学生が福島の”今”と“未来”を知るためのツアーを企画! 被災経験のある学生記者が環境省の次世代会議に参加してみた
5月28日、「福島、その先の環境へ。」次世代会議が福島再生・未来志向プロジェクトを推進している環境省にて開催されました。
今回は学窓ラボメンバーで自身も宮城県にて被災経験のある菊地里帆子が学生の視点からレポートします。
『福島、その先の環境へ。』次世代会議とは?
東日本大震災に伴う原発事故により極めて重大な影響を広範囲に及ぼしたのは11年前。それ以降、環境省は環境再生事業に懸命に取り組んできました。
今回はその一環として「『福島、その先の環境へ。』次世代会議」 を開催。それぞれの想いを持った大学生18名、福島県内の高校生5名が全国から集まり、福島の“今”を知り、復興に向かう現状や未だ福島が抱える課題を同世代にどのように伝えていくかを考えました。
見学先の検討会議では、ツアーテーマである「環境再生×地域・まちづくり」・「環境再生×観光」「環境再生×農業」・「環境再生×新産業・新技術」・「環境再生×脱炭素」の5つのグループに分かれて積極的に意見を出し合い、学生らしい発想でツアー企画の立案に取り組んでいました。
学生が考える、「ふくしまホープツーリズム」のかたちは?
学生たちは、ところどころで有識者のサポートを受けながらも、テーマに沿ったツアー企画のアイデア出しが活発に行われていました。中には、訪問先として今月いよいよ住民の帰還が始まる双葉町など、幅広い候補先を学生の目線でピックアップしていました。
どのグループもホープツーリズムという考え方を念頭に活発な意見交換を行っていたのが印象的。「複合災害(地震・津波・原子力災害)」を経験した世界唯一の場所である福島が生み出した新しいスタディツアープログラムのかたちを意識していました。
また、有識者の方々からの助言に出てくる「グリーンスローモビリティ」や「地域循環共生圏」などといった耳新しい言葉を自主的に調べながら、積極的に企画に取り入れる姿には驚かされました。
Z世代ならではの発信方法のアイデアも!
会議後半のツアーを広める発信方法についてのディスカッションでは、有用性が重視されていました。現地での食事を通じて意識を促したり、特産物BOXを作ったり、実現可能性の高いアイデアもたくさん出ていました。
また、「タッグを組んでつくる」をコンセプトにした株式会社TOKIOが福島県庁内に『TOKIO課』を設置したことも大きな力の一つだと語る学生も。デジタルネイティブのZ世代としてSNS発信を駆使するアイデアを出すグループが多くみられました。
参加学生の熱意に感動! 印象的だった学生の声をお届け
全国各地から集まっているのにも関わらず、福島に対する熱量が同じくらい強い学生のみなさんにとても感激しました。中でも印象深い学生3人を紹介します。
「環境再生×農業」チーム 京都府立大学 中村俊貴さん
研究室の先生の授業をきっかけにこのような分野に興味を持ちました。この会議では、自分が理解を深めることや自分の足で現地に行くことが、いかにして社会的意義を生み出すか考えることができると思います。
僕たちのグループは「Iと福島」というテーマを設けましたが、このIには「自分(I)と愛」がかかっています。このツアーを通し、福島の実態を自分事として捉えるきっかけづくりができればと思っています。
「環境再生×新産業・新技術」チーム 福島大学 河原梨花さん
私の親戚が福島県郡山市にいて、風評被害などに悩む現状を傍で見ていたからこそ、何かできることをしたいと考えています。実際に会議中のディスカッションでも、やはり福島県外の学生さんから見た福島のイメージと自分とでは認識の齟齬がありました。福島大学に在籍し、今の福島の良さや抱える問題をリアルタイムで摂取できる環境にいることを活かして、少しでも正しい情報発信ができたら嬉しいです。
将来は、原子力系に携わり復興に貢献できる人材を目指したいと思います。
「環境再生×脱炭素」チーム 東京大学 劉思茗さん
私は中国からの留学生で、今は新聞社でアルバイトをしています。折角メディアに触れる時間が長いので、「留学生から見た福島」の発信方法を模索したいです。
未だに震災時の印象が強く、福島に対して「怖い」という感情も少しあります。しかし私自身、福島に足を運んだことがないので、この会議をきっかけに福島を訪れ、現状を自分の目で見てみたいと考えています。世界に福島の今を届けられるツアーになることが楽しみです。
イベントに参加してみて感じたこと
今回の会議は福島の未来が楽しみになる有意義な時間でした。宮城県名取市出身の私にとっては津波被害までが自分事であり、原発事故に関しては十分な当事者意識がなかったことに気づきました。東北の人間でさえまだまだ小さな齟齬や思い違いがたくさんある中で、復興の一端を担うというのは本当に難しいことですが、それを承知で福島の未来と真摯に向き合う全国の学生のみなさんに感銘を受けました。被災地が復興地となっていく過程を一緒につくろうとする多くの次世代の方々に出会えて私自身も奮起させられました。
「福島、その先の環境へ。」次世代会議は、夏頃に今回出てきたアイデアをもとに決定したツアーを発表し、その後参加者を募り、実際に福島見学ツアーを実施するようです。 また、来年3月には福島で開催を予定しているシンポジウムイベントにて、その成果報告を行います。
福島の明るい未来を共創する学生たちの成果を楽しみにしていてください。
福島再生・未来志向プロジェクト
https://fukushima-mirai.env.go.jp/
文・菊地里帆子
編集・学生の窓口編集部