告示校という指定指定を受けている日本語教育機関を指します。
日本語学校は進学予備機関の役割が強く、留学生が日本の専門学校や大学へ進むために通うことが多いですが、なかには外国人労働者のための日本語研修が受けられる学校もあります。日本語教育の専門家による授業はやはり成長が早く、日本生活に必要なフレーズやビジネス用語、日本文化を背景とした返答方法などをきちんと学ぶことができます。
デメリットとしては、働きながら通う時間を確保すること・外国人側で学費を用意することが困難という点が挙げられます。学費の一部負担や時間の融通をつけるなどの支援を検討されることをおすすめします。
3. 独学
3つ目は独学で勉強する方法です。外国人本人に任せます。
自分のペースで学習しやすい半面、進捗がやる気に大きく左右されます。学習スピードが早く短期間でどんどん成長する人もいれば、途中で学習を止めてしまう人もいる可能性があります。なるべく、独学ではなく企業がフォローできる環境の方がよいでしょう。
どうしても独学で……という場合は、以下の利用もおすすめです。
レベル:N4~N3
日本語を初めて勉強する人に向けたNHKワールドJAPANの番組。サイト内で使われる言語は19か国語から選択可能です。動画での学習や、テキストでの学習、クイズがあるほか、旅行や日本の文化、生活も学べます。
レベル:N3~N1
チャンネル登録数50万人越えのYouTubeチャンネル。日本語能力試験対策や日本文化の紹介、日本歌謡曲の歌詞をつかった日本語学習など、幅広い学習ができます。動画でわかりやすく、日本語学習者に人気です。
4. ボランティアの日本語教室に通う
地方自治体やNPO、国際交流などの団体が運営するボランティア日本語教室があります。無料だったり低価格で通うことができたりと便利です。しかし、数が少なく、開設されていても遠方で通うのが困難で大きな負担になる可能性があります。繰り返しになりますが、慣れない日本生活で業務後に学習時間を確保することは大変です。さらに遠方へ通うことはお勧めしません。近隣の場合はぜひ利用してみてください。
文化庁に日本語教室の一覧があります。
▶都道府県・政令指定都市・中核市・外国人集住都市会議会員市町における日本語教育担当部署一覧|文化庁
外国人を採用する前に 業務に必要な日本語レベルの確認を
根本的なことですが、業務においてどこまでの日本語レベルが必要なのかはあらかじめ見定めておきましょう。
受け入れ直後から日本人同様に会話できるレベルが必要なのか、採用直後は拙くてもいずれスムーズになればいいのか、この違いで獲得する人材のレベルも大きく変わってきます。
最初から日本語レベルが高い人材が必要な場合はどうするか
では最初から日本語力を求める場合、どんな採用方法があるでしょうか
留学生を雇用する
外国人留学生を採用し、特定技能や技術・人文知識・国際業務の在留資格で就労してもらうパターンです。先ほどの出入国在留管理庁「在留外国人に対する基礎調査報告書」にもあった通り、在留資格「留学」で滞在している外国人の日本語能力は業務に支障ないレベルであり、N1程度であれば入社後の支援はそれほどいらないでしょう。
ただし、先述の通りN1程度の日本語能力を持つ人材は希少です。その分、人材獲得の競争率が高いので、雇用条件などが良くなければ人材獲得は難しくなります。
また、在留資格には取得要件や就労可能な業務の制限がありますので、該当しない場合は在留資格申請をしても承認されません。注意が必要です。どんな業務であれば技術・人文知識・国際業務の外国人の雇用が可能かについては以下の記事でご確認ください。
また、特定技能も技術・人文知識・国際業務と同様に制限があります。
▶外国人留学生の採用を検討している方は、ぜひマイナビグローバルへご相談ください。資料請求はこちらから。
技能実習生から移行した特定技能外国人を採用する
技能実習は一定の条件を満たせば、特定技能への在留資格変更が可能です。
特定技能への移行を希望する技能実習生は2年間日本に在留しているので、多くの場合、初めて日本に来る外国人よりも日本語が堪能です。先ほども述べた通り、2年在留していても日本語が不得手な方もいるため確認は必要ですが、これも1つの手段としておすすめです。
ただし、技術・人文知識・国際業務と同様に、業種などの就業制限がありますので、自社で雇用が可能かは必ず確認してください。また、技能実習生を受け入れている企業であっても、特定技能外国人を受け入れられない場合があります。以下の記事で詳しく紹介しています。
▶特定技能の採用は実績豊富&ワンストップで対応できるマイナビグローバルにお任せを。資料請求はこちらから。
そのほかにも、高度人材や永住者などさまざまな在留資格があります。在留資格をよく調べ、自社にあった日本語レベルの外国人材を受け入れるようにしましょう。それが外国人材の定着と、現場の業務効率化へと繋がっていきます。外国人材の採用方法や適切な在留資格がわからないなど、お困りの際は気軽にマイナビグローバルへお問い合わせください。