- 作者: 東野圭吾
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2018/10/11
- メディア: 単行本
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内容紹介
『ガリレオ、再始動!』
シリーズとしては、6年ぶりの単行本が、長篇書下ろしとして堂々の発売!容疑者は彼女を愛した普通の人々。
哀しき復讐者たちの渾身のトリックが、湯川、草薙、内海薫の前に立ちはだかる。突然行方不明になった町の人気娘・佐織が、数年後に遺体となって発見された。
容疑者はかつて草薙が担当した少女殺害事件で無罪となった男。
だが今回も証拠不十分で釈放されてしまう。
さらにその男が、堂々と遺族たちの前に現れたことで、町全体を「憎悪と義憤」の空気が覆う。かつて、佐織が町中を熱狂させた秋祭りの季節がやってきた。
パレード当日、復讐劇はいかにして遂げられたか。
殺害方法は?アリバイトリックは?
超難問に突き当たった草薙は、アメリカ帰りの湯川に助けを求める。第一作『探偵ガリレオ』の刊行から二十年――。
シリーズ第九作として、前人未踏の傑作が誕生した。
『探偵ガリレオ』復活!
テレビドラマの影響力というのはすごいもので、湯川先生といえば、福山雅治さんの姿が思い浮かんでしまうのです。
前作でアメリカに旅立ってしまった湯川先生なのですが、日本に帰国しての最初の事件は、これまでの『ガリレオ』シリーズの集大成であるのとともに、東野圭吾さんの作品のひとつの到達点でもあるような気がしました。
「天道、是か非か」
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僕は『沈黙のパレード』を読みながら、何度もこの言葉を思い浮かべていたのです。
東野圭吾さんは、作品のなかで、犯罪者の側の事情を描くこともあれば、あまりにも理不尽な犯罪に巻き込まれた被害者側の心情に寄り添うこともあります。
『さまよう刃』のラストなんて、僕はいまだに、「そうせざるをえなかったのはわかるけれど、なんか消化不良だ……」と思っているのです。
この作品では、シリーズのなかでも傑作と名高い『容疑者Xの献身』についての湯川先生の述懐が出てきて、僕はなんだかとてもしんみりしてしまいました。
湯川先生とともに、東野さんも、あの結末について、書ききった、という思いと、登場人物を幸福にできなかったことへの罪悪感、みたいなものを引きずっているのかもしれません。
無慈悲に「悪意」を振りかざすような人間に対して、「ふつうの市民」は、あまりにも弱い立場にあるのです。
相手が、いわゆる「無敵の人」のような、自分に失うものはないからと、一時の快楽を求めたり、社会へのやつあたりをしたりするような連中に対しては、いくら気をつけても、どうしようもないところはある。
にもかかわらず、「世間」からは、油断していたんじゃないか、などと責められることもある。
この『沈黙のパレード』は、ミステリとしては、トリックは複雑で「本当にこんなことできるの?」と思うし、「どんでん返しのために、いろんなことが都合良く重なっている」ようにも感じます。
謎解きのために、地域のコミュニティに踏み込んでいく湯川先生も、ちょっと嫌らしいんですよ。
正直、読んでいると、「どうして湯川先生のその推理力は、あの男を追い詰めるためにではなく、義憤にかられて復讐を行った人びとの罪を明らかにするために行使されてしまうのか」と、ものすごくモヤモヤするんですよ。たぶん、作者もそこにモヤモヤしてもらいたいのだろうけど。
「復讐」はよくない、日本は法治国家なのだから。
でも、その「法治」の天秤は、あまりにも犯罪者側に都合良く傾いているのではないか。
僕は理屈とかデータとして、「厳罰主義や死刑制度は、犯罪抑止に有効というデータは出ていない」ということを知っています。
それでも、今の世の中の「刑罰の仕組み」に不公平さを感じずにはいられないのです。
エルキュール・ポアロは『カーテン』で、「人を致命的に傷つけているのに、法では罰せられることがない人間」に対して、ある選択をしました。
僕はそのポアロの切実さが、とても印象に残っているのです。
今回は、なんとなく「湯川先生のおかげで救われた」部分も残されているのですが、もしそれがなければ「湯川よけいなことすんなよ……」と思ったでしょうし、結局のところ、世の中には「反省とか更生が不可能な人格」というのも存在するのではないか、という実感もあるのです。
犯罪の鉄則(?)としては「なるべく関わる人間は少なくする」(弱いところから秘密が露見する可能性が高いため)べきだよなあ、とかも考えてしまうんですけどね。
僕にとっては、ミステリとしてより、「天道、是か非か」について考えさせられる、そんな作品ではありました。
いや、どう考えても「非」なんですよ。そんなことは百も承知なんだけれども。
- 作者: 東野圭吾
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