FX・株式の所得・損失はふるさと納税の限度額に影響する?併用する際の注意点を解説
FXや株式で投資をしながら、ふるさと納税も行いたいと考えていませんか?投資をしていることで、ふるさと納税の控除限度額や申請方法が変わるのではと疑問を抱く人も多いでしょう。
今回は、ふるさと納税の控除限度額や申請時の注意点を、FX・株式投資を行っている人向けに解説します。また、ワンストップ特例制度の適用条件や確定申告方法などもまとめているので、ぜひ参考にしてください。
ふるさと納税を行える上限額は、年収・家族構成等によって異なります。3ステップで寄付の限度額がわかる「かんたんシミュレーター」で上限額の目安をチェック!
目次
FX・株式の損失・含み益・含み損は「限度額」に影響なし
FXや株式における含み損あるいは損失は、ふるさと納税の控除限度額に影響を与えません。また、含み益がある場合でも、売却して実際に利益を得ない限り、限度額は変わらないのが特徴です。
なお、株式やFXでの損失分を給与所得と合算し、収入額を少なく見積もることで、納める税金を減らすことはできません。注意しましょう。
FX・株式による所得がある場合は「限度額が増える」可能性がある!
FXや株式で実際に利益がある場合は、ふるさと納税の控除限度額が増加する可能性があります。
そもそもふるさと納税は、「所得税額」によって控除上限額が変化します。所得税額とは、給与所得や雑所得など、1年間のあらゆる所得の合計額から算出される税金額です。FXや株式を通して得た所得に対する税金も含まれるので、取引条件や種類に応じて、ふるさと納税の控除限度額に影響します。
FX・株式投資をしている場合の「ふるさと納税限度額」をシミュレーション
ここからは、FXや株式で投資している場合のふるさと納税の控除限度額の調べ方を解説します。ふるさと納税の控除限度額は、下記の式によって計算可能です。
控除限度額=(個人住民税所得割額×20%)÷(90%−所得税率×1.021)+2,000円
「個人住民税所得割額」とは、市町村民税と都道府県民税の所得割額の合計のことです。「住民税課税決定通知書」の「個人住民税所得割額」欄に記載されているほか、以下の計算式を用いても求められます。
個人住民税所得割額=(前年の総所得金額等−所得控除額)×税率(10%)−税額控除額
所得金額ごとの「所得税率」と「所得控除額」は、以下の表を参照ください。
課税される所得金額
税率
控除額
1,000円 から 1,949,000円まで
5%
0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで
10%
97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで
20%
427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで
23%
636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで
33%
1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで
40%
2,796,000円
40,000,000円 以上
45%
4,796,000円
引用:国税庁 所得税の税率
また、「税額控除額」には配当控除が含まれるため、必要に応じて配当所得額の10%または5%の額を算出します。
上記の式などを用いて、年収500万円の独身で、個人住民税所得割額が30万円の人が、株取引によって80万円の利益を得た場合を以下にまとめました。
<給与所得のみの場合のふるさと納税の控除限度額>
控除限度額=(30万円×20%)÷(90%-20%×1.021)+2,000=8万5,951円
<株取引で得た利益も含めた場合のふるさと納税の控除限度額>
個人住民税所得割額=30万円+(80万円×5%)=34万円※
控除限度額=(34万円×20%)÷(90%-20%×1.021)+2,000=9万7,144円
※株取引やFXの利益に対する個人住民税所得割額は、【所得(利益)額×住民税率(5%)】で計算可能。
FXや株で得た利益を含めると、およそ1万円分、ふるさと納税の控除限度額が多いのがわかります。
なお、ふるさと納税の控除限度額は、ふるさと納税ポータルサイト「ふるラボ」のシミュレーション機能でも算出できます。簡易的な額ではあるものの、年収と家族構成を入力するだけで計算可能です。併せて活用してみてください。
ふるさと納税を行える上限額は、年収・家族構成等によって異なります。3ステップで寄付の限度額がわかる「かんたんシミュレーター」で上限額の目安をチェック!
FX・株式投資とふるさと納税を併用している場合の確定申告の注意点
ここからは、FX・株式投資とふるさと納税を併用する際の確定申告に関わる注意点を、下記の2パターン解説します。
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株式投資(源泉徴収あり/特定口座)の場合
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株式投資(源泉徴収なし/特定口座・一般口座)やFX取引がある場合
FXや株式投資している場合、基本的には確定申告が必要です。ただし、取引に用いる口座を「源泉徴収あり」の特定口座にしておくと、確定申告が不要になります。詳しい条件などを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
株式投資(源泉徴収あり/特定口座)の場合
株式投資を行い、取引用の口座を「源泉徴収あり」の特定口座に設定している場合は、確定申告が不要です。所得に応じた一定の税金額が自動的に徴収されるため、各自で申告しなくても税金額が決まります。
また、「源泉徴収あり」の特定口座を使うと、ワンストップ特例制度を活用することも可能です。ワンストップ特例制度とは、ふるさと納税の寄付金控除を確定申告なしで簡単に受けられる仕組みのことです。ワンストップ特例制度を使えば、ふるさと納税を行った翌年の住民税が控除されます。
株式投資(源泉徴収なし/特定口座・一般口座)の場合とFX取引がある場合
株式投資用の口座に「源泉徴収なし」の特定口座や一般口座を指定していたり、FX取引があったりする場合は、利益額に応じて確定申告の有無が異なります。ここでは、下記2パターンの対応をまとめました。
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利益が20万円以下の場合
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利益が20万円を超える場合
それぞれ詳しく解説します。
利益が20万円以下の場合
株式やFXによる利益が20万円以下の場合、所得税の確定申告は基本的に必要ありません。一方で、住民税に関する申告は必要です。そのため、住民税の申告を行うと、ワンストップ特例制度を利用できなくなる点に注意しなければなりません。
ワンストップ特例制度が使えないと、ふるさと納税の寄付金控除を受けるためには確定申告が必要です。確定申告で提出する内容には、ふるさと納税に関する項目だけでなく、株式などで得た利益も含まれます。課税対象の金額が増えることになってしまうので、最終的には納税額も増えてしまう可能性があるでしょう。ふるさと納税の控除を最大限に活用するためにも、メリットとデメリットを天秤にかけたうえで判断するのがおすすめです。
利益が20万円を超える場合
FXや株式での利益が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。ふるさと納税による寄付金控除や還付といった申請だけでなく、所得額やそのほかの控除なども併せて行われます。確定申告をしないままだと脱税に繋がってしまうので、忘れず申告してください。なお、ワンストップ特例制度を使っての申請はできないので注意しましょう。
FX・株式投資をしていても「ワンストップ特例制度」が使えるパターンはこれ!
ここからは、FXや株式で投資をしていてもワンストップ特例制度が使える条件を詳しく解説します。具体的には以下の条件に当てはまる人が対象となります。
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「給与所得者」である
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2カ所以上からの「給与所得」がない
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年間の給与収入が合計2,000万円以下
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「給与所得」以外に所得がない
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1年間で寄付した自治体が5団体以内
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ふるさと納税の有無にかかわらず確定申告の必要がない
すべての項目に当てはまった場合、ワンストップ特例制度による申請が可能です。なお、利用には専用の申請書が必要です。ふるさと納税の申し込みの際に、ワンストップ特例制度を利用することを申請すれば、申し込み際の自治体から申請書が送られて来ます。また、申請書はふるさと納税を申し込んだ数だけ提出しなければならないので、忘れないように準備しておきましょう。
FX・株式投資による利益がある人がふるさと納税をする場合の「確定申告方法」
確定申告をしたことがない人にとっては、何をどうすればよいのかわからない場合もあるでしょう。ここからは、確定申告の手順や必要書類などを解説します。確定申告を行う際は、下記の手順で進めましょう。
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提出書類を作成
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申告期間中に提出
確定申告時に必要な書類は下記の5点です。
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確定申告書A/B
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寄附金受領証明書
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ふるさと納税する年の源泉徴収票
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還付金受け取り用の銀行口座番号
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マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類
確定申告に必要な書類を作成するためには、源泉徴収票など収入に関する書類や寄付金控除に必要な証明書などを用意しなければなりません。あらかじめ準備しておくと、書類作成がスムーズに完了します。
確定申告書類は国税庁のHPからダウンロード可能です。e-Taxの「確定申告書等作成コーナー」を使えば、ウェブ上で数値を入力するだけで書類が作成できるので、適宜活用しましょう。
確定申告書類の具体的な記入項目などは、下記の記事でも詳しく解説しています。併せて参考にしてみてください。
まとめ
今回は、FXや株式での投資とふるさと納税を併用する方法や注意点、確定申告の方法などを紹介しました。投資による実際の利益があれば、ふるさと納税の控除限度額を増やせます。条件によってはワンストップ特例制度を使って簡単に申請できるので、この記事を参考にぜひ挑戦してみてください。
なお、ふるさと納税の返礼品を探しているのなら、専用ポータルサイト「ふるラボ」の利用がおすすめです。カテゴリーや寄付金額、自治体別に返礼品を絞り込めるので、自分に合った品が簡単に見つかります。寄付金額の上限を簡易的に計算できるシミュレーションツールもあるので、活用してみてはいかがでしょうか。
ふるさと納税を行える上限額は、年収・家族構成等によって異なります。3ステップで寄付の限度額がわかる「かんたんシミュレーター」で上限額の目安をチェック!