Kindle版もあります。
内容紹介
どうします? 僕たちが抱える東アジアの厄介な問題を。山ちゃんの「目のつけどころ」に、「池上解説」がズバリ答える。MBSの人気深夜番組が待望の新書化。中国、朝鮮半島、太平洋をはさんでの米中対決……、気になる東アジアの厄介な大問題を二人が語り合う。
MBS(毎日放送)で、放送されている、「生!池上彰×山里亮太」という番組を書籍化したものです。
僕はこの番組を観たことがないのですが、2015年から続いている、時事問題に関して、南海キャンディーズの山里亮太さんが疑問点を質問しながら、池上彰さんに解説してもらう、という番組のようです。
池上さんは、「はじめに」で、こう仰っています。
世界を理解するうえで大事なことは、まずは各国の「内在的論理」を把握することです。内在的論理、つまり相手はどうしてそういう考え方をするのか、日本に対してなぜあのような態度をとるのか。相手には相手の論理と歴史があることを尊重したうえで、日本はどうつきあっていくのかを考えなければなりません。
それには少し前の歴史をさかのぼって知ること。高校までの授業は、第2次世界大戦前後で終わってしまいます。でも、その後のことが実は大事なのです。
日韓関係にしても、日本側からすれば、「もう済んだ話を何度も蒸し返されて、これじゃキリがない」と言いたくなりますよね。
でも、韓国側にも理由とか事情みたいなものがあって、ああいう反応をしているのです。それが、日本にとって受け入れられるものかどうかはさておき。
日韓はどうして対立するのか。日本経済新聞・前ソウル支局長の峯岸博氏は、「順法」の日本と「正義」の韓国との対立だと指摘します。日本は、「日韓請求権協定」によって国と国との約束が結ばれたのだから、これは守らなければならないと考えます。一方、韓国は軍事独裁政権時代に国民不在で勝手に他国と結ばれた約束は「不義」であり、それを正すのは「正義」だというのです。
このように韓国の「内在的論理」を知ると、たとえ納得できなくても、「理解」することは可能になるかもしれません。何事も、相手の内在的論理を知ったうえでつきあうことが必要なのです。
東アジアといえば、日本以外は韓国、北朝鮮、中国、台湾ということになるのですが、ここで視点を南に向けてみると、また異なるアジアの姿が見えてきます。それは、日本をアジアのお手本をして見て、日本に追いつこうと努力する東南アジア諸国の姿です。日本の近隣国家はときに「反日カード」を切りますが、南に行くと、新日国家が並びます。
「内在的論理」を理解したからといって、相手の主張を受け入れられるかどうかは、別の話だとは思うのです。
ただ、妥協点を見いだすためには、相手の立場とか考え方を知っておいたほうが、有利ではありますよね。
そして、これは人間関係においても言えるのですが、人間はどうしても、「自分のことを嫌っている人」や「悪口」のほうを意識しやすく、ネガティブな感情に引きずられがちになるのです。自分を信頼してくれる人のことを思い浮かべてみれば、「全体としてみれば、そんなに悪い状況じゃない」場合でも。
山里亮太:そういえば2019年の春、令和時代初の国賓としてトランプ大統領が来日しましたね。
池上彰:ゴルフや大相撲観戦で、おもてなしをしていました。宿泊先のホテルは公表してはいけないことになっているんですけど、私はたまたま別件でそのホテルにタクシーで入ろうとしたら検問にあって、ここに泊まるんだなって。歴代アメリカの大統領はアメリカ大使館のとなりのホテルオークラ東京に泊まっていたんですが、ホテルオークラ東京がちょうど、本館建て替え中でしたから。
山里:でも、国賓ってみんな迎賓館に泊まるんじゃないんですか。
池上:おっ! 山ちゃんいい質問ですね。
山里:ありがとうございます。
池上:さすがです。「なぜだろう?」と疑問を持つことが大事です。そうなんですよ、そもそも日本には迎賓館があります。迎賓館は国賓を泊めるために造った施設です。国賓として海外から訪れたVIPは迎賓館に泊まる。だけど、アメリカ大統領は迎賓館には泊まりません。理由はセキュリティ面を問題視しているから。
山里:なるほど。
池上:大統領が泊まるホテルに関してあ、数日前から部屋をおさえて、盗聴器が仕掛けられていないか事前に徹底的に調べる。迎賓館は日本側の施設でしょう。日本側がお客様をお招きしますと言っているのに、事前に「盗聴器が仕掛けられていないかどうかを調べたい」なんて言ったら、日本に対して失礼ですよね。
山里:そりゃそうですね。
池上:他の国は必ず盗聴器を仕掛けますから。
山里:あ、普通は仕掛けるものなんですか。
池上:汚い話ですけど、首脳がトイレを使いますね。便や尿を回収して精密に分析して健康状態をチェックすることもあります。
山里:え───、そこまで!
池上:基本中の基本、ホテルのトイレなら、一般客のものといっしょに流されるから当然、チェックはできません。
山里:自分たちがスパイ活動をしているから、警戒もするんでしょうね。日本は「スパイ天国」なんていわれていますけど。
長年の「同盟国」であっても、けっして気を許しているわけではない、ということなんですね。
しかし、ここまでやるのか……
部屋には盗聴器、トイレに行けば排泄物で体調をチェックされる、なんて生活を想像すると、僕にはとうてい耐えられそうにありません。
あのワガママでキレやすそうなトランプ大統領も、こういう状況のなかでずっと仕事をしていると思うと、けっこうすごい人なのではないか、という気がしてきます。
そのストレスから、ツイッターで暴言を吐いたりしているのだろうか……
権力を握るっていうのも、良いことばかりじゃないよね。
山里さんは、お笑いのネタに関しても、かなり入念な準備をすることで知られているのですが、この池上さんとの番組でも、「いい質問」をするために工夫していることが伝わってきます。
池上さんに「いい質問ですね!」って言わせたいですよね、やっぱり。
せっかくアントニオ猪木に会ったのだから、ビンタしてもらいたい、みたいな(違うか)。