【結婚と毒親 20】映画『ザ・ライズ・オブ・スカイウォーカー』が12月って、スターウォーズ来る前に、結婚しちゃって
《オババ》私の姑、人類最強のディズニーオタク。
《叔母》オババの妹、ヒステリー性障害を患う。娘を溺愛し結婚に反対。
《優ちゃん》叔母のひとり娘。39歳。婚活アプリで知り合った太郎と熱愛、過保護母に結婚の邪魔をされている。ただいま、その母親から私と太郎と一緒に逃亡中。
《太郎》35歳。高校時代に親を亡くし、一人で農家を切り盛する中卒の勤労青年。
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・・・もともと寂れた場所だったからでしょうか。
午後8時近くのデニーズには、ほとんど客はいませんでした。
太郎くんは優しげな表情を浮かべ、
優ちゃんになにを注文するか聞いてます。
ほら、優ちゃん。
太郎くんの顔ばかり見ない!
自分で注文する!
って、できないのかい。
てか、なんで恋愛中の二人の間に、私、挟まっちゃってんのよ。
カニのハサミに挟まった指みたいで
こんなとこに挟まりたくないオーラだしてみたけど
ちょっとだけ、ジリジリしてる私ですが、
太郎くん、大物です。
そんな私や優ちゃんに動じもせず、待っています。
やはり、この男、逃してはアカン!
崖っぷち39歳の最後の砦だ。
これを乗り越えちまったら、もう崖から転落していくしか道がない!
太郎くん、マストアイテム
この夏もサザンオールスターかってくらい、マストアイテム!
さて、優ちゃんの優柔不断のメニュー選び以上に
私の前には難題が待ちかまえていました。
スマホという難題です。
もう世界中、スマホのない時代忘れてませんか?
ほんの少しまえ、スマホがなかった時代、あったんです。
便利だけど厄介なシロモノでしょう?
返事しないと、こじれるメンヘラ(この使いかた、あってる? グーグルで検索したら、メンタルヘルスにいるような人って意味らしいけど)
それは叔母だよ、🎵だだんだ〜〜ん。
優ちゃんの母、私の叔母、
こういう面倒な親戚って、どこにでもいるよね。
で、叔母、スマホとくっついてるんかってぐらい連絡いれてきてます。
スマホ画面
叔母叔母叔母、ときどきオババ、1回夫、叔母叔母叔母って
誰だって、いつもスマホにへばりついてる訳じゃないから。
トイレもいくし、お風呂も入る。
電源入れ忘れたから、電波だって届かない時があるんだ。
でもって、電波が届かないと、電源入れ忘れの言い訳、
3回くらいで面倒なことになってくるから。
「どんだけ電波が届かないの。それに電源入れ忘れって、この前も言ってたよね」とかね
時代が進むと便利になるって、逆じゃない?
逆に大変になってない?
これ、私の気のせい?
誰からの連絡が欲しくないとき、
もし、スマホがなかった時代なら、もう言い訳、いっぱいあったから。
「昨日、電話をかけたけど」ってくるとするじゃない。
「ああ、ごめんね、その日はずっと外出してたから」とか。
「待ち合わせたのに、どうしてこなかったの?」
「迷ちゃって、気がついたらフランスにいた」とか
ポケベルが出てきたころから、不吉な予感はあった。
未来、読めるわけじゃないけど、漠然とその予感、あった。
進歩って人間のためなんだよね。
でもね、今じゃ、どこでもスマホが追っかけてくっから。
休みなしなの。進歩、休みなしなの。
でもって、このまま長生きして、長生きしすぎちゃって、
なにげに医療もすすんで、さらに長生きして
スターウォーズの時代まで生きちゃったら、どうしてくれんの。
どんなに踏ん張っても、ライトセーバー
び〜〜〜んって、大きくできる自信ないし、
ダースベーダーの息遣いだけで腰抜かしそうだし。
ちなみに、スター・ウォーズ三部作最新作『ザ・ライズ・オブ・スカイウォーカー(仮称)』が12月に上映決定らしい。
見に行くべし、だわ、アメリッシュ家。
でさ、私、生まれるの遅すぎた?
もっと昔に生まれてたら、
ふう〜〜
スマホ、まだ鳴っている。
今度はオババだ。
デニーズで、とりあえずケーキ食べながら、
叔母叔母叔母叔母、ときどきオババ、そして夫の順でなるスマホを見ていた。
「俺、話ましょうか」って太郎くんが。
「いえいえ、それは・・・」
仕方ねぇ
一番楽なのからいくか、地獄からいくか。
どっちを選ぶ、私。
「もしもし」
「アメリッシュ、トラックの運転、大丈夫だったか」
夫が言った瞬間、後方でうわーーとか、歓声が聞こえた。
30人の愉快な老人たち、まだいたのか。
「どこにいる」
「デニーズ」
「それじゃ、わからん。場所は」
「えっと、道路の横のデニーズ」
「デニーズは、日本中の道路の横にある」
真理です。
「貸しなさい」って、第2の難関、オババの声がした。
夫よ、スマホを死守って、思いっきり念じたが、
あっさりとオババに変わっていた。
「それで、二人はどうしたの」
「あの、アイスクリームを食べていて」
「そうですか、まあいいわ。これからどうするつもりですか」
店内は暇そうなスタッフが一人だけでした。
先ほどいた客も帰り、誰もいないから少しくらい良いよね。
だから、スマホをスピーカにしました。
「すみません、僕のせいです」と太郎くんが殊勝な顔をしています。
その瞬間、
「優子はどこ! 優子は大丈夫なの!
優子は・・・」
うわー、いきなり叔母の乱入!
「ママ。怖い」
「優ちゃん、優ちゃんなの、大丈夫? 怖くないわ。ママがついてる。大丈夫よ、ひどい目にあってない? 誘拐されたんでしょ。ママ、警察に連絡しようとしたら、みんなに止められて。大丈夫よ、ママが助けるから」
あ・の・なあ〜〜〜!
どういう思考回路から、そういう話ですかってことです。
もう妄想で誘拐になってるなんて、予想外すぎて、宇宙までライトセーバー振り回しそう。
優ちゃん、あわあわって感じで何も返事できません。
「声は聞こえた?」って私。
「わかったわ。優ちゃんは無事なのね」
ちがう!
誘拐路線、ちがうから!
「だから、太郎くんと」
「お、お金ならいくらでも準備するから。だからお願い、子どもを返して」
もう誘拐犯と被害者の母って、そんな切羽詰まった声で、叔母、電話口で叫んでます。
叔母さん。思考がぶっ飛びすぎて想定外!
確かにね、私、言った。
トラックに乗れって言った。
で、太郎くん、優ちゃんをトラックの荷台に抱きかかえてのりこんだ
あれ?
ちょっち、誘拐ぽい?
どうしたらいいの?
この状況。
スマホなんて、ほんと大変になっただけだから。
ちょっと気をぬくと、すぐに誘拐犯だから!