【読書感想】ライオンのおやつ ☆☆☆ - 琥珀色の戯言

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【読書感想】ライオンのおやつ ☆☆☆

ライオンのおやつ

ライオンのおやつ

  • 作者:糸, 小川
  • 発売日: 2019/10/08
  • メディア: 単行本


Kindle版もあります。

ライオンのおやつ

ライオンのおやつ

内容紹介
人生の最後に食べたいおやつは何ですか――
若くして余命を告げられた主人公の雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色のなか、本当にしたかったことを考える。
ホスピスでは、毎週日曜日、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫はなかなか選べずにいた。
――食べて、生きて、この世から旅立つ。
すべての人にいつか訪れることをあたたかく描き出す、今が愛おしくなる物語。


 『ひとり本屋大賞』10冊め。
 いきなりで申し訳ないのですが、苦手なんですよ、小川糸さん。スローフードに温かい人々との日常に、読んでいて恥ずかしくなるような渾名のセンス。
 またこの人の小説が『本屋大賞』にノミネートされてしまったのか……と、正直つらかった。
 
 これまでのノミネート作の評価も、こんな感じですからね。


fujipon.hatenadiary.com
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 それで、今回は若くして癌になってしまった女性のホスピスでの物語、ということで、もうその時点で「ああ……」と。
 僕は基本的に難病ものとか、人が死んでいく小説って、嫌いなんです。だって、いま生きて、小説を書いていて、死んだことがある人って、誰もいないじゃないですか。いるわけがない。もちろん、作家は実体験だけを書かなければならない、というわけではないのですが、どんな想像力も、本物の「死」の前では、陳腐に思えてしまうのです。
 まあ、丹波哲郎先生は別格かもしれませんが。

 事実としての死とか、他者からみたノンフィクションであれば、ひとつの情報として受け容れられるのだけれど、物語で、美化された死というのは、それが綺麗であればあるほど、「嘘くさい」と感じてしまいます。
 この『ライオンのおやつ』の舞台設定とか、「こういう舞台設定で、こんな出来事があったら、みんな感動するんだろ、ほら、泣けよ!」って言われているみたいで、かえって斜に構えてしまうのです。

 で、この『ライオンのおやつ』なんですが、最初にタイトルをみたときには、小堺一機さんの『ごきげんよう』なのかと思ったのですが、ホスピスの話。しかも、主人公は「若くして癌のステージ4」という設定なのですが、僕は読み始めて、言葉の選び方や考え方から、ああ、僕より少し年上、50歳代くらいかな、という印象でした。
 ところが、主人公の年齢を知ってびっくり。
 いくつの設定なのかはネタバレっぽいので書きませんが(っていうか、こういう話をしている時点でややネタバレではあるけど)、絶対作者は「自分」をちょっと若作りしたくらいの気持ちで書いているはず。人間は、他者が思っているほど、自分では年齢を重ねた気分にはなれないものだけれど、「さすがにこれは無理がありますよ」と誰か言ってあげなかったのだろうか。
 おやつとかもさ、バンバン出せばいいじゃん。もったいぶらずに。みんないつ死んでしまうかわからないんだからさ。しかも、プライベートな情報をみんなの前で公開されてお茶会なんて、ホスピスは断酒会でも集団セラピーでもないし、誰かに「あなたは(改心するのに)間に合った」なんて評価される場所でもないはず。

 まあ、こうして例のごとく揚げ足ばかりとってしまったのですが、こういう物語があることによって、人によっては、一種の「終活」というか、「死へ恐怖が少しマシになった」ということもあるのではないかと思います。いま、本当に死に瀕している人は読まないだろうし。

 ただ、これまで僕が読んできた小川糸さんの作品のなかでは、「人が死に向かっていく」というわかりやすい「物語」がある分、読みやすい(というのは語弊があるかもしれないけれど)気がしましたし、いつもの「やたらと説教くさい感じ」は薄めでした。
 「本を読んで泣くのが好き」で、「人が死ぬ話だと、つい泣いてしまう」という向きには、それなりに「良い小説」なのかもしれません。僕は正直、「はいはい、NHKでドラマ化けってーい!」って茶化したくなりましたけど。


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