中世、舞踏会で演奏された楽器ハンマーダルシマー - アメリッシュガーデン改

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姑オババと私の物語をブログでつづり、ちいさなガーデンに・・・、な〜〜んて頑張ってます

中世、舞踏会で演奏された楽器ハンマーダルシマー

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ハイファンタジー小説



ハンマーダルシマーという楽器

 

現在、カクヨムに中世を舞台にしたハイファンタジーを書いております。その中で、演奏する楽器として考えたとき探しだした楽器が、ハンマーダルシマーです。初めて、その音色を知り惚れました。

 

下の楽器です。

あまりに素敵で、お聞きください。

 

www.youtube.com

 

この演奏をイメージに書いているのが下記作品です。

 

ファム・ファタール-心を失った皇女-』〜奴隷を愛した姫君は世界の片隅で恋に溺れる〜

【第1話】 ミルズガルズの皇女

 

 私は17歳になるまで、ミルズガルズの森に囲まれた美しい湖畔の家で育った。この家を普通に家と呼ぶ人は少ないけれど。

 

 実際は、『ミルズガルズの美しい邸宅』とか『あのヘルモーズ卿の湖の城』とか呼ばれている。その名に、私は少しだけ恥ずかしさを覚えてしまう。

 だって、この城は私のためだけに、日々、莫大な金を浪費をしているのだから。

 

 父はラドガ辺境国の首都で執政官をしており、私をここに閉じ込めることで、大切に養っていると思いこんでいた。それでも、私は父を愛している。たぶん、ファザコンなんだと思う。

 

 だから、私の話をする前に、父のことを書いたほうが良さそう。

 父を理解してもらえれば、私がどんな娘で、どんな性格をして、どんなふうに育ったか、おおよそ見当がつくんじゃないだろうか。

 

 えっ、それってちがうって?
 そうか、あなたは、親から凝り固まった強要とか受けていないのね。
 たぶん、幸せなんだと思う。

 ……。

 

 父はラドガ辺境国の執政官で、この国の最高権力者。背が高く堂々としてユーモアがあり、人を惹きつける魅力に溢れていて、他人の気持ちをいっさい忖度しない。そんな父が自慢でもあるのだけど。


 さて、10年前にフレーヴァング王国という小国で起きた厄災をご存知だろうか? 多くの人はそれを『嘆きの森の厄災』と呼んでいる。

 

 私の母カーラ・ド・ヘルモーズは、ラドガ辺境国の特使として祭典に出席した。出立する前、母はミルズガルズを訪れた。

 

「マリーナ、彼の国で聖なるドラゴンの祭典を視察してくるわ」
「お母さま、私も見たい」
「これはお仕事ですから。それに、いいこと、マリーナ。そのように人に、おねだりするのは、卑しい者のすることですよ」

 

 そうして、母はドラゴンの氷の息で殺された。いまも、竜の呪いで氷づけになって、その惨めな姿を地上に晒しているらしい。

 父は母を深く愛しており、大いに嘆き悲しんだ。
 数日、部屋に閉じこもった後、「マリーナはどこにいる」と、幼い私を呼んだ。

 7歳だった私は、母がいないことに慣れており、その死を深くは理解していなかったけど。

 

 父は私を抱きしめると、ペットとしてポンポをくれた。細く長いモフモフの尻尾と長い耳を持つポンポは希少な獣だ。特に黄金色に輝く体毛は、暗がりでうっすらと周囲を光で照らす珍しい種だった。

 私は一瞬で虜となり母を忘れた。

 

「少しでも慰めになろう」と、父は悲痛な声で私を抱きしめた。

 

 私は父を慰めるべきかどうか当惑した。7歳の私には父が何を望むかわからなかった。今もわからないかもしれない。でも、理解しようと努力はしている。だって、他人の心に従って生きるのは楽だもの。

 

「マリーナ、おまえは辛くないかい?」
「お父さま、私、そういう気持ちを持てないの」
「それは、残念なことだよ。お前の母ほど美しく賢く、そして、素晴らしい女性はいなかったのだから。お母さまを、これからもずっと誇りに思いなさい」
「はい」と、私は素直に答える。

 

 私の母は偉大な人であった。欠点など全くない。スマートで多くの人々に慕われ、優しく美しく。そして、残酷だった母。
 私は覚えている。


 母の目は、いつもこう語っていた。

『私の娘なのに、なんてお前は平凡でバカなの』と。

 

 母亡きあと1ヶ月もすると、父は執政官としての役目を思い出した。あるいは、田舎の刺激のない日々に退屈したのかもしれない。

 

 そして、首都に戻った父は、ミルズガルズに帰って来なくなった。

 私はひとり堅牢な城という家で、贅沢な生活を与えられたが、それは家庭教師の厳格な時間管理のもと、ほぼ全ての日を算術や国語、芸術からマナーまでを学ぶ息苦しい生活でもあった。

 

 友人といえば、同じ階級の子どもしか知らない。

 その一人、グルヴィアは貴族の家に生まれた肉感的な美人で、15歳で首都に住む両親の家に戻った。そして、たまにミルズガルズに帰っては、首都で自分がいかに花形であるか語り、大げさに嘆いて私を笑わせた。

 

「ああ、哀れなマリーナ」と、彼女は劇的な口調で会うたびに言うのだ。
「こんな堅苦しい場所に、ずっと囚われた美しい姫君。なんて謎めいた存在なの。でもね、あなたは、きっと幸せな恋をするにちがいないわ」
「まあ、なぜ?」
「おお、マリーナ。都会には狼がいっぱいなの。私は哀れにも、奴らにも食い殺されるにちがいないのよ。だから、城でポンポと過ごすあなたが羨《うらや》ましい。あなたは、いい恋しかしない運命よ」と、信じてもいない言葉を口にする。

 それはまるで砂糖菓子のように、口の中で溶けてしまう空虚な言葉だ。

 

 さて、あなたは私を気弱な世間知らずの姫だと軽蔑したかもしれない。確かに私は気弱で周囲に影響され安い。
 心理学の家庭教師カストリーニなら、こうした私の傾向を「神経症的な傾向に陥りがちだ」と分析するだろう。

 

 それは当たっているとも言えるし、間違っているとも言える。
 だって、私の芯には母の強さが間違いなく宿っているからだ。

 

下記につづく

kakuyomu.jp

 

おヒマな時にでも。

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