2014-06-22 (Sun)✎
『日本百景』 夏 第121回 白山 〔石川県・岐阜県〕
大汝峰より白山を一望する
白 山 はくさん (白山国立公園)
富士山・立山と共に『日本三大霊山』の一つに数えられる白山は、越前・加賀地方にまたがる両白山地の主峰である。 “白山”という名はこの山群の総称で、最高峰の御前峰 2702メートル 、次いで大汝峰 2684メートル ・剣ヶ峰 2677メートル と、3つの峰から構成されている。
・・日本海から吹きつける季節風をまともに受けるこの山域は冬季に大量の降雪があり、この雪が“万年雪”となって年中この山を白く輝かせる。 それが、この山“白山”の名前の由来である。
富士山・立山と共に『日本三大霊山』の一つに数えられる白山は、越前・加賀地方にまたがる両白山地の主峰である。 “白山”という名はこの山群の総称で、最高峰の御前峰 2702メートル 、次いで大汝峰 2684メートル ・剣ヶ峰 2677メートル と、3つの峰から構成されている。
・・日本海から吹きつける季節風をまともに受けるこの山域は冬季に大量の降雪があり、この雪が“万年雪”となって年中この山を白く輝かせる。 それが、この山“白山”の名前の由来である。
そして、この“万年雪”がこの山に豊富な水を恵み、高山植物の源となる。
ハクサンイチゲ・ハクサンチドリ・ハクサンコザクラ・・。 花をあまり知らない人でさえ聞き覚えのある花の名も、この白山から出たものが多い。 また、山頂からの眺望も、コバルトブルーの水面をたたえる火口湖・《翠ヶ池》を前景に、関西の山から日本アルプスの山なみが見渡せる絶景である。
白山周遊登山ルート 行程図
行程表 駐車場・トイレ・山小屋情報
《1日目》 金沢市街より車(1:40)→別当出合(2:20)→甚ノ助ヒュッテ(0:20)→南竜道分岐
(0:30)→エコーライン分岐(1:20)→白山・室堂
《2日目》 白山・室堂(0:45)→白山・御前峰(0:40)→白山・剣ヶ峰(0:50)→白山・大汝峰
(0:30)→エコーライン分岐(1:20)→白山・室堂
《2日目》 白山・室堂(0:45)→白山・御前峰(0:40)→白山・剣ヶ峰(0:50)→白山・大汝峰
(0:25)→千蛇ヶ池(0:30)→白山・室堂(1:10)→甚ノ助ヒュッテ
(1:40)→別当出合より車(1:40)→金沢市街
白山をめぐるパーカーの群れ
《1日目》 エコーラインを使って白山・室堂へ
白山でも特に花の多い・・といわれている『エコーラインコース』を使って、名峰・白山の全ての峰をめぐってみよう。 登山基点となる《別当出合》には休憩舎・トイレ・駐車場があり、シーズンには登山指導所や売店も出て、設備上は申し分ない。 ここで支度を済ませて、さあ出発だ。
トイレ前の道を奥に進むと、『観光新道』との分岐に出る。 今回の目的は花の豊富な『エコーラインコース』をめぐる事にあるので、『観光新道』は見送るとしよう。 分岐を過ぎて少し階段を下ると、《別当谷》に架かる吊橋を渡る。 渡り終えると樹林帯に入っての登りが始まる。 この地点はまだ奥手に作業林道が平行しているので、道も広く標識も整備されて歩き良い。 やがて、右上に『不動滝』と堰堤が見えれば、程なく林道と合流する。
白山でも特に花の多い・・といわれている『エコーラインコース』を使って、名峰・白山の全ての峰をめぐってみよう。 登山基点となる《別当出合》には休憩舎・トイレ・駐車場があり、シーズンには登山指導所や売店も出て、設備上は申し分ない。 ここで支度を済ませて、さあ出発だ。
トイレ前の道を奥に進むと、『観光新道』との分岐に出る。 今回の目的は花の豊富な『エコーラインコース』をめぐる事にあるので、『観光新道』は見送るとしよう。 分岐を過ぎて少し階段を下ると、《別当谷》に架かる吊橋を渡る。 渡り終えると樹林帯に入っての登りが始まる。 この地点はまだ奥手に作業林道が平行しているので、道も広く標識も整備されて歩き良い。 やがて、右上に『不動滝』と堰堤が見えれば、程なく林道と合流する。
ハクサンフウロ
この山域発の高山植物だ
車も通れる作業林道を少し歩くと、《中飯場》に出る。 ここには架設トイレがあり、最後の憩いの場!?となるので利用していった方が無難だ。 登山道はトイレの脇から、山の土手に入り込んでいる。
ここからは深い樹林帯の中の急登となり、時折ジグザグを交えながら高度を稼いでいく。
登りつめると周りの樹木がダケカンバ類に変わりだし、やがて崖の突き出たような《別当覗》の展望所に出る。
ここから望む《別当谷》の大崩壊は実にすざましい。 また、その背後に『観光新道』の尾根道が仰げて、こちらの『砂防新道』共々遙か右上の《黒ボコ岩》を目指して連なっている。 この展望所より進路を90°右に変えて、トドマツ交じりの樹林帯を登っていく。
高山植物の“影”の女王
クロユリ
『室堂まで3km』の道標を見る辺りから足元にクマザサが現れて、これを掻き分けながら階段状となっているサザレ石帯を登れば、丸い礎石の残る《高飯場跡》の広場に出る。 見上げると、《甚ノ助ヒュッテ》の屋根部分が見えている事だろう。
少し登れば、程なく《甚ノ助ヒュッテ》に着く。 この小屋は無人小屋だが、高床式の“使用に十分耐え得る”造りの小屋である。 ちょうどここは、今日の行程の中間地点だ。 ここで少し休憩をしてから出発しよう。
少し登れば、程なく《甚ノ助ヒュッテ》に着く。 この小屋は無人小屋だが、高床式の“使用に十分耐え得る”造りの小屋である。 ちょうどここは、今日の行程の中間地点だ。 ここで少し休憩をしてから出発しよう。
《甚ノ助ヒュッテ》からは、左の山腹に切られた急な石段を登っていく。 これを登りきると、『エコーラインコース』や《南竜ヶ馬場》への分岐に出る。 この分岐を右に進路を取り、森林限界上の山腹をトラバース気味に伝っていく。 この辺りは展望の利く草原となっていて、そろそろ現れるお花畑を愛でながらの楽しい道となる。
白山の“オアシス”
南竜ヶ馬場
進んでいくと、別山の登山道筋や《南竜ヶ馬場》のロッジ、そして色とりどりのテントが見えてくるだろう。 これらの景色が一望できる展望台を越えると、程なく《エコーライン分岐》に差しかかる。
この分岐を真っすぐに進み《万才谷》の雪渓を越えれば、《南竜ヶ馬場》や別山、そして槍や穂高・乗鞍・御岳山が一列に望める『展望コース』への道だ。 もし、あと1日、日程に余裕があればこのコースにも立ち寄りたい所である。
エコーラインから望む
最高峰・御前峰
さて、この分岐を左へ取り、《万才谷雪渓》を右下に眺めながら草原と砂礫の丘の上を緩やかに登っていく。 この辺りは、本邦最大といわれている白山でも随一のお花畑が広がっている。
ハクサンイチゲ・ハクサンチドリ・ハクサンフウロ・クロユリ・クルマユリ・イワギキョウ・ハクサンコザクラ・ニッコウキスゲ・・など、色とりどりの花が草原を染め上げている。
ハクサンイチゲ・ハクサンチドリ・ハクサンフウロ・クロユリ・クルマユリ・イワギキョウ・ハクサンコザクラ・ニッコウキスゲ・・など、色とりどりの花が草原を染め上げている。
花の峰・白山に咲き競う その1
キヌガサソウ ハクサンコザクラ
ミヤマキンバイ イワカガミ
また、展望も素晴らしい。 見上げる白山・御前峰も、“花の峰”らしい丸く優しい山容を魅せてくれる事だろう。 正面に雪渓を挟んでの別山と、それに連なる稜線の《大屏風岩》が緑濃く印象的な眺めである。 色とりどりの花を愛でながら緩やかに尾根筋を伝っていくと、《万才谷雪渓》の上部が途切れる辺りから最後のジグザグ急登となる。 これを乗りきると、《弥陀ヶ原》の下端に登り着く。
早い時期だと、この辺りは豊富な雪が乗る大雪原となり、ルートを見失う危険も生じる所である。
雪が解けると大草原のお花畑となり、庭園状の静かな雰囲気にマッチした眺めを魅せてくれる。
庭園の中をほぼ真っすぐに伝っていくと、左斜めから寄り添ってくる『砂防新道』と合流する。
合流してなおも《弥陀ヶ原》の大平原を突っ切ると、《五葉坂》と呼ばれる最後の登りを経て、宿舎の建つ白山・《室堂平》へとたどり着く。
五葉坂
室堂への最後の試練だ
宿泊手続の後、ひと休みして体力に余裕が出てきたなら白山最高峰の御前峰に登ってこよう。
なお、御前峰までのルート解説については、明日の御来光を望む時に述べたいと思う。
なお、テント幕営ならば《南竜ヶ馬場》に大規模なキャンプ指定地で野営することになるが、御前峰の山頂までが遠くなって、山頂での御来光を眺めるのは難しくなるだろう。
白山山上 詳細図
《2日目》 白山頂上めぐりと下山
《室堂》宿舎ではシーズン中、天気が良く御来光が拝めそうならば、日の出の1時間半前に大太鼓を打って知らせてくれる。 それに合わせて出発しよう。 見上げると、カンテラを照らした登山者の帯が頂上からきれいに連なっている。 この帯に乗って頂上までいこう。 約45分で《白山奥宮》の祠の立つ白山・御前峰 2702メートル に登り着けるだろう。
《室堂》宿舎ではシーズン中、天気が良く御来光が拝めそうならば、日の出の1時間半前に大太鼓を打って知らせてくれる。 それに合わせて出発しよう。 見上げると、カンテラを照らした登山者の帯が頂上からきれいに連なっている。 この帯に乗って頂上までいこう。 約45分で《白山奥宮》の祠の立つ白山・御前峰 2702メートル に登り着けるだろう。
御前峰より剣ヶ峰を望む
頂上は左右に細長く、前後は至って狭い。 この中に御来光目当ての登山者が列をなして群がるので、のんびりとカメラを構えるには難点がある。 頂上からの眺めは、北アの黒部五朗岳から槍・穂高、乗鞍までが一団となって雲海に浮かんでいる。 山なみの右端より昇る御来光のシーンは、霊山とおぼしき荘厳な情景である。 御来光が昇ると、宮司の音頭で“万歳三唱”と祝詞が挙げられる。 御来光を眺めたなら、残る大汝峰・剣ヶ峰の頂に立つべく先に進もう。
御前峰山頂からは、大汝峰に向かってガレた岩ザクをジグザグに下っていく。
途中に《天柱石》と呼ばれる奇怪な岩塊を見て、火口の底に下り立つ。
周囲は灰色のガレ岩に覆われた荒涼たる風景で、昨日から眺めた白山の緑豊かな山容とのギャップはかなり大きい。 火口の底から標識に従って火口壁を乗り越えると、《紺屋ヶ池》・《油ヶ池》・・と火口湖群に差しあたる。 これらを眺めながら下ると、エメラルドグリーンに輝く《翠ヶ池》が現れる。
白山・御前峰と翠ヶ池
白山を語る上での『代名詞』的な情景
この湖畔の手前まで下ると、剣ヶ峰への踏跡が右に分かれている。 この踏跡を伝って、剣ヶ峰に登ってみよう。 剣ヶ峰は溶岩を積み上げたようなもので、ゴロゴロした浮石だらけで足場はつとめて悪い。
落石や転倒に注意して登ろう。 登り着いた剣ヶ峰 2677メートル の頂上には『奥ノ院』が祀られている。
剣ヶ峰には登山ルートがない
縦走路から外れて人気がない剣ヶ峰からは、眼下に広がる《大白川》の原生林、奇怪な山容の三方崩山、ライトグリーンを魅せる《北弥陀ヶ原》の眺め・・なと、深く味わいのある眺めを魅せてくれる。
十分に眺めを堪能したなら、往路を戻ろう。
《翠ヶ池》畔に戻り、左前方に迫り立つ大汝峰に向けて歩いていく。 池底にある赤い石で血のように赤く染まった《血ノ池》を越えると、大汝峰への登道が分岐している。 先程の剣ヶ峰の黒光りした溶岩帯と異なり、白い砂礫のガレた急斜面だ。 登っていくごとに《翠ヶ池》がエメラルドグリーンの輝きを放ち、ピラミタルな剣ヶ峰を投影し始める。
十分に眺めを堪能したなら、往路を戻ろう。
《翠ヶ池》畔に戻り、左前方に迫り立つ大汝峰に向けて歩いていく。 池底にある赤い石で血のように赤く染まった《血ノ池》を越えると、大汝峰への登道が分岐している。 先程の剣ヶ峰の黒光りした溶岩帯と異なり、白い砂礫のガレた急斜面だ。 登っていくごとに《翠ヶ池》がエメラルドグリーンの輝きを放ち、ピラミタルな剣ヶ峰を投影し始める。
“大汝”より“剣”
水墨画のような情景
砂礫の花咲く細い尾根筋を伝って大汝峰 2684メートル 頂上に登りつめると、白山山系随一の素晴らしい展望を望む事ができる。 剣ヶ峰と御前峰の影の間に真綿のような雲海が漂い、その上を北アの山が一列をなして浮かんでいる。 またその奥には八ヶ岳や南アルプス、富士山なども見渡せる。
素晴らしい眺めを心ゆくまで眺めたなら、頂上を後にしよう。
展望を司る峰・大汝峰
大汝峰の頂上は
広い庭園となっている
広い庭園となっている
雲海に一直線に浮かぶ
北アの名峰群
北アの名峰群
《血ノ池》に戻ると、山頂散策路は《室堂》へ戻るべく左へ大きく進路を変える。 更に進むと、《百姓池》と『熱雲堆積物』と呼ばれる白砂と巨岩が現れる。 この『熱雲堆積物』は1554~56年にかけて、《翠ヶ池》の火口から赤熱した岩石や火山灰が火山ガスと共に山の斜面を雪崩の如く流出したものである。
これらの砂地や巨岩の間には、砂礫に咲く高山植物が可憐な姿を魅せている事だろう。 ハクサンコザクラ・アオノツガザクラ・コイワカガミ・イワギキョウなど、色とりどりの花を愛でながら歩いていこう。
花の峰・白山に咲き競う その2
アオノツガザクラ
高山植物の“代表格”
ハクサンコザクラ
やがて、最後の火口湖で伝説の色濃い《千蛇ヶ池》に出る。 この池は夏でも水面が雪で覆われた温帯性の寒帯湖で、日本列島の温帯に属する地域では唯一のものという。 そして、この珍しい池には、当然ながら伝説もついてくる。 その伝説とは、泰澄大師が千匹の悪蛇を万年雪に封じ込めた・・というものである。
それよりもこの伝説の凄い所は、“もし、万年雪が解けたなら、《御宝庫》と呼ばれる白亜の岩が上から崩れ落ちて地面を塞ぐ”という後のフォローまで考えてある事だ。 あとは、《室堂平》の草原地帯に咲くミヤマキンバイやクロユリ・ハクサンイチゲの群落の中を通って、《水屋尻雪渓》の縁を横切ると、《室堂》の宿舎が見えてくる。
それよりもこの伝説の凄い所は、“もし、万年雪が解けたなら、《御宝庫》と呼ばれる白亜の岩が上から崩れ落ちて地面を塞ぐ”という後のフォローまで考えてある事だ。 あとは、《室堂平》の草原地帯に咲くミヤマキンバイやクロユリ・ハクサンイチゲの群落の中を通って、《水屋尻雪渓》の縁を横切ると、《室堂》の宿舎が見えてくる。
そろそろ下山に取り掛ろう
御前峰にひとまず別れを告げて
宿舎でひと息着いたなら、小屋に置いてあった荷物を引き上げて下山に取りかかろう。 たぶん、白山頂上めぐりでは、素晴らしい眺めと美しい花々に随分時間を取られてタイムオーバー気味であろうから、下山道は最短コースを取ろう。 だが時間に余裕があるのなら、展望の良い『観光新道』を下るのもいいだろう。
花の峰・白山に咲き競う その3
チングルマ ツマトリソウ
イワギキョウ ミヤマダイモンジソウ
《五葉坂》を下り、《弥陀ヶ原》の草原を突っ切ると、《弥陀ヶ原》の端に立つ《黒ボコ岩》の前に出る。 この岩は分岐となっていて、岩の右手に周り込むと『観光新道』へ、左手に周り込むと最短コースの『砂防新道』に続く。 この岩の下に続くジグザグ道を下ると、《延命水》なる冷たい湧き水が岩雫となって流れ落ちている。 もし、この道を登りに使うなら、この湧水は心強い“力水”となろう。
この後、《十二曲》という最も急なつづら折りの坂を下りきると《三ノ越》、後は多少ガレた道に気をつけながら小沢を何本か横切ると《南竜道分岐》の左側に出る。 後は、往路で通った道を忠実に下っていこう。 下山口の《別当出合》まで、《甚ノ助ヒュッテ》より1時間40分位である。 下山を終えたなら、《白山温泉》で山の汗を洗い落としていこう。