2月7日に行われた農林水産省による、農村×SDGsのカンファレンス「世界を変える、はじめかた。〜食べる〜」。環境面に配慮しながら、おいしさ、安心など食の価値を同時に成り立たせる、ニッポン式の「食」の豊かさを再発見・創造するプロジェクト「環境のための大人の食育プロジェクト」のキックオフミーティングとして、世界を変える「食」の在り方について考える時間になりました。
バックグラウンドの異なるさまざまな人たちが集結
会場となったのは、日本の農業、食、地域の暮らしを支えるJAグループが運営する「アドベンチャーラボ」。そこに、農業関係、食品メーカー、行政から高校生まで、年齢、職業問わずさまざまな人たちが集結し、熱い議論を交わしました。
はじめに、主催者代表として、農林水産省 大臣官房 環境政策室長 久保牧衣子さんがご挨拶。「“食べる”というパワーを最大限に使い、生産者、消費者、流通業者みんながハッピーになることで、SDGsのゴールは達成できると思っています。そのためにはどうすれば良いのか? そんなことを話し合える場にしたいです」と語り、さらに会場となった「アドベンチャーラボ」荻野浩輝さんも、「多種多様なバックグラウンドの人たちと問題意識を共有し、課題をディスカッションすることが私たちの喜びです」と続きました。
各分野で活躍する5人のリーダーによる学びの場
第一部は「環境のための食育スクール」。持続可能性、おいしさ、安心をあきらめない視点から、「つくる」「はこぶ・うる」「たべる」「循環する」「つたえる」をテーマに、それぞれの分野で活躍する5名のリーダーが、食にまつわる取り組みや今後の目標や課題などを語りました。
5人のリーダーはこの方々!
<つくる>
「かわごえ里山イニシアチブ」代表理事 増田純一さんは、「田んぼからつながる広がる、生き物と人の輪」をコンセプトに掲げ、無農薬の米づくりだけでなく、化学肥料を河川に残さない配慮や、誰でも参加できる井戸掘りプロジェクト、環境栽培型のマコモ栽培の支援などをはじめ、生物多様性に配慮した具体的な田んぼ活動について発表。
<はこぶ・うる>
オーガニックコットンの使用やリサイクル科学繊維の開発など、環境負荷を減らす製品づくりをはじめ、オリジナルの食品も扱うアウトドアブランド「パタゴニア」からは、日本支社近藤勝宏さんがスピーチ。1960年代、クライミングギアをつくる会社として事業をスタートさせた「パタゴニア」が、なぜ環境問題に取り組むことになったのか、その経緯を説明。
<たべる>
食の月刊誌やウェブサイトを運営する「料理通信社」の編集長 君島佐和子さんは、「食」の在り方を考えるうえで、ガストロノミーという言葉の使われ方に着目。一般的に、美食学、美食術と称されるガストロノミーこそ、農業開発、食料安全保障、栄養摂取など持続的なさまざまな生物多様性を促進する役割を果たせると熱弁。その例として、廃棄食材で作った料理を貧しい人々に提供するイタリアの名店「オステリア・フランチェスカーナ」オーナーシェフの話や、ガストロノミーをもっとも根源的な活動だとしている立命館大学の「食マネージメント学部」の学びを挙げました。
<循環する>
「セブン&アイ・ホールディングス」取締役 久留原昌彦さんは、イトーヨーカドー直営農園「セブンファーム」での完全循環型農業の取り組みを発表。賞味期限切れなどで店舗からゴミとして出される食品を堆肥へリサイクルし、その良質な堆肥のみを使って野菜を育て、その野菜を再び店舗で販売する「環境循環型農業」について語りました。
<つたえる>
「環境のための大人の食育プロジェクト」のメンバーでもあるFRaU編集長 関龍彦は、SDGs時代の「食」の在り方として、青山国連大学前で開催している「ファーマーズマーケット」内で、ゴミの出ない理想の買い物を実験する量り売りマーケット「Naked(ネイキッド)」を紹介。また、情報をつたえる立場として、「“あなたのためにおいしい”を探しつたえること」ではなく「“みんなのためにおいしい”を探しつたえていくこと」が重要になる、そのために、講談社としては女性誌から幼児誌まで扱う総合出版社にしかできないことを、どんどん取り組んで行きたいと意気込みを示しました。
以上5つの視点から5人のリーダーにお話いただきました。さまざまなフィールドで活躍される人たちの話を聞いて、まず「知る」ことがいかに大切であるかが伝わる内容でした。