近未来。少佐(スカーレット・ヨハンソン)は、かつて凄惨(せいさん)な事故に遭い、脳以外は全て義体となって、死のふちからよみがえった。その存在は際立っており、サイバーテロ阻止に欠かせない最強の戦士となる。少佐が指揮するエリート捜査組織公安9課は、サイバーテロ集団に果敢に立ち向かう。
2017年の映画館での9作目。
金曜日のレイトショーで、観客は10人くらいでした。
1週間くらい前に1995年に公開されたアニメ版『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』を復習しておきました。
キャストをみて、スカーレット・ヨハンソンの少佐よりも、ビートたけしがバトーって、そりゃちょっと個性強すぎなのでは……と勝手に勘違いしていたのですが、たけしさんは荒巻課長役でした。
それもいかがなものか、という気はしたのですが、存在感で圧倒するというか、なんなんだこの『アウトレイジ』感!
僕は基本的に洋画は字幕で観る派なのですが、今回は上映時間の都合で日本語吹き替え版にしました。
結果的にはこれで正解だったみたいです。
少佐の声は田中敦子さん、バトーは大塚明夫さん、トグサは山寺宏一さんで、アニメ版と同じなので、安心して観られます。
「新たなファンを開拓する」とかいう名目で、○力×芽さんが少佐の声をあてたとしたら、作品にとっても、剛△さんにとっても不幸なので。
逆に、字幕版だったら、どんな感じだったのかなあ、とも思うのですけど。
サイバーパンク調の街やカオスな広告の数々など、視覚情報が多い作品なので、字幕を追うと見逃してしまう小ネタも多いかもしれません。
『イノセンス』って描いてあったのですが、これもハリウッド映画化……は難しいか、スカーレット・ヨハンソンさんの出番はほとんどなさそうだし。
ちなみに、ビートたけしさんのセリフにだけ、英語の字幕がついていたので、海外でも吹き替え無しで日本語のセリフが流されているのだと思われます。
さすが大物!なのか、東洋的なムードを狙ってそうしているのか、たけしさんが英語を喋るか吹き替えにするのを拒否したのか。
全体的には、けっこうよくできたSF映画だったと思います。
ちょっと『マトリックス』っぽかったけど。
1995年のアニメ映画版に比べると、「わかりやすい悪者」が設定されているんですよね。
少佐の「人間とは何か」という疑問と不安よりも、勧善懲悪ドラマが優先されてしまって、1995年のアニメ映画版を最近みて、「人と機械との境界は何か?」「スマートフォンもある意味『義体化』ではないのか」などと考えていた僕にとっては、「スッキリしすぎて、物足りないな」という感じもしました。
最初のほうに「心や魂やゴースト」っていう言葉が出てくるのですが、僕はこの「ゴースト」とは何か、というのが、ずっと、わかったような、わからなかったような、なんですよね。
そもそも「心や魂」と呼ばれるものが「ゴースト」だと思っていたのに。
このくらいわかりやすくないとハリウッド映画としてはダメなんだろうな、と納得してはいるんですよ。
いや、これじゃ『ロボコップ』じゃないか、とも思ったんだけど、『ロボコップ』もけっこう面白いしさ。
ただ、原作あるいはアニメ版の予備知識がないと、「クゼはどうなった?」「少佐はこれで『元通り』なの?」と腑に落ちない人もいそう。
僕は、1995年版の、あの「理由がうまく説明できない、割り切れない少佐の選択」が、けっこう好きだったんですよね。
そういう要素を無視せずに作中に残しているのは、この映画の制作者たちの「良心」だともいえるのだけれど。
あと、川井憲次さんの曲(アレンジ版)を聞くと『攻殻機動隊』感がすごくあるので、音楽の力というのは大きいな、とあらためて思い知らされました。
スカーレット・ヨハンソンさんの少佐には違和感がないというか、そもそも、少佐の容姿を云々言うのは、この作品の本質をわかってない!
……とか言いつつも、やっぱり、見た目は気になるものですが、田中敦子さんの声ですし、「ありといえばあり」かな、と。
あと、この映画で印象的なのは、街のホログラム広告のカオスさで、夢に出てきそうです。
原作派、アニメ派もハリウッド版・実写版との「違い」を楽しめるし、未知の人たちにも、それなりに面白いアクション映画になっていると思います。
正直なところ、僕にとっては、「スッキリ終わってしまうことに、ちょっと物申したくなる映画」でもあるんですけどね。
未見の人には、1995年のアニメ映画版も観てほしいなあ。90分もないので観やすいし。
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