鳥は鳴き声でいろんな音声コミュニケーションをしている
カラスは声を出して数を数えることができることが研究でわかっているように、鳥も高い知能を持つ事例があります。長らく、「鳥がしゃべる」などありえないと考えられてきましたが、鳥の発声についての研究によって、鳴き声によって音声コミュニケーションを図っていることがわかってきています。
How Scientists Started to Decode Birdsong | The New Yorker
https://www.newyorker.com/magazine/2024/10/21/how-scientists-started-to-decode-birdsong
オーストリアにあるコンラート・ローレンツ行動・認知研究センターの所長で生物学者・鳥類生態学者のソニア・クラインドルファー氏は、ペンシルバニア大学の学部生だったころ、「鳴禽類はオスが鳴き、メスは鳴かない。メスが鳴いたとしたらなにかの間違い」という考えを持っていました。しかしその後、オーストラリア・フリンダース大学の研究職に就いて鳴禽類のメスも鳴くということを確かめて以来、「鳥の発声」についての研究を重ねています。
一例として、クラインドルファー氏はミソサザイの巣にカメラとマイクを設置して観察を行いました。すると、ミソサザイのメスは巣の中で抱卵しながら子守歌のように鳴いていることがわかりました。卵の中で胚の状態にある雛(ひな)鳥は耳が発達しておらず音は聞こえないはずで、クラインドルファー氏は「なぜ捕食者を引き寄せるような行動を取るのだろうか?」と疑問に思っていたそうですが、抱卵中のメスの鳴き声と雛鳥が孵ってから発するおねだりの声を比較すると、一致することがわかったとのこと。
雛鳥のおねだり声は育った巣によって異なっていたことから、鳥は卵の中で母親の声を学んでいることがわかりました。卵を別の巣に移す実験では、孵った雛鳥が遺伝上の親ではなく、巣の親の声をまねることも確認されました。
Embryonic Learning of Vocal Passwords in Superb Fairy-Wrens Reveals Intruder Cuckoo Nestlings: Current Biology
https://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(12)01125-6
クラインドルファー氏によれば、鳴禽類は父親から鳴き声を学ぶと考えられていたため、これはパラダイムシフトだったとのこと。その後、同じプロセスが多くの鳴禽類で確認されたそうです。
動物が異なる鳴き声を使い分けてコミュニケーションしていることは、1970年代、ドロシー・チェイニーとロバート・セイファースがケニアに生息するサバンナモンキーに対する野外実験で確認しています。実験では、サバンナモンキーはワシ、ヘビ、ヒョウと異なる捕食者によって、それぞれ別の鳴き声で警戒を呼びかけていたことがわかっています。若い個体は対応する鳴き声を間違うことがあるものの、成長するにつれて学び、正しい鳴き声を使うようになっていったとのこと。
この研究結果は論文として発表されたほか、書籍「How Monkeys See the World」として刊行されています。
Amazon | How Monkeys See the World: Inside the Mind of Another Species | Cheney, Dorothy L., Seyfarth, Robert M. | Apes & Monkeys
シベリアカケスでも「タカが枝に止まっているとき」「タカが飛んでいるとき」「タカが獲物に攻撃しているとき」の3パターンで異なる鳴き方があることが確認されています。
なお、東京大学には、こうした動物の鳴き声やジェスチャーがどのような意味を持ち、生存や繁殖でどのように役立つのか、そしてどのような認知能力のもとに進化したかを探求する、世界初の「動物言語学」分野専門の研究室があります。
Suzuki Lab
https://www.animallinguistics.org/
動物言語学分野 鈴木研究室 | 東京大学 先端科学技術研究センター
https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/research/suzuki_lab.html
研究室の鈴木俊貴准教授は、大学時代にはシジュウカラの鳴き声の研究を行い、単語や文になっていることや、翼を使ったジェスチャーがあることを発見しています。
鈴木俊貴 「鳥類における音声コミュニケーションと認知的発達」|東邦大学理学部 生物学科 地理生態学研究室
https://www.lab.toho-u.ac.jp/sci/bio/geoeco/research/2007/suzuki.html
また、AIを用いて人間以外のコミュニケーションを解読するプロジェクトも進められています。
Earth Species Project
https://www.earthspecies.org/
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