【お笑い天下統一:明智光秀の謎4】外国では『出る杭は打たれる』のか? 出る杭王信長と、NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』
『出る杭は打たれる』
このことわざは日本でしか使われないと思いがちですが、実は、
Don’t rock the boat
(波風を立てるな)
The nail that sticks up gets hammered down.
(突き出る釘はハンマーで打ちつけられる)
英語にも似たようことわざがあって、どの国でも出る杭は打たれる。もうそりゃね、人間のやっかみや嫉妬は世界共通なんだろうな。
私はぜったい嫉妬などしませんという聖人のような方がいるかもしれない。
実は私もそういう時があった。
あまりに日常が大変で嫉妬してる暇がないっちゅうか、他人を見てる余裕がないっちゅうか。そういう時は出る杭を打っている暇がない。というよりできない。出る杭を打つことができる状態って、ある意味、贅沢な状況なんだと思う。
たとえばで例をあげると、
潜水艦が深海で水漏れしたって状況を想像してみてください。
うわ! ってな非常時に嫉妬なんて感情もてないからね。
出る杭、打ってる場合じゃないからね。
「艦長! 本艦のエンジン部分が浸水! 回復不可能!」
ブオーブオーって警告音が耳に痛いくらい艦内に鳴り響いている。
「浮上! 緊急、浮上!」
「エンジン部分も浸水! 緊急浮上、不可能」
「おし、艦内放送を行う」
「は! 艦長、どうぞ」
「全乗組員につぐ。本艦はまもなく沈没する。が、となりの潜水艦は浸水していない! 皆で悪口を言ってやろう!」
「・・・」
脱線しすぎました。
さて、日本の『出る杭はうたれる』と海外の『突き出る釘はハンマーで打ちつけられる』は似て非なりで差は確かにあります。
米国の場合
人種も宗教もごった煮のような社会、そもそもが出る杭ばかりであって。
皆が出てきて、皆で足をひっぱりながら、そこから脱出して成功した者がアメリカン・ドリームなのです。基本、すべての人が出ている杭の国なのです。
日本の『出る杭は打たれる』的発想とは形態がちがっていて、誰もかれもが出る杭で、そのなかで強いもの出て生き残るジャングル社会。
「例えば、〇〇についてだけど、アメリカ人ならどう考える?」ってアメリカ人に聞くと、大抵、以下のような言葉が必ず返ってきて、イラってします。
(この〇〇は好きに入れてください)
「アメリカ人の意見なんて知らないが、私の意見は」と。
おい、こっちはオタクの国の平均値を聞いてるんだよ。わかんないのかいってなるんです。
向こうも向こうで、イラってします。
日本人はこう思うって、すべての日本人は同じなんかい、違うだろって。
日本は、みな同じという幻想のなかで生活しております。
そこから出てくる杭を、みなで足を引っ張るんであって、そもそも出たがる人が少ない。
単一民族という幻想もあって、常識が一つである日本は、お互いのコンセンサスは同じという土俵があるのです。そこから出る杭はうたれてしまう。
米国で生活すればわかりますが、平均や均質がない。
だから日本人が米国へ行くと、その自由な空気に最初は楽な気分になります。
渡米した当初は気楽に感じる日本人は多いです。しかし、しばらくすると、その自由に孤独を感じるのです。難しいものです。
前説、長すぎちゃいました。
さて信長です。
第1次、信長包囲網 出る杭がうたれちゃった編
上洛した信長は出る杭になってしまった。
もう出すぎちゃいましたね。
いやもうね、戦国時代で出るって、相当な覚悟がいるわけであって、足を引っ張られ、悪口を言われるだけじゃすまない。
織田信長、最大の危機『出る杭はうたれる』状況。
ていうか、この人、最大の危機がない時があったでしょうか。まさに、出る杭キングだから、その49年の短い生涯を打ってくる杭を跳ね返して跳ね返して生きてきたわけで、非常に強靭な精神の持ち主だったと思います。
その最も大きな難関が、上洛して天下布武を行ったあとにはじまります。
地方のポッと出のやんちゃな兄ちゃんが、第15代将軍、足利義昭を立てた。
そりゃ、周囲の武将、「こんの若造が、むかつく」って危機を感じたわけです。
その結果、すべての国から攻め込まれるという、普通ならオワコン状態になったのが第一次信長包囲網でした。
どんな風に危機を迎えたかというと、
1 明智光秀が世話になっていた朝倉義景がまず信長を無視しました。
当主の義景、優柔不断な男でせっかく足利義昭が越後まで来て、助けてくれよって言ったのに動かず、結果として、信長に取られてしまいます。
その上、信長が足利義昭の名前で命令してきます。
「上洛しな」
「無理!」
出た杭信長、ここで何したかって、越前を攻める兵をだした。
そこで浅井長政に援護を頼んだ朝倉家。
2 絶世の美女である妹、お市の方を嫁にやったのに、浅井長政も裏切る。
信長、浅井家には下手にでて最愛の妹を嫁にやった。
浅井長政、お市の方にもうメロメロ。信長を兄として慕うとまで言い切った。
だから、朝倉家との戦いに援護しなくても敵にまわることはないだろうって思ったら、おおっと、浅井長政、背後から攻めた。
信長、京都へ逃げた!
そりゃ、そうだ。
そして有名な「姉川の戦い」が起きる。ここで信長軍、なんとか勝利、持ち直した。
3 例のクソジジイ軍団三好三人衆も懲りずに戦をしかけてくる
弱ると必ず出てくる、ウジ虫のような元名門たち。
あいかわらず出て来た。
4 石山本願寺のナマグサ坊主たちも三好に加勢する
その名門爺さんたちに、石山本願寺も加勢して兵を出した。
5 伊勢の長島一向一揆衆には弟を殺される
「お館さま」と、石山本願寺が挙兵したと伝令が知らせてきた。
兵庫方面へ三好の爺さんたちを撃ちに行く途中であった。
「なんと!」
「お館さま!」
「なんじゃ、今は石山をどうするか忙しい」
「しかし、お館さま。長島で一向一揆がおきましてございます」
「誠か!」
「は!」
この時、信長、はじめて自分の状況を理解した。
北も南も西からも攻められ、絶対絶命なのだ!
次から次へと周囲の勢力が織田家に戦いを挑み、一時は信長も敗退して逃げるとか。そりゃ、もう、あっちもこっちも大騒ぎ。
「お館さま!」
そう、いつも通り信長の決断は早い。四方から攻めて来た敵が連携しているわけではないと即断した彼。
「和睦じゃ! 全員と和睦じゃ!」
という訳で、からくも危機を脱したのであります。
出た杭、打たれすぎの1569年から1570年であったわけです。
―――――つづく
戦国時代を扱ったドラマ『軍師官兵衛』NHK大河ドラマ
2014年公開
原作:前田洋一
主演:岡田准一(黒田官兵衛役)、竹中直人(秀吉)、江口陽介(信長)
2019年10月14日よりCSチャンネル銀河にて放映中
稀代の軍師と謳われた戦国武将、黒田官兵衛(1546年生〜1604年没)の生涯を扱ったドラマ。
本能寺の変では、真っ先に信長の死を知り、有名な『中国大返し』の指揮をとる。
秀吉から「次の天下を狙う男」として警戒されるほど、知力、胆力ともに優れた武将であった。
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*内容には事実を元にしたフィクションが含まれています。
*登場人物の年齢については不詳なことが多く、一般的に流通している年齢を書いています。
*歴史的内容については、一応、持っている資料などで確認していますが、間違っていましたらごめんなさい。
参考資料:#『信長公記』太田牛一著#『日本史』ルイス・フロイス著#『惟任退治記』大村由己著#『軍事の日本史』本郷和人著#『黄金の日本史』加藤廣著#『日本史のツボ』本郷和人著#『歴史の見かた』和歌森太郎著#『村上海賊の娘』和田竜著#『信長』坂口安吾著#『日本の歴史』杉山博著ほか多数。