- 作者: 西山雅子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2015/07/24
- メディア: 単行本
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内容(「BOOK」データベースより)
港の人、赤々舎、ミシマ社、土曜社、里山社…自ら出版社を立ち上げた10人の、個性豊かな発想と道のり、奮闘をリアルに綴る。スペシャルインタビュー・谷川俊太郎。
「自分ひとりで、出版社をつくる」
ただでさえ出版不況で、大手出版社も本が売れなくて苦しんでいるのに、なんて無謀なことを!
僕だって、自分の友人がそんな「賭け」をやろうとしたら、「ちょっと無理なんじゃない?いまは電子書籍とかもあるしさ」とか、「説得」してしまいそう。
ところが、この本を読んでみると、試行錯誤しながら、「なんとか自分ひとりくらいは食べていけている」という人がいることに驚かされます。
そもそも、「ひとり」って、大変なんじゃない?
そりゃ、仲間を集めるのも難しいのかもしれないけど。
果たして、出版における「小商い」は可能か?
これまでにも、ひとりや数人で営まれてきた小さな出版社は数多くあります。とはいえ、本という商品のもつ特殊性ゆえに導入された、他の業界とは異なる卸売りのしくみは、出版の「小商い」を今もなお、ハードルの高いものにしています。
ところが近年、ネット環境やデザイン、印刷環境の進化によって、少しずつ新しい活路が開かれてきました。小商い化がもっとも難しいと思われていた本の世界にも、ようやくその波がやってきたのです。
『小さい書房』の安永則子さんは、最初に出した本『青のない国』の作者・風木一人さんに、こんなことを言われたそうです。
風木さんに「安永さん、ひとり出版社に必要なものがなにかわかりますか?」と聞かれました。「わかりません」と答えると、「ひとつは早い決断力、もうひとつは勇気です」と。確かに自分でも「無謀」だという自覚はありましたが、それを「勇気」と言ってくれる、そんな方に出会えて本当に幸せだと思いました。風木さんが言ってくれた「出版は大小じゃない」のひと言で、肩の力が抜けたのかもしれませんね。執筆を受けていただいた翌月は、四回も風邪で熱を出して寝込みました。
また、「ミルブックス」の藤原康二さんは、こう仰っています。
極端な話をすると、読んでいる本とか好きな音楽とか、服装のセンスが同じ方となら、曖昧な説明でも理解し合える。世間が狭いと言われるかもしれませんが、うちはひとりでやっているぶん何十万部も売れなくていい。大手だと売れないという理由で潰されてしまうような、作家さんのいい部分や個性をうまく残しつつ、ビジネスとしてどう成功させるか、そこでやっていこうとすると相当相手と仲良くならないと本ができないんです。
もちろん常に、100万部を妄想しながらつくってはいるんですよ。でも、かといって大手でありがちな「コレ売れてるから同じ線でいきましょう」というやり方は、絶対にしたくないんです。よく「ミルブックスで売れている本はどれですか?」と聞かれますが、どれも、そこそこ。逆に大ヒット作が生まれていたら、もう辞めていたかもしれない。常に「このよさ、みんなわかってよ」という不満があるから、またつくろうという気持ちになる。
「ひとり出版社」には、「自分が好きな本を、自分の意思で出せる」という良さがあるのです。
そして、もうひとつのメリットは「自分ひとりが食べていけるくらい稼げればいいので、そんなにたくさん売れなくてもいい」。
もちろん、売れないよりは売れたほうが良いのでしょうけど。
この本を読んでいると、「ひとり出版社」の面々は、造本にこだわりぬいた本や、他の出版社では「売れない」ということで相手にしてもらえなかった写真集、もともと市場が狭い詩集など、「大手では出せない本」に活路を見出しているのです。
大手だけではなく、こういう、「小さな出版社」があるからこそ、本の多様性が保たれている。
そして、「本屋」の定義もまた、変わってきているのです。
内沼晋太郎さんの『「小さな本屋」の話』より。
これまでは一般的に、作家が書き、出版社が出版し、取次が流通した本を「売る」のが「本屋」の仕事とされてきました。しかし、今や作家が自らKindleで電子書籍を販売することも、出版社が自社サイトで通販をすることも、取次が新刊書店を経営することさえも、珍しくありません。アパレルや雑貨店など、あらゆるところで本が売られています。個人でも一箱古本市に出したり、ネットオークションに出したりすることができます。蔵書の古本を売るだけでなく、出版社に電話して直接新品の本を卸してもらって売ることもできます(最近は問い合わせが増えているのか、どこの出版社でも昔よりずいぶん柔軟に対応していただけるようになっています)。ネット書店のアフィリエイトのリンクを貼れば、個人の書評ブログでも、本を売ることができます。
これを読んで、「そうか!」と思ったんですよ。
この『琥珀色の戯言』もアフィリエイトのリンクを貼っていますので、ここは僕の「本屋」なんだな、って。
あと20年くらいして、いまの仕事をリタイアしたら、小さな書店でもやりたいなあ、なんて、夢想していのだけれど、ある意味、もうそれは実現しているのか。
まあ、こうしてアフィリエイトのリンクを貼っていても、実際にはそんなに売れるものではないのですけど、それでも、ここで知った本を、地元の書店で購入してくださる方がひとりでもいれば、すごく嬉しい。
やっぱり、良い本は、少しでも多くの人の目にふれてほしい。
ネット時代になって、街のリアル書店はどんどん減っているけれど、ネット上の「小商いの書店」は、どんどん増えているのですよね。
「ひとりだから、何もできない」って、僕などは考えてしまいがちだけれど、「ひとりだから、自分のやりたいようにできる」という生きかただってある。
ひとりでやれば、失敗しても、困るのは自分だけなんだし。
本にそんなに興味がなくても、いまの仕事や生活の「息苦しさ」に悩んでいる人は、一度手にとってみてください。
「まったく編集や出版社勤務の経験がなかったのに、ゼロから、独力で出版社をつくってしまった」なんて剛の者もいるのです。
まあ、「うまくいっている人にも薦められる」ほど、儲かりもしないし、将来性も無さそうではあるのですが、「自分で自分の好きな本をつくる」っていうのは、憧れですよね、本好きにとっては。
そういうのが一冊つくれれば、僕ならもう、人生に悔いなし、だな。
- 作者: 谷川俊太郎,望月通陽
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- 作者: 宇田智子
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本屋になりたい ――この島の本を売る (ちくまプリマー新書)
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