日本の原風景、私たちが思い描く“ふるさと”のような地域で働き、暮らし、そして遊ぶ……。
そんな生活を体験できる「ふるさとワーキングホリデー(以下、ふるさとワーホリ)」という制度が、2017年1月よりスタートしています。
滞在期間が2週間~1カ月と短く、移住の必要もないため、大学生や転職活動中の10~20代にぴったりのこの制度。
今回は、人気若手俳優の樋口幸平さんが宮城県石巻市で「ふるさとワーホリ」体験にチャレンジ!
都会的でスタイリッシュな樋口さんが“ふるさと”で働き、暮らし、そして遊ぶことで、一体何を感じるのでしょうか?
樋口さんの体験の様子を、4回にわたってレポートします!
JR石巻駅から「ふるさとワーホリ」体験スタート!
2024年7月のある日の朝、樋口さんを乗せた列車がJR石巻駅に到着しました。
俳優になる前は、Jリーガーを目指してサッカーに明け暮れていたという樋口さん。幼少期には祖母が住む岡山県に里帰りして遊んだ記憶はあるというものの、近年は“ふるさと”と呼べるような地域に滞在する機会はなかったそうです。
もちろん、石巻市を訪れるのもこれが初めて。
JR石巻駅の改札を出ると、そこには石巻市にゆかりのあるマンガ家・石ノ森章太郎先生が描いた「サイボーグ009」や「仮面ライダー」といったキャラクターのモニュメントが数多く立ち並んでいました。
樋口さん自身、2022年3月から2023年2月にかけて放送されたスーパー戦隊シリーズ第46作「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」(テレビ朝日系列)で主人公の桃井タロウ(ドンモモタロウ)役を演じたばかり。
数々のヒーローたちを他人とは思えない様子で眺めていると、そこに「ふるさとワーホリ」の事業運営をサポートする学生スタッフ、通称・ワカモノメンバーの玉井日向子さんと高橋せらさんの2人も合流。
今回は樋口さんだけではなく、玉井さんと高橋さんとの計3人で石巻市の「ふるさとワーホリ」を体験していきます。
樋口幸平
2000年11月30日生まれ、兵庫県神戸市出身。
2022年3月~2023年2月放送の「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」では主役に抜擢。2023年にはドラマ「体感予報」(MBS)にてダブル主演を務めた。
2024年「約束~16年目の真実~」(読売テレビ)などに出演。今注目を集める若手俳優の一人。
玉井日向子
東京都出身、立命館アジア太平洋大学4年生。
ワカモノメンバーの一人で、2023年9月に徳島県徳島市で伝統工芸である藍染の染色、2024年6月には高知県四万十町で有機野菜の栽培管理などと、これまで2回の「ふるさとワーホリ」を経験。
石巻市を訪れるのは今回が初めて。
高橋せら
東京都出身、法政大学2年生。
ワカモノメンバーの一人だが「ふるさとワーホリ」は未経験。
石巻市を訪れるのも今回が初めてだが、高校生の頃から「まちづくり」にまつわる活動を行っていたので、“ふるさと”のような地域での滞在経験はあり。
年齢が近いこともあって、3人は合流すると早速意気投合。
樋口 2人と一緒に、これまでには経験したことがないような人生経験ができると思っています。東京に帰ってからも、その経験を色々思い返しながら生活できるというのも楽しみです。今後いつか、今回の経験が生きるような役にも出会えるといいですね。
玉井 これまでの「ふるさとワーホリ」では伝統工芸や有機農業など働くことがメインだったのですが、今回は石巻の街や文化についても触れることができそうなので、そこが楽しみです。
高橋 普段は事務局で学生に「ふるさとワーホリ」をPRする仕事をしていて、実際に体験するのは初めてなので、少し緊張しています。
三者三様の意気込みを語った後、早速次の目的地である「いしのまき MANGA lab. ヒトコマ」に向かって出発しました。
「ふるさとワーホリ」で地域と若者をマッチング
今回樋口さんたち3人が体験する「ふるさとワーホリ」は、期間中に地域で働くことで収入を得ることができ、さらに休日にはその地域で思い思いの休暇を過ごすことができる制度です。
その名の通り、海外に滞在しながら就労することができるワーキング・ホリデー制度の国内版と考えると、理解しやすいかもしれません。
今、国内の“ふるさと”と呼べるような地域は、都心部への人口流出による人口減少や過疎化、高齢化による働き手不足とそれに伴う経済力低下など、多くの問題を抱えています。
地域の人々は、「地域の魅力を伝えたい」「交流人口を増やして地域経済を活性化したい」「多くの人に定住してほしい」という強い想いを持っています。
一方で、都市部には「地域づくりへの参加がしたい」「地域との交流を深めたい」と考える大学生、社会人がいます。その2つの想いをつなげる制度が、「ふるさとワーホリ」なのです。
「ふるさとワーホリ」は地域への滞在期間が2週間~1カ月と短く、地域おこし協力隊とは異なり移住する必要もありません。
大学生なら長期休暇を利用すれば気軽に参加できますし、転職活動中や移住を検討している社会人にとっても、実際の地域での生活を確認し、仕事も経験できる効率の良い制度です。
それぞれの地域が、そこならではの魅力や特色を生かした仕事や余暇に参加できるイベントを用意しているのもポイント。
詳しく知りたい場合は、総務省が開催している合同説明会や、各実施団体が個別に開催する説明会をまずはチェック!
石巻市の「ふるさとワーホリ」では何が体験できる?
「いしのまき MANGA lab. ヒトコマ」に着いた樋口さんたち3人。まずは石巻市復興企画部SDGs移住定住推進課の遠藤正啓課長より、石巻市の概要について説明を受けました。
石巻市は宮城県北東部に位置する、太平洋に面した港町。元々はコンパクトな市でしたが、2005年に周辺6町と合併し、今の石巻市に。
2011年3月に起きた東日本大震災で一時は壊滅的な被害を受けましたが、「新しいまちをつくろう」のコンセプトの下で今は復興が進み、約13万人が住む県下第二の都市となっています。
自然が豊かで、2つに割れた奇岩から荒波が押し寄せ、陽光の筋が差し込む景勝地「神割崎」や、3年続けてお参りすれば一生お金に困らないと言い伝えられる黄金山神社がある信仰の島「金華山」などはSNS映えする人気のスポット。
今回の「ふるさとワーホリ」体験は、2日間の行程。
1日目のこの日、この後3人は今いる「いしのまき MANGA lab. ヒトコマ」で子供たちを対象にしたワークショップでの指導員の仕事を行い、続いて近くにある「石ノ森萬画館」へ移動し、そこでも就労体験。
最後に、石巻市で「ふるさとワーホリ」を行う若者が宿泊するゲストハウスを見学して、1日目は終了。
2日目は、打って変わって石巻ならではの「遊び」の一日。海でSUP体験を行います。
遠藤さんは、石巻市の名産についても説明。産業としては漁業が盛んで、石巻漁港の水揚げ岸壁は1200mと日本一の長さ。
さらに岸壁そばにある石巻魚市場の建物は875.47mの長さを誇り、世界で最も長い魚市場としてギネス記録に認定されていると話すと、3人は感心したような声を上げました。
その話を聞いた3人は、アナゴやホヤ、カキといった海の幸に興味津々。
遠藤 ホヤって知ってますか?
玉井 知ってます!
遠藤 現地で食べると全然臭みがなくて、おいしいんです。フルーティですよ。
高橋 えー、食べたい!
遠藤 あとはカキ。
樋口 カキ!食べたいなあ。
石巻市ならではの海産物の説明を、食い入るように聞く3人。
他にも和牛や魚介出汁を使ったB級グルメ「石巻焼きそば」、セリなど海の幸以外の名物についても聞き、すっかりお腹が減ってしまった様子。
説明後は、ランチタイムです。
玉井・高橋 いつから俳優をされているんですか?
樋口 初めてドラマデビューしたのは19歳の時ですね。
玉井 セリフはどうやって覚えているんですか?
樋口 テストと同じで、何度もぶつぶつ繰り返して口に出して覚えて……。完璧に覚えておかないと、緊張で(セリフが)飛んじゃうこともあるんですよ。
高橋 どうして俳優になろうと思ったんですか?
樋口 サッカー選手になるために東京に出てきたんですが、結局プロになれなくて地元に帰ろうかと思って最後に渋谷に、買い物に出かけたらスカウトを受けたんです。プロ(のサッカー選手)にはなれなかったけど、新しい世界でやってみようって思ったのがきっかけです。
高橋 縁があったんですね。
昼食をいただきながら色々な話をして仲良くなった、樋口さんたち3人。この後、いよいよ「ふるさとワーホリ」体験が始まります!