エンロンより悲惨な「FTX破綻」が、ここまで注目されている「もう一つの理由」(池田 純一) | 現代ビジネス | 講談社(1/9)

エンロンより悲惨な「FTX破綻」が、ここまで注目されている「もう一つの理由」

話題の「効果的利他主義」とは何か?

若きビリオネアが、一転…

2022年11月8日に行われたアメリカの中間選挙は、大方の予想に反し民主党の善戦で終わった。4年間の大統領の任期(term)の折り返し点(mid)で行われる中間選挙(midterm election)は、通常、大統領へのレファランダムとして扱われ、大統領の所属政党が大きく負け越すのが当然視されてきた。現職のバイデン大統領の支持率は低く足下のインフレ不安もあり、民主党は連邦議会の多数派を失うと見られていた。

だが結果は、上院では多数派を堅持し、下院では多数派こそ共和党に奪われたものの議席数の差は僅差にとどまった。結局、共和党の「レッド・ウェイブ」は起こらずじまい。民主党の政治家たちは、予想以上の善戦に安堵した。

この民主党陣営の喜びの輪の中に本来なら「SBF」の愛称で知られる起業家サム・バンクマン=フリードも加わっているはずだった。クリプトカレンシー交換所であるFTXの創業者であるSBFは、今回の中間選挙では民主党にとって、ジョージ・ソロスに次ぐ2番目の高額政治献金者であり、間違いなく民主党善戦の功労者のひとりだった。彼の民主党への支持は強固で、中間選挙の前から2024年大統領選では今回以上に多額の寄付を行うつもりだと公言するほどだった。

FTXの創業者サム・バンクマン=フリード[Photo by gettyimages]
 

しかし、その彼の目論見が叶うことはなくなった。11月11日にFTXがチャプター11を申請し破産したからだ。中間選挙に湧くアメリカが、11月に入り、投票日に向けた最後の追い込みを行い、投票日以後は開票結果の公表に一喜一憂していたその背後で、若干30歳のビリオネアであるサム・バンクマン=フリードは、わずか10日足らずで富も名声もすべて失った。

問題は、単にFTXが破綻しただけではなく、その破綻の裏にFTXを使った大掛かりな詐欺や粉飾決算などが横行していたことが明らかにされたことだ。一時は「クリプト界のJ.P.モルガン」とか「クリプト界のマイケル・ジョーダン」など持て囃されていた時代の寵児が、一転して善玉から悪玉へと、SBFの人間性までもが疑われる窮地に陥った。一大スキャンダルである。

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