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監修 EY税理士法人
近年はNISAなどの制度も広がり、資産運用として株取引やFX取引を行う方も多いのではないでしょうか。
株式の譲渡益やFXの利益は課税対象のため、ふるさと納税の控除上限額が増える場合が多い一方、NISAやiDeCoは税制が優遇されているためふるさと納税との併用には注意点があります。
ここでは、専門家である税理士監修で、株式投資やFXをしている場合のふるさと納税の控除上限額への影響や注意点について解説します。
株式投資やFXについて
株を売却して利益を得た(株式譲渡益)場合や、FXで利益が発生した場合は、課税対象となります。そのため、所得金額を基に控除上限額が決まるふるさと納税では、控除上限額も、株式譲渡益やFXの利益に応じて金額が増える場合が一般的です。
なお、株式やFXで損失が出ている場合は、損失の金額を他の所得と損益通算をすることができないため、ふるさと納税の控除上限額に影響はありません。
株の売却益(株式譲渡益)が出た際は基本的にふるさと納税の控除上限額を増やすことができます。
ここからは、具体的に控除上限額の計算方法についてご説明していきます。
計算方法は以下の5ステップ。
まずは、以下の計算式から株式譲渡で得た所得金額を算出します。
以下の計算式から株式譲渡の所得に対する「住民税所得割額」を算出します。
次に、株式譲渡益以外の所得(給与所得など)についても住民税所得割額を算出していきます。給与所得がある会社員で、それ以外に所得がなければ、給与所得に対する所得割額を計算します。
(手取りではなく総支給額)
(給与所得控除額は国税庁ホームページを参照)
所得税の税率(国税庁)(所得控除額は各地域の個人住民税の所得控除額を参照)
前年と収入や家族構成等が同じ場合には、「住民税決定通知書」を確認するのが便利!
【納税者用の住民税決定通知書】
出典:総務省「納税義務者用の特別徴収税額決定通知書の記載内容の秘匿」
❷で算出した株式譲渡所得の所得割額と、❸で算出したそれ以外の所得割額を合計し、翌年の住民税所得割額を算出します。
※わかりやすくするため簡略化して記載していますが、実際には譲渡所得やそれ以外の分離課税の所得割額と、給与所得やそれ以外の総合課税の所得割額の合計を指します。
最後に、以下の計算式に当てはめて、控除上限額を計算してみましょう。
ふるさと納税の控除手続きは「確定申告」と「ワンストップ特例申請」で行うことができますが、どちらの方法が好ましいかは利益額や取引口座などにより異なります。
一般的な給与所得者の場合は他の所得(株・FXなど)が20万円を超えるかどうかでも、手続き方法が変わってきます。
条件ごとの注意点は下記の通りです。
源泉徴収有りの特定口座は、給与以外の所得が20万円を超えるかどうかにかかわらず、源泉徴収で税金を納めているので、他の要件で必要な場合を除いて確定申告は不要です。
そのため、ふるさと納税の控除申請時にはワンストップ特例制度を利用できます。
ただし、確定申告を行わないままだと株式譲渡益が所得に換算されないため、ふるさと納税の上限額も変化することはありません。ふるさと納税の控除上限額を増やすためには確定申告を行う必要があります。
その場合、所得が増えて控除上限額が増えるメリットがある一方で、ワンストップ特例制度が利用できなくなったり、配偶者控除の額に影響が出たりとデメリットもあります。
確定申告をする場合のメリットとデメリット
メリット |
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デメリット |
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これらも確定申告をすることで控除上限額を増やすことができますが、いずれも源泉徴収されませんので、ご自分で確定申告する必要があります。
また、利益額20万円(※)を境に選択肢が変わってくるので注意が必要です。
※売却額そのものではなく、必要経費を差し引いた譲渡所得金額のことです。
❶ 利益額が20万円以下の場合
会社員等給与所得者で給与以外の所得金額の合計額(株式譲渡所得金額など)が20万円以下の場合、基本的に所得税の確定申告は不要のため、ワンストップ特例制度が利用できます。ただし、住民税の申告は必要であり、住民税の所得金額が増えるため、ふるさと納税の控除上限額も増加します。
一方、確定申告を行う場合、株やFXの利益を申告し、所得金額を増やすことでふるさと納税の控除上限額を増やせます。ただし、課税範囲が広がることで、税額が増え結果的に損をしてしまう場合もありますのでご注意ください。
❷ 利益額が20万円を超える場合
この場合は必ず確定申告が必要となります。
新NISAについて
NISAは少額投資を行う方のための非課税制度であり、2024年からは、年間投資上限額や非課税期間を大幅拡充した新NISAが開始されました。
NISA口座は、税制上優遇され、住民税や所得税等税金の支払いは発生しません。そのためNISA口座を利用している場合は、ふるさと納税の控除上限額に影響がありません。
また、NISAは利益が出ても原則非課税のため、確定申告を行う必要がありません。そのため、NISA利用者がふるさと納税をする場合は、ワンストップ特例制度が利用可能です。
ジュニアNISA及び旧一般NISAともに収益が最長5年間、旧つみたてNISAは最長20年間非課税となるので、ふるさと納税の控除上限額に影響はありません。また、非課税期間に確定申告が不要なため、ワンストップ特例制度が利用可能です。
個人型確定拠出年金(iDeCo)について
iDeCoは積み立ての支払いがそのまま所得控除になる制度です。
そのため、所得金額をもとに控除上限額が算出されるふるさと納税では、iDeCoで所得控除がなされる分、控除上限額が減ってしまいます。
ただし、控除上限額が減っても、その控除上限額までふるさと納税はできますし、実質自己負担額2,000円で返礼品をいただけるメリットは変わりませんので、iDeCoと併用してふるさと納税も行うことがおすすめです。
iDeCoは積み立てた分だけ所得金額が小さくなります。
そのため、iDeCoと併用してふるさと納税を行う際は、控除上限額を計算する際に、所得金額からiDeCoを利用した金額を差し引きましょう。
また、JRE MALLふるさと納税の控除上限額シミュレーションなら、iDeCoと併用した場合の控除上限額を簡単に算出することが可能です。
小規模企業共済掛金控除の欄に、iDeCoの積立額を記入してシミュレーションをしてみてください。
※本ページは、作成日時点(2024年3月)において施行されている法令に基づき、ふるさと納税制度の一般的な内容について記載されたものです。
最新の情報や、お客さまそれぞれの個別具体的な内容については、税理士等の専門家にご相談ください。