【読書感想】知らないと恥をかく世界の大問題6 ☆☆☆ - 琥珀色の戯言

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【読書感想】知らないと恥をかく世界の大問題6 ☆☆☆



Kindle版もあります。

内容紹介
戦後70年のいまを歴史に位置付けるとき!
シリーズ最新第6弾! 覇権、宗教、経済、資源……世界は大きな転換期を迎えている。深まる混沌と対立。世界は解決の糸口を見いだせるのか? 戦後70年、そして、阪神・淡路大震災地下鉄サリン事件から20年の節目に、21世紀のあるべき世界の姿を考える。世界を読み解くニュースの入門書。


過去は将来への道しるべ。歴史をひもとけば未来が見えてくる
◇大転換期を迎えた世界
◇大国アメリカの野望と世界への責任
◇ヨーロッパ、衝突の現場から
イスラムの台頭〜文明の衝突は避けられないのか?〜
◇人類共通の問題に立ち向かえるのか?
◇戦後70年を迎える東アジアの未来志向
◇突き進む安倍政権が目指すもの
◇21世紀の世界のつくり方


 このシリーズも、もう6冊目。
 池上彰さんが、現在の世界情勢の分析をわかりやすくまとめて教えてくれるので、すごく重宝する新書です。

 アラブ人には、親日家が多いというイメージがあるのですが、その理由のひとつとして、池上さんはこんな話をされています。

 中東へ行くと本当に親日的な人が多いことに驚きます。欧米とは違い、日本は過去に何も悪いことはしていないし、日本人は自分の信じる宗教を強調することもなく、宗教対立も起きにくいのです。ヨルダンは親米国家ではあるものの、国民の本音はアメリカ嫌いが多く、日本は大好きという人が多いのです。
 とくに中東のアラブ人が日本人を好きになったきっかけに「テルアビブ空港乱射事件」があります。この事件とは、1972年、日本赤軍イスラエルのテルアビブの空港で起こした無差別テロ事件です。空港で銃を乱射し、死者24人、負傷者70人以上を出す大惨事を引き起こしました。
 この事件で2人が死亡し、唯一、生き残ったのが岡本公三です。この名前は中東で一躍有名になりました。パレスチナ人は、「日本人がパレスチナのためにわざわざ犠牲を厭わず加勢してくれた」と感激。当時は、生まれてきた子どもに「オカモト」や「コウゾー」といった名前をつけるのが流行になったほどです。いまでもパレスチナへ行って日本人だとわかると「オカモトを知っているか?」と聞かれることがあります。アラブの国の人たちは、岡本公三をアラブの英雄といい、そこから日本人への親近感も生まれています。事件後、日本政府は真っ青になって、イスラエルにお詫びの使者を出したほどですから、皮肉なものです。

 それで日本を好きになられても……という感じの「理由」ではありますよね。
 トルコが親日国家になったきっかけと言われている『エルトゥールル号遭難事件』での日本人の献身的な行為に比べると、かなり気まずい。
 イスラエルに煮え湯を飲まされ続けているアラブの人たちにとっては、日本赤軍のテロは「献身的な行為」だということなのでしょう。
 ただ、こういうのもまた、「世界の現実」ではあるわけです。
 敵の敵は味方、みたいな。


 多くのメディアや書物なので、「日本礼賛モノ」が目立つなかで、池上さんは、それに乗っかってしまうのではなく、こういう「毒」をあちこちに仕込まずにはいられない人なんだよなあ。
 「なんでも反対」というスタンスでもない、絶妙のバランスで。


 また、2014年11月10日に行われたAPECアジア太平洋経済協力会議)で行われた、2年半ぶりの日中首脳会談での共同の合意文書の「読みとりかた」の解説も興味深いものでした。そうか、専門家というのは、こういうふうに解釈していくのか、と。

 とりわけ、私が注目したのが次の文章です。
「日本には歴史を鑑とし、引き続き平和国家の道を歩んでほしい」
 なんと、日本が平和国家だと認めているではないですか。中国は反日ムードが盛り上がったりするとき、「日本は軍国主義への道を歩んでいる」という言い方をよくします。しかし、これで「いえいえ、習近平国家主席も日本は平和国家だと認めていますよ」と言えるのです。
 日本の自衛隊は戦後、これまで一発の弾も発射していないし、1人の人も殺していません。世界にそんな国はそうありません。これだけでも世界に誇れることです。

 なんのかんの言っても、中国も認めてるじゃん!
 ただ、ずっと「反日」でやっている手前、日本のこれまでの実績に対しても、こんな間接的な表現しかできないのでしょう。
 この新書のなかで池上さんもおっしゃっているのですが、日本と中国は経済的な結びつきがあまりにも強すぎて、「政治的に不仲でも、経済的には離れることができない関係」になってしまっているのです。
 あれだけ「反日」だと言われつつも、日本には大勢の中国人観光客も来て、「爆買い」していますしね。


 「イスラム国(IS)」や「オバマ後」のアメリカの話、格差問題など「知っていると自慢できる」ような先鋭的な知識ではないかもしれないけれど、「このくらいおさえておけば、『世界情勢に疎い人』とは言われない」くらいの、いま、世界で起こっていることがコンパクトにまとめられた一冊です。


 この本のあとがきで、池上さんは、こう書いています。

 過去の失敗を二度と繰り返さないこと。そのために歴史を学ぶ必要があるのだと思います。『知らないと恥をかく世界の大問題』という題名のシリーズは、多くの読者の支持を得て、ついに6冊目となりました。空港の書店に並べられ、国際線の機内で海外に出かける予習として読んでいる人をよく見かけます。ありがたいことです。5冊目から6冊目までの間に、世界は大きく変わりました。そんな変化の確認のためにも、この本がお役に立つことを願っています。

 まさに「国際線の機内で海外に出かける予習として読むのにちょうどいいくらいの分量と易しさの新書」なんですよね、これ。
ちょっと悪い言い方だけれど、「テスト前の一夜漬け」に最適です。
 でも、そういう「ちょっとした予備知識」があると「恥をかかなくてすむ」「知らないよりずっと楽しめる」場面って、けっこうあるんですよ、本当に。

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